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彼女の友達は未来から

掲載日:2026/02/05

 彼女はいつも朝5時に目覚まし時計をかけて起きることが日課である。

 その目覚まし時計のアラームのメロディは、彼女の好みの流行歌のメロディなのでした。

 ごく平凡な1日の始まりに聴くその優しいメロディは1日のプレリュードというにふさわしい。


 新聞の朝刊に目を通し、まずは天気予報の欄を見ることが「さよこ」の目の行く先であった。

 降水確率60%以上なら傘を持って登校することに決めている彼女ですが、今日の降水確率は50%、確率は5分5分なので迷うところです。



「日本列島には秋雨前線が伸びていて、お昼頃から次第に、北に張り出した高気圧が秋雨前線を南下させ東日本に雨を降らせるでしょう。

 気温は高気圧と小雨の影響で少し肌寒く感じるため、念のため傘を持って出かけることをお勧めします。また上着に羽織るものを持っていくと良いでしょう。」


 オーブントースターにかけていたピザパンはその間に「チン!」というタイマーの終わったことを知らせる音ともに、チーズとトーストの少し焼けた香ばしい雰囲気が彼女に伝わってきた。


 彼女のお母さん「出来たわよー」

 ディズニーキャラクターのイラストが印刷されたトレーに、大粒のいちごの入った、いちごミルクと出来立てのピザパンが、「デンッ」と乗っかっていた。


 彼女はピザパンを少し焦げた端から、頬張った。

 ナチュラルチーズの程よいまろやかさに、サラミとピーマン、タバスコの辛味が朝の目覚めをスッキリとさせた。


 そんなたわいもない当たり前の朝の食事中に、彼女はお母さんに何気ないことを話かけていた。


「いつも通っている図書館で新しい友達ができたの。」

「年上の女性で、OLさんよ。」

「図書館の同じ棚に並んでいると、偶然目があってそれから、交換日記を交わすようになって.....」

「交換日記をつけるアプリがあってそこで共有しているの。」


 お母さん「そう。それは偶然ね。どんな方なの。」


「まりあさんという、風貌が優しそうで、でもキリリとした頼りがいのありそうなしっかりしたOLさんよ。」



「今そのアプリに、書き込んでみるね。」

「私、今日の朝食、ピザトースト、いちごミルクで満足。」

「今日の朝食は、どんなメニューでしたか?」


 お母さん「便利だわねぇ。」


 昨日より前の互いの書き込みが、履歴としてスマホの画面の脇に一覧として表示されていて、その内容を少しさらさらと拾い読みしていた。


 そうこうしているうちに、さよこから書き込みがあった。


「さよこ:朝食。今日はベーコンエッグに、ポテトサラダ、コーンポタージュ。」


 昨日の夜の書き込みがリマインダー機能でポップアップ表示された。


「まりあ(午後8時10分):今日は残業少し。でも大丈夫。当たり前のこと。帰りにデパートの沖縄名産品フェアで珍しいものを見つけたわ。今日は入浴を終えたら早めにお休みするわ。おやすみ。」

 アプリのメディア欄には沖縄民族衣装の添付写真が映っていた。


「さよこ(午後8時43分):沖縄行ってみたいな。スカイブルーの空が羨ましい。今日も学校の予習を予定通り終えたよ。まりあさんおやすみ。」


 時計を見るともう6時20分。

 さよこ「あらっ、もうこんな時間!!歯磨きと顔を洗って、身支度しなきゃ!!」


 カバンの中の今日の授業の教科書とノート一式を揃えて確認して、制服に着替えてから、バスの予定時間までダイニングで待ちながら、さっきの交換日記アプリを眺めていた。


 さよこはこう書き込んだ。

「学校時代はどの教科が得意でしたか」

「今までの旅行先で印象に残ったことはありますか」


 秋雨もまばらなこの季節、すでにさよこは1日の授業を終えて帰宅していた。


 授業中は電子機器が一切操作できない規則になっているので、帰宅してからまとめてメッセージを見ることになっている。


「さよこさん。新着メッセージ2件、まりあさんから」と表示されている。


「さよこ(午前6時56分):学校時代はどの教科が得意でしたか」

「Re:まりあ(午後12時34分)国語が得意。小説を読むのが好き。」


「さよこ(午前6時58分):今までの旅行先で印象に残ったことはありますか」

「Re:まりあ(午後12時37分)イタリアのローマ。トレビの泉は珍しい。ゴシック建築は昔からの様式で建物そのものが芸術。修学旅行での韓国。観光名所が多くてみんな明るい会話で楽しい。チェジュ島は島全体がリゾート。」



