表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
親愛なる後輩くん  作者: さとう涼
(2)復縁を申し込もうとしたら

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/25

008

 行き先は三階建ての小さなビルの一階にあるビストロ。カジュアルなフレンチのお店を選んだ。


 それでも今日は緊張する。でも敦朗に悟られてはいけないと思い、必死に明るく振る舞った。


「ここなんだけど。どう? 雰囲気あるでしょう?」


 ビル自体は古いらしいけれど一階は改装され、レトロな木製ドアが目を引くおしゃれな外観だ。


「いいね。よく来るの?」


「沙織さんと前に一度だけ。沙織さんがこのお店をさがしてくれたの。店内も素敵なんだよ」


 お子さんのいる沙織さんとはプライベートで食事に行くことはなかなかできない。このときは旦那さんが有休を取って全面バックアップしてくれたのだ。なんて大げさなと思ったけれど、実家が遠方でほかに誰も頼れない沙織さんは自分時間を持つのは難しいらしい。


 メニューはコース料理にした。テリーヌ、ポタージュスープ、牛肉の赤ワイン煮込み。どれもおいしくてふたりともハイペースで完食。最初こそ緊張してガチガチだったけれど、ワインも飲んでいたせいか、いつの間にか普段どおりに振る舞えるようになっていた。


「食べるの早すぎ」


「雨宮だって」


「だってお腹空いてたんだもん。それにおいしくて」


「俺も。変わんないな、ふたりとも早食いだったよな」


 敦朗は食べるのが早いのが自慢だと言っていた。そんな敦朗とつき合うようになって、いつしかわたしもそうなっていた。いいことじゃないんだけど、なんだか敦朗と対等に近づけたような気がしてうれしかったな。


 デザートの苺タルトが運ばれてきて、いよいよ本題に入ることにした。そうなると途端に緊張がぶり返してきた。


 心臓がドキドキと音を立て、瞬きも増える。そのうち体が言うことをきかなくなって、とうとうフォークを持ったまま固まってしまった。


 敦朗は食べ終わり、コーヒーを飲んでいる。


「食べないのか? 甘いもの好きだったろ?」


「あ、うん。食べる」


 ゆっくりと深呼吸して気持ちをなんとか落ち着かせる。思い切って苺タルトを口に入れると、甘酸っぱい香りと味に癒やされた。


「あのね……」


「うん」


「今日、食事に誘った理由なんだけど……」


 まともに敦朗の顔を見ることができない。わたしは握っているフォークだけを見ている。


「わかってるよ」


「え!?」


 もしかして、わたしの気持ちに気づいているの? 気づいていながら一緒に食事をしてくれているということ?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