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ドレイス領

-帝国歴216年-


秋の心地よい風がドレイス領を包み込む。


ここドレイス領は、3大大国の1つであるジグ帝国の、更に7つに分けられている地域の中にある1つの街だ。領民は2万人と、他領と比べると多いものの、総人口1,500万人であるジグ帝国の中では小さな領地と言ったところだ。


中央の街は城壁が囲んでいる。城壁の外には一面の麦畑があり、畑には麦穂がたわわに実っている。その更に向こうには放牧地が広がっており、丸々と太った家畜たちが我が物顔で悠々と闊歩している。


続いて街の中に目を向けると、石畳の大通りに面したレンガ造りの家々が整然と立ち並んでいる。ところどころにある広場では子供たちが追いかけっこをして元気に遊び、傍らには母親たちが雑談に花を咲かせている。

街の中央付近にある領内最大の市場では、豊富な食材を軒先に並べる店舗や、きらびやかなアクセサリーでカップルの足を止める宝石店など、様々な店が何十件も立ち並び、多くの人が往来している。


「今日も町は平和だな」

領の北部に位置する領主屋敷。その一室にいる1人の男が窓の外を眺めながら呟いた。

背丈は180センチ前後であり、鍛え抜かれた体つきは衣服を羽織っていても隠し切れていない。聡明さを思わせる凛々しい顔つきをしているものの、柔和な目つきとその青い瞳から、彼の温和な性格を表しているようだった。


彼は領主長男であるラファ・ジェファーソン。今年で18歳になる彼は、次期領主として将来を有望視されている人物である。襟足まで伸びた黒髪を後ろに束ねながら、家庭教師の待つ部屋へと足を運んでいた。


部屋に着くと家庭教師のウィリアムと、ラファの妹のシャルルがこちらを振り向いた。


妹のシャルルは、長く伸びたまつ毛と少し丸みの帯びた目をしている。まだ少し幼さを残すものの、凛々しい顔つきをしている。

兄であるラファを大層慕っており、今日も勉強をしている姿を見てもらいたいとお願いして部屋に呼んでいたのだ。


「いらっしゃったのねお兄様!」

幼さが残る可愛らしい声で、満面の笑みを浮かべながらシャルルは言った。


「ご足労頂ありがとうございます、ラファ様」

家庭教師のウィリアムも一息置いてからラファに対して礼をする。

この初老の男性は、短髪の白髪を綺麗にまとめ、皴一つないタキシードに身を包んでいる。

ラファが幼いころに屋敷に雇われた家庭教師であり、ラファが12歳となり領から離れた学園に入学した後も、その優秀さをかわれ、引き続き妹のシャルルに勉学を教えているのである。


「やあ、シャルル、ウィリアム。講義の邪魔をしたね。続けてくれて結構だよ」

ラファが優しい声で答える。


その言葉を受けてウィリアムが講義の続きを始める。

「ではシャルル様、今日は先日話した、この国、ジグ帝国の歴史のおさらいをしましょう。では、この国の成り立ちからお願いします。」

ウィリアムがシャルルに対して質問をすると、少し考えてからシャルルが答える。


「この国ジグ帝国は、今から216年前にジルバルト王が当時の7賢人と一緒に作りました。」

シャルルは言い終えるとラファに向かって笑顔を見せた。ラファもそれに応えて微笑んだ。


「シャルル様お見事です。では続いてラファ様。その当時、なぜジルバルト王は帝国を建国したのかお教えいただけますかな」

これはウィリアムのいつもの癖みたいなもので、教え子に質問をしながら理解を深めているか確かめる手法だ。


ラファはやれやれといった顔で答える。

「元々この大陸はパンゲア国という国が支配していた。しかし当時のパンゲアは国民を虐げ、反対する者には容赦のない制裁を加えていた。国民は疲弊し将来を憂いていた。その時、我がジグ帝国初代帝王であるジルバルト王が7人の側近と共に王国に反旗を翻した。パンゲアとの戦いは長く続いたが、国民から多大なる支持を得たジルバルト王は辛くも勝利し、新たにこのジグ帝国を築いた。というところでいいかな。」

