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親愛なる後輩くん  作者: さとう涼
(1)無愛想な彼だけど

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004

 離婚の理由については沙織さんにだけに打ち明けている。ほかのひとたちからは聞かれたことはないけれど、いまのわたしと敦朗の関係からは想像もつかないだろう。


「そうだよね。ごめん。ちょっとからかいすぎた」


 沙織さんの声のトーンがさがる。


「いいえ。いいんですよ」


 悪気がないのはわかっている。わたしはできるだけ笑顔を作った。


「そういえば蓮見くんっていくつだっけ?」


「入社四年目なので二十五ぐらいだと思います」


 異動してきたとき、女性陣の間で「若いなあ」と話題になった。二十代半ばで本社に異動してくるひとは珍しいわけではないけれど、中途採用も多いので本社の平均年齢は店舗より高めだ。


「独身だよね?」


 沙織さんが真顔でたずねてきた。


「そうですね」


 でもなぜそんな質問をしてくるの?


「余計なお世話だけど、蓮見くんってまじめそうでいいと思うよ。わたしはけっこう好きなんだよね」


 いきなりおすすめされても蓮見くんのことを恋愛対象として見たことがないのでまったく想像がつかない。


「いやあ、年下はちょっと……」


 というより向こうが嫌がるに決まっている。だって八つも下なんだよ!


「だからってわたしたちの同年代や年上は既婚者ばかりだよ」


「たしかに」


 世の中晩婚化というけれど、うちの会社の場合、あまりそれは当てはまらない。ほぼ既婚者だ。


「とりあえず蓮見くんは置いといて。年下もいいんじゃない? 可能性が広がると思うよ」


「そうですね……」


 言っていることは理解できる。でもいまは敦朗のことしか考えられない。


「ねえ、前に再婚願望があるって言ってたけど、ちゃんと考えてる?」


「ええ、まあ。そういう縁があればいいなあとは思ってます」


 沙織さんとはたまに恋愛や結婚の話をするのだけれど、わたしに彼氏ができる気配すらないことをまじめに心配してくれている。だから蓮見くんのことをすすめてきたり、やたらと年下押しをしてきたりしたのだと思う。


 沙織さんが心配する理由もわかる。わたしにはタイムリミットが近づいている。妊娠、出産、育児。そのことを考えたらのんびりとしていられない年齢だ。



◇◇◇



 お昼休み。


 いつものように社員食堂へ来た。会社周辺には食事ができるお店が少なく、コンビニに行くひと、お弁当を持参してくるひともいるけれど、社員食堂を利用するひとが多い。


 沙織さんはいつもお弁当を作ってきて自分のデスクで食べる。わたしも最近はお弁当を作ってくるようになった。でもわたしの場合はそれを持って社員食堂で食べる。お昼休みはひとりで過ごしたい派だ。


 食事が終わるとスマホをいじったり、読書をしたりする。一旦仕事から離れてリセットしたほうが午後の仕事がはかどるような気がするからだ。


「混んでるなあ」


 でも四人がけのテーブルでひとりぽつんと食事をしている蓮見くんを発見。


「ここいい?」


 蓮見くんの斜め向かい側に座ると、蓮見くんは目だけを動かしてこちらを見た。


「僕の返事を聞く前にもう座ってますけど」


 嫌み? なにもそんな言い方しなくても。


「迷惑ならほかのテーブルに移るよ」


「どうぞ。別にかまいませんよ」


 怒っているわけではなさそう。だけどやっぱり愛想がない。苦手なタイプだな。お弁当箱の蓋を開けながら、そんなことを考えていた。


「蓮見くんは実家暮らし?」


 無言で食べるのもなんだと思い、答えやすそうな質問をした。


「いいえ。ひとり暮らしです」


「それじゃあ、そのお弁当は自分で作ってるの?」


「……ええ、まあ」


「そうなんだあ。料理ができるなんてすごいね」


 蓮見くんがお弁当の中身を手で覆い隠した。


 わたしが知る限り、蓮見くんはいつもお弁当を持参している。彼は独身なので、てっきりお母さんが作っているのだとばかり思っていた。


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