014
お店は街中華。シンプルな木製テーブルが並んでいて家庭的な雰囲気だった。
「よく来るの?」
「学生のとき。大学が近くだったんで」
「いまも学生時代の友達と?」
「仲のいい友達はみんな地方に転勤になりました」
「わたしも大学時代の友達とはめったに会わなくなっちゃったなあ。同期もかなり辞めちゃったし」
子育てに忙しかったり、旦那さんの転勤で引っ越してしまったりして、徐々に友達が減っていった。
子どもがいればママ友ができていたのかなあ。なんて考えても仕方のないことだけど。
「蓮見くんは結城さん以外の同期のひとたちとは会ってるの?」
「いいえ。でもこの間、研修で本社に来たやつと久しぶりに飲みに行きましたけど」
「やっぱり仲いいんじゃん」
「研修終わりに商品開発部に会いに来たんですよ。そのときに誘われただけです」
「よかったね。同期って特別だよね」
「僕は雨宮さんとは違います。同期だからって仲がいいとは限りませんよ」
照れているのかな。いちいち反論してくる。
「それよりなににします? この店ってけっこうリーズナブルなんですよ。たくさん頼みましょう」
そう言われ、メニュー選びは蓮見くんにおまかせした。エビチリ、麻婆豆腐、小籠包など。おなじみのものをふたりでシェアした。
「おいしい!」
「それはよかったです」
「中華料理のお店ってひとりで入りにくいから連れて来てもらってよかった」
「常連さんばかりって感じですよね。この店は昼はサラリーマンや男子学生が多いですし」
「でもいまの時間は家族連れもいるよね。地元の方たちなのかな」
「そうみたいですね。でも雨宮さんならどんな中華料理屋でも大丈夫そうですけどね」
蓮見くんはあっさりと言って、上品にエビチリを食べる。
なんだか、ばかにされているような気がするんだけど……。
しょうがないじゃない。離婚してひとりで過ごすようになったら、それが楽になって、気がついたらおひとり様でごはんを食べることもあたり前になっていったんだよ。
あー、やだやだ。仕事に没頭して忘れていたのにまた敦朗のことを思い出しちゃったよ。
気分が沈みそうになったのでビールを頼んだ。ついでに蓮見くんの分も。おつまみは海鮮シュウマイ。グラスの半分を一気に飲む。続けて残りを飲もうとグラスに口をつけた。
「ペース早すぎですよ」
「そんなことないよ。普通だよ、普通」
半ばあきれている蓮見くんをよそにビールをグイグイ飲み、海鮮シュウマイもパクリ。どちらもおいしくて、どんどんお腹のなかに入っていく。
だけど三杯目を飲み干し、四杯目を頼もうと店員さんを呼ぼうとしたとき、すかさず阻止された。
「もうやめておきましょう」
「なんで?」
「酔っぱらいの面倒を見たくないので」
「迷惑はかけないよ。ひとりで帰れるし」
お酒は強いほうだと思う。量だってそれなりに飲めるし、酔いつぶれたこともない。
だけど蓮見くんは伝票を手に取ると席を立った。
「帰りますよ」
「はい?」
「これ以上飲んだって楽にはなりませんよ」
「はあ? なに言ってるの?」
「いいから行きましょう。先にお会計してきます」
「ちょっと待って! お会計はわたしが! あっ、その前にトイレ!」
蓮見くんがわたしを置いてさっさと席を離れてしまうので、あきらめてトイレに行くことにした。




