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親愛なる後輩くん  作者: さとう涼
(2)復縁を申し込もうとしたら

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009

「俺の誕生日だからだろう?」


「……ああ、うん。まあ、そうなんだけど」


 びっくりしたあ。


 たしかにそれもある。なのでプレゼントも用意していて、どのタイミングで渡せばいいのか悩んでいたところ。


「これ、プレゼントなんだけど」


「えっ! 俺に?」


「仕事のときにでも使って」


 プレゼントはブランド物のボールペン。変なプレッシャーにならないよう無難なアイテムにした。


 敦朗はさっそく包み紙を開けて、箱のなかのボールペンを手に取った。すげーいいやつじゃん、と笑顔になったので気に入ってくれたみたいでほっとした。


「でもどうして急にプレゼント?」


 敦朗が不思議がる。


 それもそう。わたしたちは離婚してからお互いに誕生日プレゼントをあげたことがなかったから。


「たまたま誕生日が明日だったから」


 本当は当日に会って渡したかった。だけど、ほかに約束があるからと断られるのが怖かったので、一日前倒しで会う約束を取りつけた。


「うれしいよ。大事に使う。ありがとう」


「どういたしまして」


 敦朗はボールペンを丁寧に箱にしまうと自分のバッグに入れた。それからコーヒーをごくごくと飲み干す。さらに腕時計で時間を確認して、そわそわし出した。


 なんだか帰る気満々?


 わたしは急いで苺タルトを食べようと手を動かしてみるけれど、まだ目的は達成されていない。


 でもどうしよう。やっぱり言えない。復縁したいと言ったら迷惑に思うかもしれない。


「今日は本当にありがとな」


「ううん。こっちこそ、久しぶりに一緒に食事ができて楽しかった」


「俺も。誘ってもらってよかった」


「そう言ってもらえるとうれしいな」


「あのさ……」


 そう言いかけると再び敦朗が落ち着かなくなる。にやけた顔をしたかと思えば、恥ずかしそうに視線を泳がせた。


「なに? 言いたいことがあるなら言って」


 もう、なんなの? 気になるじゃない。


「今日こうして時間を持てたわけだし、俺から報告したいことがあるんだ」


「え……」


 わたしだけでなく敦朗も話があるの? なんだろう。「報告」ということは仕事の話かな。


「まさか転勤の内示があったの? 栄転?」


「いや、そうじゃないよ」


 少しほっとする。でも敦朗が急に改まった表情になるので嫌な予感しかしない。


「実はつき合っているひとがいるんだ」


「え――」


 ドスンッと体が椅子に張りついたみたいだった。正直それは考えなくもなかったけれど、そんな素振りがなかったので、都合よくフリーだと思っていた。


 離婚して三年。敦朗にいいひとができても不思議ではない。


 そっか。そうなのか。敦朗とわたしはもう同じルートにはいなかったのか。そんなことも知らず、わたしだけが夢見ていたのか。


「よかったね。おめでとう」


 気持ちとは正反対のセリフ。こんなときなのに自分のプライドは捨てられない。ショックなんて微塵も受けてませんよという態度を貫くんだ。


「ただひとつ問題があって、雨宮だから言うけど、相手がうちの会社の人間なんだ」


 最悪だ。よりにもよって身内の人間だなんて。


「……だ、誰?」


 知りたくないけど聞かないわけにいかない。恐るおそるたずねた。


結城(ゆうき)だよ。半年前にうちの部署に配属になったんだけど、つき合うようになったのは最近なんだ。みんなには秘密にしてる」


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