 さよこは夕食までの少しの間、学校での復習と課題を済ませた。

 少々の読書を複数タイトル並行して読んでいくのが楽しみなのでした。

 読書を続けているので、読書の内容と学校の学習内容は区別がなくて、読書が普段の学習になっているさよこでした。


 読書はその習慣が教養を自然と身につけさせている女の子ならではの趣味なのでした。


 お母さん「さよこ、夕食の準備できたわよー。」

 さよこ「はーい、今行くわー。」


 読みかけのページにしおりを挟んで、本を閉じた。


 夕食のメニューは、カキフライ、わかめスープ、チャーハンであった。


 夕食を終えると早々と入浴を済ませ、寝室で日記のメッセージを書き込むのであった。


「さよこ(午後7時40分):今までに読んだ本で好みの作家や作品はなんですか」

「さよこ(午後7時42分):今日の夕食はなんでしたか」

「さよこ(午後7時45分):私の夕食のメニューは、カキフライ、わかめスープ、チャーハンでした」

「さよこ(午後7時48分):私の好みは小説を読むこと。探偵物や推理小説が好みです。まりあさんのご趣味はなんですか。」


 夕食後のホットココアを嗜みつつ、また少し読書を楽しんでいた。

 第3章の終わりに差し掛かったところで、こんな記述が目に止まった。


「彼女の友達は未来にいる。現代では友達は多くても未来では友達ではなくなる。

 未来にいる友達こそ、真の友人というべきもの。それは現世においても存在するべき未来永劫の友人とすべきである。その未来の友人は彼女を予言し、いつにおいても導きをもたらす鏡となる存在である。未来永劫であるから未来の先の先まで友達が存在し、時空を超えて存在する永久超人的な存在である。」


 意味深な哲学的な記述なので、少し考えさせられる記述だった。

 次の第4章のタイトルは「預言者は彼女のそばにいる」である。


 少し休みを取ろうと本を伏せた時、携帯のメッセージアラームが鳴った。


「さよこさん。新着メッセージ3件、まりあさんから」と表示されている。


 メッセージの内容は次の通り。


「さよこ(午後7時40分):今までに読んだ本で好みの作家や作品はなんですか」

「さよこ:(午後7時42分):今日の夕食はなんでしたか」

「さよこ:(午後7時45分):私の夕食のメニューは、カキフライ、わかめスープ、チャーハンでした」

「さよこ(午後7時48分):私の好みは小説を読むこと。探偵物や推理小説が好みです。まりあさんのご趣味はなんですか。」



「まりあ(午後8時12分):今日は定時に帰宅。早めに夕食終える。時間があるので趣味が楽しみ。」

「Re:(午後8時16分):私も小説を読むのが好きです。推理小説です。」

「Re:(午後8時23分):今日の夕食はエビグラタン、カニコロッケ、コンソメスープ」

「Re:(午後8時25分):私の趣味はあなたと同じよ。私は未来のあなた。あなたのほぼ10年先に私はいるわ。さよこが17才だから私は26才。10年後に私と同じことが起きるのよ。今日のあなたの夕食はチャーハンに、カキフライ、スープでしょ?さよこの好みの食べ物全て知っているわ。嫌いな食べ物も。」


