重い左足(A大学病院・血液内科 無雑医師の記録)
前日の夜、無雑医師は久しぶりに長時間の看取りに立ち会っていた。
患者は高齢で末期の血液疾患。最期の瞬間まで家族と話しながら過ごしていたが、深夜1時過ぎに静かに息を引き取った。
その場の緊張感や感情の波、そして家族への説明や書類の手続きが重なり、病院を出たのは午前3時を回っていた。
帰宅後すぐに寝たものの、眠りは浅く、夢の中で何度も患者さんの顔を見た。
翌朝6時半。目覚ましよりも早く目が覚めたが、体が重い。特に左足に妙な違和感を覚える。
「昨日は長時間立ちっぱなしだったし、ヘルニアもあるし、足に来たのかな…」
そう自分に言い聞かせ、急ぎ身支度を整える。
玄関先で革靴を履くと、左足だけが妙に固く、重く感じられた。
「気のせいだ」と思い込んだまま家を出た。
病院に着く頃には違和感がはっきりしていた。歩くたびに左足が引っ張られるような感覚。
午前の外来が始まると、患者との会話に集中している間は忘れるが、廊下を移動する時や階段を上がる時に再び重さが気になる。
さらに昼前、ナースステーションで書類をまとめていた時、隅の方で黒い影がよぎったような気がした。
振り向いても誰もいない。心拍数が少し上がる。
「昨日亡くなった患者さんが…?」
と頭をよぎり、背筋が冷える。
午後の病棟回診では、看護師に「先生、歩き方が変ですよ。左足を引きずってるみたい」と言われる。
笑ってごまかしたが、内心は「やっぱり何か憑いてるのか?」
という不安でいっぱいだった。
カルテを書く間も、左足だけをぎゅっと握られているような感覚は消えない。
「見たらダメだ、怖くなる」
そう思い、あえて足元を見ないようにして業務を続けた。
夜、外来と病棟業務を終えて帰宅したのは21時過ぎ。
玄関に入ると、ふと靴の並びに違和感を覚えた。
右足の革靴が一足、左足の革靴が一足。しかもデザインが違う。
その瞬間、朝からの違和感の正体に気づく。
左足には、別の型の革靴——底が厚く、革が硬い古い靴——を履いていたのだ。
「……おいおい、霊じゃなくて靴かよ!」
安堵と同時に、自分の間抜けさに笑いがこみ上げる。
翌日、看護師にこの話をしたら「先生、やっぱり疲れてたんですよ」と大笑いされた。
ホラーな一日
本当にあったネタのような話です
前日の看取り話はChat-GPTの創作です。