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其ノ伍

其ノ伍 大妖怪、

 

 

 

 

 

「俺の弟子の茶菓子に薬盛ったヤツ誰?」

 

 

 酒木がそう言って立ち上がった時、耐えきれず香茨はツッコんだ。

 

「じょ、情報量が多い!!!!」

 

 酒木の言葉にか香茨のツッコミにか、周りの大妖怪と連れたちが目を見開く。

 

 沈黙。

 

「お教えしようッ!!!!」

 

 キメ散らかしたキメ顔で、どこからか取り出したメガネを中指で掛ける影丸。

 

 同じく、どこから取り出したかわからないホワイトボードに大妖怪のミニキャラを描き、吹き出しにセリフを書く。

 

「はるる『酒木、いらんくね?』、オレ『いやいるやろー』、タマモン『落ち着きやー』、あまみゃあ『俺の弟子に薬盛ったんだれーーー』ってことだ!!!」

 

 またまた、沈黙。

 

「なっ、なるほど!!」

 

 わざとらしく目を輝かせ、香茨は開いた左手に握った右手をポンと置いた。


 そんでまた、沈黙。

 

「……おれ狙われてたんですか」

 

 全ての情報がラグい香茨。

 

「落ち着けって。茶菓子、食う?」

 

 香茨の斜め前に座る酒木が、綺麗な蓮の形の練り切りを香茨に差し出す。

 

「あ、ありがとうございます!」

 

 香茨は珍しく優しい酒木から小皿を受け取り。

 

「これおれのじゃないですか!ていうか盛られてるやつじゃないですか!」

 

 お約束をきっちり回収する、出来のいいツッコミ役に回った。

 

「へっ、食えば上からも下からも。生と死の境を一週間は優雅に旅できるくらいの代物だぞ」

 

 一回味わっとけば?と馬鹿にしたように笑う酒木にキレそうになり、実際にキレて心の中でお野菜ぱーちーしてやるからなと決めた香茨なのだった。

 

「で、そんな代物を俺の弟子に盛ったヤツは?」

 

 空気を一瞬にして引き締めた酒木は、部屋にいる人物全員の顔を見ていく。

 

 影丸と、烏丸。玉藻と従者。春臣と従者。白樺とその従者。

 

「……ま、誰かはわかるけど言わねーでおくわ」

 

 酒木は首を傾げ、髪を揺らす。

 

 後ろに待機する香茨からはその表情はよく見えなかった。

 

「議決はボツだ。帰りな」

 

 影丸は組んだ足を卓に投げ出して宣言する。

 

「然るべき《・・・・》処分を待ってろ。じゃ、閉会」

 

 何一つ定例通りに進まなかった、初めての会合であった。

 

 

 

 

「……天宮・・。官吏の情報は役に立ちまして?」

 

 

 

 

 会合終了後、会議室の前で待っていたのは、白樺・・だった。

 

「ああ」

 

 弟子に片付けを押し付けて、外の空気を吸ってくると出てきた酒木は、無表情で頷いた。

 

「申し訳ないです、玄関前では」

 

 白樺は扇子をぱちんと閉じて懐に挿し、酒木の目をしっかりと見据えた。

 

「お弟子さん、ひょっとすれば、ひょっとするかもですね」

 

 酒木が少し息を呑む。

 

 溶けていく雪のように微笑んだ白樺は、先ほどとは全く違う温度だった。

 

「それは、アイツが決めることだ」

 

 ふっと先に視線を逸らした酒木に、白樺はまた笑う。

 

「天宮の負けですね。……まぁ彼が決めることでしょうが、……」

 

「なんだよ」

 

 意味深にまつ毛を伏せた白樺を酒木が追う。

 

「あなた一度も彼を名前で呼んでいないでしょう」

 

「……それが?」

 

 図星な酒木を、白樺はさらに追いかけた。

 

「あなたが思っているより、名前は大事なものだと、いうことです」

 

「……体、大事にしろよ。ありがとな」

 

 部屋に戻ろうとする酒木に白樺は静かな声音で返す。

 

「今日の状況がフェアではなかったからです。わたくしは絶対中立ですから」

 

 その割には俺に当たり強くないか。そう言いかけて、半年前の無惨な石碑を思い出しやめておいた酒木だった。

 

 

 

 

 

 

「わかるか!?!?あのッッッ超可愛いメガネ姿!!足出し過ぎ膝小僧の供給過多!!世界にありがとう!!!尊い……いや、これはもはや尊い……」

 

 会議室に戻った酒木が目にしたのは、烏丸に肩を揺さぶられて首がすわっていない弟子だった。

 

 広がるカオス。

 

「お前に感謝するぞ鬼の少年!!!君の頭が足りなかったおかげで烏夜様のSSRカテキョ衣装が見れた…!」

 

 大量の涙を流しながら素晴らしい笑顔をしている烏丸。

 

 黒スーツがぐっしゃぐしゃだった。

 

「ひざこぞうのきょうきゅ……?えすえすあーる……?かてきょいしょ……?」

 

 香茨はがくがくと首が揺れながら言われたことをうわごとのように繰り返している。

 

「なんこの状況」

 

 思わず突っ込んでしまった酒木である。

 

「……」

 

「……あ、しはん。えすえすあーるですね!(?)」

 

 酒木を見た瞬間固まる烏丸と、覚えたての単語を言って親指を突き出す香茨。

 

「またやってんのかよ、しずか

 

 酒木は呆れ顔で烏丸を見た。

 

「お前のこと許してないからな酒木天宮この野郎」

 

 先ほどまでゆるゆるだった顔面を歪ませて、烏丸は酒木を睨む。

 

「距離感の認識がこんなに違うことってありますか?」

 

 香茨が苦笑いすると、2人はぐりんと香茨を見て真逆のことを言い放つ。

 

「こいつが小さい頃から知ってるからな」

 

「忘れもしないあのパーティで烏夜様に長ズボンを履かせやがって」

 

「「あ?」」

 

 顔を見合わせた2人は喧嘩をし始めた。

 

(烏丸さんて気が短いんだな)

 

 そう思い、鍛えられたスルー力で香茨は会議室の片付けを再開した。

 

 ちょうど机の反対側では白樺の従者である雪名せつなが椅子を揃えている。

 

 目が合うとペコリと頭を下げられた。

 

 嫌われているわけではなさそうである。

 

 あとの従者2人はというと、春臣の従者、らんと玉藻の従者、焔牙ほむらがは仲良くアルプス一万尺をしていた。

 

 いや、手伝ってくれませんかね……?

 

「ショタは!!膝小僧を出すべきなんだよ!!法律で決まってっからな!?!?」


 烏丸は相変わらず主人のてぇてさ(?)を語っているし、酒木は興味がなさそうだし、立っていただけなのに疲労困憊の香茨だった。







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