 さよこはこの摩訶不思議なOLさんに魅力を感じていた。

 この綺麗な「まりあ」さんが未来にいる「さよこ」の何なのかは、未だ理解できずにいた、というか理解不可能な事象が生じていた。


 でもすこしはわかってきた。


「要するに、まりあさんは私の未来の姿。」

「まりあさんによく聴けば、将来の私がわかるってことか。」


「それじゃ、私は26際の時には、OLが確定ってことか。」


「あと、この先10年間に私に起こることを知ることができるってことか。」

「それって少しルール違反だと思うの。」


「だって、人より先に未来が知ることができたら、何かできそうだけど.....」

「ちょっと怖い気もするなぁ。」


 自身の努力と実力で先を拓くべきものだとはよく承知している「さよこ」である。

 しかし未来の友達が存在することは、さよこにとって頼りになるというか力強い未来からの真の友人と言えるのであった。


 そこでさっきの読みかけの小説の次の章のタイトルが思い浮かんだ。


「第4章 預言者は彼女のそばにいる」


 さよこはまだこの章を読んでいない。

 読もうとしたら、携帯のメッセージが表示されたのであった。


 さよこには少し眠気が催されるようになってきた。

 時計を見るとそれもそのはず、もう時間が深夜12時近くになっていたのだった。


「ああ、もうこんな時間。あした早いので、もう寝よっと。」


 さよこは夢の中に入っていった。

 夢のさなかで、未来の友達とコミュニケーションできるようになっていた。

 未来からの友達ができた「さよこ」は夢の中でも会話できるので、いつもと違う気分になった。

 それは、少し大人に近づいたというべきか、未来の友人に近づいたのだから当たり前のことだった。

 少し未来に入った「さよこ」は、毎日が新鮮な感じがする何も変わらない日々を過ごしていた。


 コンピュータプログラミングが趣味のタケルはこれまで幾つかのゲームプログラムを作ってきた。

 さよこはこのタケルともアプリで交換日記を過去に(したた)めていたのだった。


「今度のプログラムは、ロールプレイングゲームにしようかな、それともアドベンチャーゲームがいいかな、それとも.....」


「そうか、こうしよう、ロールプレイングゲームと新しい種類のカードゲームが融合したプログラムはどうかな。」


 普通の52枚のトランプゲームは西洋の謎を秘めた歴史あるルールゲームであるが、彼はこれを48枚の新しい規格のカードゲームを作り、それをロールプレイングゲームと融合させようというのである。


 彼は仮想のゲームプログラム内ならば、そう影響はないだろう、そう思っているのだった。


 次はカードゲームのキャラクターやデザインをどうするかであった。

 48枚で3種類だから、1種類16枚。キャラクターは3通り。

 使う数字は16枚だから16進数がいいか、それとも......。


 ロールプレイングゲームなら西洋騎士が主人公のキャラクターとなるが、他に何かいいキャラクターがあるかどうか考えていた。

 普通のトランプゲームはハート、ダイア、スペード、クラブの4つのキャラクターが使われるが、この新しいカードゲームは3種類のキャラクターで良いのだった。


 タケルには事象を考えるとたくさん存在するようなのでその中から、お天気マーク(晴れ、曇り、雨)の3種類、採点マーク(二重丸、まる、三角)の3種類、音楽記号(四分音符、八分音符、全休符)の3種類、アスキー文字(シャープ、アスタリスク、アットマーク)の3種類とその他....とたくさん思いついていた。


 お天気と16通りで占いもできるが、ここはロールプレイングゲームなのでアスキー文字を使ってはどうかと決め始めていた。


 アスキー文字と16進数の組み合わせならプログラムと相性もいいし、ロールプレイングゲームのキャラクターにふさわしいと思われた。


 新作のカードゲーム型ロールプレイングゲームができたので、早速タケルは動作テストを兼ねて何回も出来立てのゲームをシミュレートしていた。


 テストを繰り返してフィードバックしていくことを繰り返す間に、時間はもう深夜になっていた。

 ふと思ったら、急激な睡魔が彼を飲み込んでいった。

 彼の夢の行先は出来立ての新作のカード型ロールプレイングゲームの世界であった。


 夢の中のゲームのオープニングは次の序章の一節であった。

 要約すると。


「夢先のゲームの制限時間は、明日の朝5時でゲームオーバーになる。

 それまでに決められたカードの種類を集めて全体の6割を得点すると、君に未来の重要な情報がもたらされるだろう。その情報を目覚めた”さよこ”に知らせるのが役目。そのお知らせはめざましのメロディとともに君と彼女に無意識に知らされるであろう。」


「この情報は何にでも使うことができる、責任をもって有効に使うことができる。

 しかしゲームオーバーになった場合、この情報は得ることができないが、そのままで目覚まし時計のメロディとともに君は現実世界に戻ることができる。」


 夢の中でロールプレイングゲームを進めていくと、キャラクターと交渉する時に、もう少し難易度を下げておくべきだったと、この辺りの難しいプログラムを何度やり直したかという、現実のタケルの姿と重ね合わされていた。


