表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/11

其ノ肆 大妖怪、向合。


 

 

 

 


——大妖怪とは、本来「警備隊隊長」を意味する。

 

 真ノ國にはカーストが存在している。

 

 トップはもちろん、頭領。

 

 現頭領は座敷童である。

 

 次に閣僚・衆代。

 

 閣僚は頭領の事務を三人で手伝う職であり、他の国では大臣という役職である。

 

 衆代は各州を監督する、八人の長。知事と一緒だ。

 

 その次に、警備隊。

 

 警察、と呼ばれたりするものとほとんど一緒で、風紀を守る役目を持つ。

 

 警察と違うのは、その人数である。

 

 組織全ての人間で百人にも満たない。

 

 明確に就ける(ポスト)が決まっており、隊長五名、上級警備官一五名、中級警備官二〇名、下級警備官三〇名と、計七十名で構成される。

 

 少数精鋭の集団であり、國民の憧れである。

 

 その下に華族、名家が続き、一般で終わる。

 

 國の風紀を守る警備隊は、生半可な努力では入隊できない。

 

 容姿、性格、戦力、事務力、精神力など、さまざまな要素が求められる。

 

 その頂点に立つ、隊長。

 

 いわゆる大妖怪は、常に完璧を求められている——

 

 と、いうのが國民の共通認識であったのだが。

 

「オレんとこ変わりなし!!」

 

「ボクんとこもやなー」

 

「わたくしのところもです」

 

「私もです」

 

「俺もだな」

 

「……」

 

 会合ははじめに近況報告から入った。

 

 変わりなし、という。

 

 烏夜影丸。山と空の担当。

 

 九重玉藻。街と市場の担当。

 

 塩月白樺。中央区の担当。

 

 東音寺春臣。海と水辺の担当。

 

 酒木天宮。……自宅とその裏山の担当。

 

 スケールが1人だけ違う。悪い意味で。

 

(そうですね、裏山は平和ですよ師範。この間も鹿の親子を見かけました)

 

 香茨は心の中で酒木に大きく同意する。

 

「んじゃ気になることある人ーーーっ!」

 

 手ぇあーげてっ、とかわいこぶって聞く隊長代表。

 

「はいはーい!」

 

 同じくかわいこぶって手を挙げる玉藻を、影丸はタマモンどぅぞ!と指差した。

 

 

「あーちゃんってなんで頭領試験でたん?」

 

 

 刹那。とんでもない量の殺気が全員から発せられ、瞬きのうちに全員が微笑んでいた。

 

「あー俺?」

 

 頭をぽりぽりとかいて、うんざりとした顔でだるそうに。

 

 酒木はいつも通り言った。

 

 

「一番になりたいから」

 

 

 円卓のメンバーはみな唖然とする。

 

 そのあと影丸と玉藻が大口を開けて笑い、白樺と春臣は真顔で俯いていた。

 

「あまみゃあはそうだよなぁ!!」

 

「あーちゃんほんまにさいっこう!!」

 

「「……」」

 

 香茨はというと。

 

(……)

 

 チーンと音がしそうな程呆然と石化していた。

 

「それ以外の理由なんてないだろ」

 

 酒木はあくびをしながら出されたお茶を飲む。

 

 

「あー、あと。こいつをこの國で二番目の男にするため」

 

 

 そして後ろの香茨を指差す。

 

 企むような笑みで茶請けを齧りながら宣言した酒木を、やはり影丸と玉藻は笑うのだった。

 

「じゃーさ、皆なんで頭領試験受けるのか聞いていこうか。あまみゃあだけじゃ不公平だしな」

 

 影丸の言葉で、順番に発表していく。

 

「私はもっと真ノ國を発展させたいからです」

 

「わたくしも概ねそうです」

 

「ボクはみんなに敬われたい〜」

 

「オレは小枝(さえ)に言われたから」

 

 大妖怪らしいといえばらしい、無茶苦茶な理由。

 

 小枝。四十九院(つるしいん)小枝。現頭領の座敷童である。

 

 何を隠そう、少年であった影丸くんの初恋の年上(見た目は幼女)お姉さんは彼女だ。

 

「初恋拗らせてるカゲたんキッツ……」

 

 玉藻が笑顔のまま小声で呟き、それに酒木が重々しく頷いた。

 

「ちゃんとした恋愛もしてない奴が言うなァ!!!」

 

「ボクはまだ遊ぶの〜」

 

「恋愛なんて二の次だろ」

 

 三人がわちゃわちゃと騒ぐ中、白樺が静かに扇子を閉じた。

 

 ぱちん、と乾いた音が会議室の響く。

 

「本題に、入りましょう」

 

 瞬時に空気が締まり、笑っていた三人も落ち着く。

 

 白樺は薄く微笑んで言った。

 

 

「酒木天宮の警備隊隊長権限の剥奪についてです」

 

 

「……え」

 

 香茨の喉が、ひくりと鳴る。

 

(師範の隊長権剥奪…!?)

 

「……」

 

 当の本人は真顔で押し黙っている。

 

「……前回は途中でわたくしも理性を失ってしまったので」

 

 美しい眉をぐっと寄せた白樺。

 

(あ、石碑……)

 

 香茨は瞬時にこがねの言葉を思い出した。

 

「で、何?」

 

 影丸が頬杖をつく。

 

 気だるげな表情には抑えきれない憤怒が滲んでいる。

 

 白樺に変わり、春臣が指先を組み、柔らかく告げた。


「彼が隊長である意味はありますか?」

 

 おおよそ顔と似合わない発言に、玉藻は乾いた笑みを漏らした。

 

「何度言われても、オレは頷かない」

 

 ()()()()()()の無邪気な笑顔で、影丸は言った。

 

 春臣と影丸の妖気ぶつかり合いで、ビリビリと音を立てて空気が揺れる。

 

「それでは何度でも言います。彼が隊長である意味はありますか?」

 

 一触即発の空気に、玉藻が入る。

 

「はーちゃん、ちょっと調子乗りすぎちゃう?」

 

 ふわりと微笑んだ玉藻が、春臣のおでこをつんとひとつつつく。

 

 途端に春臣から力が抜けて、椅子にもたれかかる。

 

 本人も驚いた様子で目を見開く。

 

「あなた、中立でしたでしょう」

 

 軽く睨むような視線を玉藻に向ける春臣を、玉藻は笑った。

 

「まー、気分?カゲたんは年上でこわぁいしな」

 

 ひらりと自分の席へ戻り、堂々と媚を売ったことを言う玉藻。

 

「全員席ついたな。——はるる、あまみゃあが隊長である意味。あるぞ」

 

 影丸の言葉に、春臣は力が抜けたまま訝しげに眉をひそめる。

 

「裏山を守ってるのは酒木だ。他の誰にもできない」

 

 その言葉を聞き、白樺は苦々しい顔をする。

 

「そ、れは」

 

「あのさァ、話し合ってるとこ悪いけど」

 

 今の今まで黙っていた酒木が、突然割り込む。

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 





第二章もうすぐ終わる予定(予定)です。予定予告。

三章に入る前にインタールード(幕間)を数話挟みます。

ウラ(どうでもいい)も出す予定(予定)です。予定予告。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