伯父様? 陛下と呼ばせてください
サブタイトルが考え付かなかった結果、
こんな変なものになりました。
あ、これいい! っていうサブタイトルが
浮かんだら変更します。
城につきました。まずは大公爵様に挨拶に行くようです。
とりあえず、初めて来たお城は本当に広いです。ジーン様方から離れたら、間違いなく迷子になる自信あります。
「ウィルフィリア、手を繋ごうか? 離れたら、迷子になるからね」
「でしたら、是非私と!!」
「迷子になったら父様の名を出せば、すぐ戻れる」
ギルトバード様、ここで手を繋ぐのはさすがに恥ずかしいので、勘弁してください。シルフィ様、同じく、お願いします。ジーン様、もし、迷子になったらそうします。
それにしても、こう、やっぱり城ってすごいよね。ただの兵だった私にとって、こんな場所、足を踏み入れる機会なんてなかったはずだから、余計いろいろと見てしまう。
「本当に迷子になりそうで怖いな。ウィルフィリア、やっぱり手を繋ごうか」
「いえ、それはちょっと……」
「じゃあお姉様、私と手を繋ぎましょう!」
「いえいえ、それもちょっと……」
不特定多数の目につくこの場所で、手を繋ぐのはちょっと辛いかなと。だから、ご容赦ください、ギルトバード様、シルフィ様。
それに、そうしている間にいつの間にか、ジーン様が歩みを止め、ある部屋の扉の前に立っていたよ。
「ついたぞ。ウィルフィリア、心の準備はいいか?」
「………はい」
一度深呼吸して、精神を落ち着かせて返事をする。それと同時に、ジーン様が扉を開いた。その先には、大公爵様がいらっしゃる。
「久しぶりだな、ギル、ウィルフィリア、シルフィ。元気にしていたか?」
「はい」
「特に、ウィルフィリア。調子は悪くないか?」
「はい、平気です」
最近は発作も起こさないし、痛みに襲われることもない。それを考えれば、調子はかなりいいほうだと思いますよ、大公爵様。
「それはよかった、ところで、今日はどうしたんだい?」
「伯父様にお話したいことがあるんですよ」
「お兄様に? あぁ、パーティの件だな。―――ジーン、ギル、シルフィ。絶対にお兄様を止めろ。ウィルフィリアをほかの貴族に公表するなど、まだ早い」
うわぉ、大公爵様も本気だよ、ちょっと。これはこれは。
「ですよね。よし、伯父様のところへ行こう。すぐに伯父様を止めよう」
「うむ、私も行こう。数で押して、お兄様を説得しよう」
「賛成。父様もやる気になってる間に、伯父様を止めましょう」
……………帰って、寝ていたい。
「おお、来ると思っていたぞ、ジーン、ギル、ウィルフィリア、シルフィ。ウォルフ、仕事は終わらせてきただろうな?」
「もちろん、終わらせてきましたとも。ところでお兄様、来ることを予想していたなら、言いたいことは分かりますよね?」
「ああ、もちろん分かっているし、中止するつもりもないな」
「お兄様! ウィルフィリアも嫌がっているんです!」
頑張ってください、大公爵様。確かに、私はパーティは嫌です。今さら貴族として人前に出たくありません、私は庶民でいたい。
「そうですよ、伯父様。無理言い過ぎると、嫌われますよ?」
「うーむ、それは困るな。だが、パーティもやらなくては、な」
「何故ですか?」
「私も聞きたいです、伯父様、どうしてですか?」
おお、ジーン様もギル様も、シルフィ様も引いてない。これはこれは、何てすごい。
「この辺で、ウィルフィリアの立場をしっかりさせておいたほうがいいだろう? ワイバーの奇跡、ウィン・ファリエルはウィルフィリアだと。ワイバーの奇跡を殺そうと考えている輩には、かなりの牽制になる」
「ウィルフィリアが嫌がっていてもですか?」
「当たり前だ。ここで、ウィルフィリアを失ってたまるか。ウォルフ、お前も失っていいのか? いくらアルガディア大公爵家と言えど、侵入する場所はある。それで、守りきれるのか?」
陛下のそのお言葉に、大公爵様が言葉に詰まる。ていうか、大公爵家でも結構、侵入者とか入れるんだね。警備が万全で入れないと思ってたけど。
そして、大公爵様もそれを分かっている。だから、陛下に何もお言葉を返されないのだと思う。
「分かったなら諦めろ。そして、ウィルフィリアとシルフィのドレスの採寸をさせろ」
「……ギル、シルフィ、ウィルフィリアを連れて帰りなさい」
「あ、こら、ウォルフ」
「ウィルフィリアとシルフィのドレスは、家で測り、作成します」
「おい! 姪にドレスくらい贈らせろ!」
「ギル、二人を連れて帰りなさい」
「分かりました」
「ジーン、お兄様をとめるから手伝いなさい」
「分かりました」
そういうと同時に、私とシルフィ様は揃ってギル様に腕を引かれ、陛下の前から引き摺り、そして連れ帰らされる。陛下は私たちを帰すまいと必死のようだが、大公爵様とジーン様が必死で陛下を押さえつけていた。
「ギル! 急いで二人を連れて帰れ!」
「はい! ウィルフィリア、シルフィ、帰るよ」
ちょっ! ギル様、歩くの早いです。シルフィ様が転びそうですから! 気づいてさしあげて下さい、ギルトバード様!!
「お、兄様、歩くのが早いですっ!」
「え? ……っああ、すまない、シルフィ、ウィルフィリア」
「もう少し、速度を落としてください。伯父様の執務室は出たのですから、もう大丈夫でしょう?」
「……そうだな。ついでだ、王都も少し見て行こうか」
「賛成です! お姉様、いいですよね?」
「は………はい」
「お姉様!」
「うん」
ああ、シルフィ様の敬語に関する反応が素晴らしくなっていく。最初の頃は少しくらい、黙認してくださっていたのに。
「お姉様、妹に敬語は、ダメですからね?」
「………」
厳しい、厳しすぎる。ギル様やジーン様は兄と言うことで、敬語を使っても問題がないのに、シルフィ様は妹だからと言うことで、敬語の許可が下りない。
ああぁぁぁぁああぁぁぁ! シルフィ様の目が怖い! ギル様、助けてくださいお願いします! あぁぁああ! 生暖かい瞳で見ないでくださいギル様!!
「今日、帰ってドレスの採寸をした後で、いっぱいお話しましょうね」
「…………」
「お姉様?」
「そ……ソウダネ」
いやん、シルフィ様超にっこり。シルフィ様、ひょっとして、楽しんでますか? ひょっとしなくても楽しんでますよね?
いやああああ! ギルトバード様、お願いですから同席してくださいね、そのときは!
「シルフィ、手加減するんだぞ? あまり過激にすると、ウィルフィリアに嫌われるからな?」
「嫌われたくありません!」
「なら、ウィルフィリアに急激的な変化を強要しないように。いいな?」
「……はい」
ありがとうございますギルトバード様!! そしてそのまま同席して、シルフィ様が行き過ぎたら諌めてくださいお願いします!
ああ、どうしてシルフィ様もシャーリット様も、私の呼び方、話し方に厳しいのでしょう。さすが親子というべきでしょうか。
でも、私の中では、私はまだ庶民で、あなた方は大貴族。
身分が、違うんです。私は、あなた方にこうやって見られる資格すらない、ただの庶民。
だから、放っておいてもらえると、本当に嬉しかったんですよ?