 メインキャラクターに扮したタケルは、決まったキャラクターの相手を説得したり、同意したり、和解したりすると、新型カードの決まったアイテムを集めることができた。


 このアイテムの揃え方で、いろんなボーナスや高得点が得られ、6割を制覇するとゲームクリアとなるのだった。

 しかし1回クリアすると次のステージからはプログラムは学習してもっと手強いゲームに変わっているのであった。

 タケルの同じ行動を分析してプログラムも対策を練るので、同じプログラムでも強く思えるのであった。


 ステージを進めていくと、難易度が増していくのであった。

 時折タケルの夢の中ではゲームのシナリオ以外の想定していない、奇想天外な出来事が起こったりする。

 それはキャラクターやアクシデントとしてゲーム内に現れた。

 プログラムとして作った覚えのない、想像上の怪物リバイアサンやファンタスティックな想像上の風景、過去の思い出深いシーンがゲーム上にシルクスクリーンのイメージとして現れていった。


 それはホログラムで現れては消え、また現れては消える、雲海の雲のような存在であった。

 午前4時40分ごろようやく、60%の征服率に近づいていたタケルは、最後のボーナスゲームに挑んでいた。

 これをクリアすればいよいよ「さよこ」の目覚めとともに、メロディとともに、未来の重要なメッセージを現代に知らせることができる。


 そのゲームは、パソコンのタッチタイピングの速さと正確さを競う内容で、制限時間内に

 一定以上の正確さで全てのキャラクターを制覇すると無事ゲームクリアして現実世界に、タケルは舞い戻ることができるのだ。


 なんとそのタイピングの内容が、重要な知らせのメッセージの文章そのものだったのである。

 入力方法はローマ字入力とかな入力方式が選ぶことができた。

 タケルは昔から身につけていたローマ字入力を選び、ゲームを始めた。


「今日の、午後0時34分に天変地異が起こる予想。それは想定しない巨大地震。

 それを避ける方法がある。それは世界に5つある原子時計の1つの寿命が尽きて原子時計の均衡状態が崩れることで量子崩壊が起こり、全次元のエーテルが崩れることで今までにない巨大地震が世界規模で起こる予想。その原子時計の寿命を伸ばせば量子崩壊を避けることができ、これまで通り全次元のエーテルは維持され、世界規模の巨大地震の発生を避けることができる。その原子時計の寿命を伸ばすには、インターネットに繋がったパソコンから原子時計のデータセンターにアクセスしてその原子時計に決まったコード番号をプログラムすれば、原子時計の寿命は永久に保持される。これにより想定外の巨大地震は避けることができる。そのURLは次の通りwww.○○●○.ac.jp」。ここにアクセスしてトップページに表示される、原子時計の寿命制限解除コード欄に次の5桁のアクセスコード(47714)を入力し、認証ボタンを押すこと。これで全てが完了する。これを午後0時までに完了すること。幸運を祈る。」


 タケルは初見でこの文章を即座にタイピングしていった。

 スラスラと一つのタイピングミスもなくピアノの演奏でもするかのように、鮮やかにタイピング入力していた。

 約5分後、タケルは全てのタイピングを終了した。


 ゲームエンディングのテーマ曲が流れてきて、タケルはホログラムとともに「さよこ」の

 目覚まし時計のメロディを鳴らしていた。

「さよこ」もタケルの夢の中でのゲーム対戦を夢中で知っていた。

 重要メッセージも全て「さよこ」には意識下に記憶していた。


「さよこ」は目覚まし時計のメロディを消すと、ベットから起き上がり、少し深呼吸をして、デスクの上にある彼女の専用パソコンで重要メッセージのURLにアクセスして、解除コードを入力するのであった。


 その終始行動は彼女にとって無意識であった。

 しかし夢から覚めていることは明らかであるが、いつもの彼女とは性格が違うものだった。

 どこか異次元の妖精のように存在は透き通っていて、ホログラムとも区別がつかない姿であった。

 その妖精は認証ボタンを押したあと、未来への友達「まりあ」の存在する10年先の異次元へと旅立ったのであった。

 現代の地上では何事もないかのように普通の平凡な毎日が展開されていた。


 10年先の未来世界で「まりあ」と「さよこ」「タケル」は、存在し続けている。

 地上世界での平凡な出来事を俯瞰しながら、彼らもまたその先の未来からの伝言を享受し現代へと発信し続けているのであった。


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