淡々と話しをし、ラファはウィリアムの顔を見た。ウィリアムも満足そうだった。


「流石ですね。ではなぜジルバルト王は当時の大国であるパンゲアに勝利することができたのでしょう。ここはまだシャルル様にも教えていませんでしたね。」


「確かにそうね。お兄様、なんでジルバルト王は8人でパンゲアと戦おうとしたの?そんなに少なければ捕まって終わりよね。」

シャルルもぜひとも教えてほしいという眼差しでラファの方を見た。ラファは妹の期待に応えるべく、本来であればウィリアムが教えるであろう内容を説明しだす。


「ジルバルド王と7賢人は絶大な魔法の力を授かって、それを持って戦いに勝利したんだよ。」


ラファが答えるのと同時にシャルルが驚いたような声を出した。

「え、魔法なんかで?魔法って、電気をつけたり、火を強めたりするやつでしょ。」


ラファはその通りだねと微笑み、そして続けた。

「実はその当時のジルバルド王は30メートルほどの火柱を操れたようで、7賢人もある人は巨大な土壁を作ったり、ある人は無数の水をまるで矢のように飛ばしたりできたみたいだよ。あくまでもおとぎ話だけどね。」

シャルルは「そんな話嘘に決まってるじゃない」と尚も食い下がってきた。


ラファは優しく答えた

「そうかもしれないね。でも、この領地で最強と言われているお父様は、長い修練の結果3メートルくらいの火柱を操れるというし、決して無理な話でもないと思うよ。」


シャルルも確かにそうだったと一応の納得はしたようだが、やはり彼女の中での魔法のイメージとのギャップがあるのだろう。その後もぶつくさと疑問を並べていた。


その様子を見たウィリアムが魔法についてシャルルに説明してくれた。

「シャルル様、ここで1つ魔法の歴史も話しておきましょうか。魔法は今からおよそ500年ほど前に現れたと言われています。当時の文献には「神」の声を聞いた者が超常の力を手に入れたと書いてあります。しかし、何の修練もしていない人間が、何も無いところに火をつけたり、水を生んだりしたその力は「悪魔から授かった法力」として「魔法」と言われ蔑まれていたようです。ただ、時代が進むにつれて人類の大半が魔法を使えるようになったことで差別はなくなりました。そしえ、魔法は修練しても人々の生命を脅かす可能性がなかったことから、次第に当たり前の存在となったのです。」


「まあ、魔法って人間が生まれてからずっと持っているモノだと思っていたわ。それが突然でてきたなんて不思議ね。」

シャルルは驚いたように答えた。


その様子を見ながら更にウィリアムが続ける。

「魔法が受け入れられたことで魔法に関する研究が進みました。その研究の結果、魔法の力を増大させたり、蓄積できたりする魔石の存在や、通常の動物よりも凶暴になる魔獣の存在を明らかにしました。今現在、夜でも明るい部屋で過ごせたり、川から水をくまなくても水が使えるのも、そういった研究で開発された、蓄電式の魔石や、貯水式の魔石などが至る所に配備されているからです。そのため、人類は今では魔法なしでは生きられないほど、身の回りにあふれるようになったのです。」


シャルルは感心したような顔でうんうんと頷いて話を聞いていた。そしてラファを見つめながら

「魔法ってすごいのね、お兄様」

と可愛らしい声で言ってきた。


「そうだね」と微笑みながら返答しながらも、ラファは物思いにふけっていた。

そして、『どうせなら転生前の世界で見ていたアニメや漫画のような、爆撃魔法とか治癒魔法とか、そんなおとぎ話のような魔法が使える世界に転生したかったんだけどな』と少し悔しく思っていた。

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