コードブルー
「コードブルー、内視鏡室!」
院内にけたたましく響き渡るアナウンスに、ナースステーションが一瞬静まり返る。
そして次の瞬間、椅子がきしみ、靴音が廊下に響き、白衣がなびく。
「……よし、行こうか」
無雑医師はゆっくりと立ち上がり、ストレッチしてから内視鏡室へと向かった。
いや、あくまで“向かった”のだ。到達はしていない。
なぜなら、内視鏡室の前には――
「人、人、人……」
すでにそこは、コンサート会場さながらの密集状態。
看護師、研修医、若手医師、技師、管理部門、なぜか売店の店員までいる(ような気がした)。
「そりゃ、近くの人から集まるから、間に合わないよね……」
苦笑しながら無雑医師は踵を返した。
数日後。
「コードブルー、4階病棟、入浴室!」
またもや院内放送。
無雑医師、今度は気合を入れてダッシュをかけた。白衣を翻しながら階段を駆け降りる。4階、曲がって、入浴室の前――
「えっ……何これ、フェス?」
その場には、またしても人、人、人。今度は本当に100人くらいいたかもしれない。
「ちょっと!押さないで!」という声。
「モニター持ってきました!」という声。
「すみません、今行きまーす!」という声。
誰もが何かしてる風。
しかし誰も本質的には何も見えていない。
「無雑先生、状況どうですか?」
後ろから息を切らしたE医師が声をかけてくる。
無雑医師は無表情で言った。
「こんな状況で、現場の状況はよくわかりません。」
その後も、コードブルーの現場に“到達できない”ことが何度もあった。というか、急変対応できたのは1回しかない。
無雑医師は考えた。
「これ、僕じゃなくて、集団行動に参加する訓練なのでは……?」
「コードブルーって、RPGでいうところの“村人A”になりに行く儀式では……?」
そして、無雑医師は決断した。
「コードブルー、反応しません宣言。」
もちろん、彼の病棟で何かあれば、コードブルーなんかかけなくても自分で蘇生してしまうのである。
実際、9階病棟で急変があったときは、放送前に既に気づいて対応し、ICU搬送まで済ませていた。
それを見たD看護師がぼそりとつぶやいた。
「……だからこの人、自分の病棟以外だと全然走らないんだ……」
ある日のこと。
「コードブルー、5階病棟!」
その放送を聞いたB看護師がふと聞いた。
「無雑先生、5階だって!」
「うん、うち9階だから……」
「……?」
「つまり、走らなくていいという判断です。」
そして白衣の袖をまくり、コーヒーを一口。
「コーヒーがぬるくなる方が、よほど緊急事態だからね」
そう言ってニヤリと笑う無雑医師。
それを聞いたC看護師はぽつりと漏らした。
「……この人、実はコードブルー対応一番得意なんだよね?」
「……でも、現場にいないのよ」
こうして、今日も病院のどこかでコードブルーが鳴る。
そして無雑医師は――
静かに立ち上がり、ちょっとだけ、見に行くか迷っている。
コードブルーがかかっていなくて、たまたま目の前で急変が起きたやつは、現場の人間指揮して対応していることが多いのですが、コードブルーは行っても疲れるだけで・・・。という実話なんですが、少しコミカルに書いて・・・とChat-GPTに頼んだらこうなりました。




