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其ノ終 大妖怪は弟子に教える


 

 

 

 

「香茨、実践稽古だ」

 

 そう言うなり自分と香茨の刀を掴み裏山へ行ってしまった酒木。

 

 朝ごはんである親子丼をつついている最中だった香茨はついていけずに硬直した。

 

「なんだあの人、ほんと勝手だな!!」

 

 そう言いつつ、彼なりの最高速度で親子丼の残りをかきこみ、今まで習ってきたことを整理するくらいには酒木の無茶苦茶に慣れてきている香茨であった。

 

 初めて、対戦での稽古をしてくれる。

 

 こんなに嬉しいことはないと、急いで足に下駄をひっかけて香茨は酒木の後を追った。

 

「早食いは体に悪いんですよ!!!!」

 

 と、酒木に聞こえるように叫びながら。

 

 

 

 

 

「んじゃ、始めるか」

 

 香茨が追いつくなりそう言った酒木は、自分用の木刀を右手に持ち、左手で香茨の木刀を投げた。

 

「は、はい!」

 

 ただ突っ立っているだけなのに、この隙のなさ。

 

 ビリ、と空気が頬を伝う。

 

「よろしくお願いします」

 

 そう言って香茨は地面を蹴った。

 

 酒木は木刀をだらりと構えたまま動かない。

 

(利き手の逆に回れ)

 

 これは、三度目の修行で言われた。

 

 しかし腕を狙った剣の筋は予測されて防がれる。

 

 カンッ!!木刀が木刀とぶつかる音。

 

(力で勝てないからすぐ退け。防がれたら、距離を取れ)

 

 これは五度目の修行で。

 

(すばしっこいから手数で攻めろ)

 

 これは十二回目。

 

 何度も木刀がぶつかる音が裏山にこだまする。

 

 限界まで早くしたようなメトロノームの音に、よく似ていた。

 

 それでも酒木は右腕以外どこも動かさなかった。

 

(隙がないなら作れ)

 

 これは二度目の。

 

 また少し距離をとって。

 

 香茨は無茶だと知って木刀を。

 

——投げた。

 

「おお」

 

 と呟いた酒木は。

 

 ゆらりと動いて。

 

「はいおしまい」

 

 瞬く間に移動し、酒木に向かって走り出した香茨の首元に木刀を添えたのだった。

 

 

 

 

「どうしたら師範に勝てますか」

 

 それから何度か試合をした二人。

 

 その度に惨敗した香茨は、木陰に入って休みながら酒木に問いかけた。

 

「勝てねーに決まってんだろ。言っただろ最初に。俺が一番だ」

 

 酒木はちび、と酒を舐める。

 

 その後すぐ香茨に没収されていたが。

 

「まぁ、そうですけど。じゃあおれは今どれくらい強いんですか?」

 

「それはゆくゆくわかるだろ、試験はまだある」

 

「そう、ですね」

 

 二人は少し笑って、一つ背伸びをして、また開けた場所で試合を始めた。

 

 吹き抜けた風は、夏の気配を強く感じさせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「用意できましたか師範!!迎えきてますよ!!」

 

「んおーー。後簪だけ……」

 

「そんなの車内でやりますよ!早く!!」

 

 ついにやってきた(香茨としてはきてほしくなった)、大妖怪会合当日。

 

 正装をした二人は、政府から遣わされた黒塗りのリムジンに乗り込んだのだった。

 

 

 次章!!!香茨社交界(?)デビュー!!!

 

 お楽しみに!!!!




第一章 終章です。

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