表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死に戻り王子に買われた奴隷は英雄になる  作者: 稲葉 鈴


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

43/43

20.物語を、終わらせる

長め。

最終話だから仕方がないね。

 これで、先見の王子様の物語は、おしまいだ。


 冒険者たちは、アベラールの港町ボビリエで王子様主催の勝利の宴を楽しんだ後は、三々五々それぞれの拠点に帰っていった。報酬は、依頼を受けた冒険者のギルドで受け取る事になっているから。終わったら、戻ってきてもらわないと、困るだろう。どこの国の、町の、冒険者のギルドだって。特にここに来てくれたような連中は、腕利き、なんだから。

 俺の知り合いの、魔王のすぐそばの拠点まで来てくれた冒険者たちは、全員疲労困憊ではあったけれど、無事生き延びた。一匹たりとも、モンスターは王子様にも聖女様にも修道女様にも寄らせなかったぜ! と大層ご満悦だった。

 ついでに、拠点をアベラールに移すとか言いだした。王子様は多分王様になれと持ち上げられるのを嫌って、臣籍降下されるだろうとか言っていた。そうしたら、その領地に行って、お抱え冒険者にしてもらうんだとか、与太を飛ばしていた。酔っ払いが楽しそうに酔ってるから、俺も一緒に笑っておいた。多分その読みは、合ってるんだよなぁ。


 聖女様とそのお付きの修道女アデライドは、神聖王国バシュラールに帰っていった。

 聖女様はそのお力のほとんどを魔王の封印で使い果たしてしまったけれど、それでも終生聖女様だった。新しい聖女を、神聖王国は立てなかったのだ。聖女様を聖女様たらしめる基準を俺は知らないけれど、まあ、魔王も倒して平和な世界になったんだ。それでいいと神聖王国の偉い人が決めたのなら、それが正しいんだろう。

 お国に帰られた聖女様は、大聖堂の祈りの間で祈ることが、一日の大半になっていた。女神さまと、どんなお話をしていたのだろう。誰がそう聞いても、ただ、聖女様は微笑まれるだけで、なにもお答えはくださらなかったそうだ。


 エマール国の騎士団長、ガエルはまあ、そのままだ。もう騎士団長になっちゃってるから、それ以上の昇進はない。実は奥さまはご懐妊中で、帰宅したら無事に息子が生まれていたと手紙をくれた。彼の国にこれからも盾の守護者は続いていくのだ。次の魔王復活の時まで、エマールは安泰だろう。

 ちなみに俺と王子様と南の賢者様は大慌てでガエルと奥方とご子息に贈り物を誂えた。どういう経路で持って行ってもめちゃくちゃ時間だけはかかるから、俺が陛下から通行証を発行してもらって空を飛べる方の天馬、ビュファール種のセレストに乗ってすっ飛んでいった。

 ところでなんで息子の名前バティストなんだよ。俺じゃねえか、そこはカミーユだろうがよ、勇者様だぞ。ちなみにカミーユは次男につけると奥方様が意気込んでおられたので、俺としては何も言えなくなってしまった。奥方様は俺が奴隷だと知らないから仕方がない。そう仕方がないんだ。納得できるかこの野郎!


 勇者カミーユは、騎士団長のガエルとそれからエマールから来ていた連中と一緒に帰った。エマールはガエルの他にも結構な数の騎士を出してくれていた。彼らは冒険者に交じって文句も言わずにモンスターを倒し続けてくれていた。ちなみに最初に鬨の声を上げてくれたのも彼等だ。

 魔王を封じたその時に、カミーユの中にあった勇者の力はなくなった。短い付き合いだったから、そんなに喪失感はないらしい。良かったのか悪かったのか。

 冒険者になって世界を周るか、村に残るかは、もうちょっと考えると別れ際は言っていた。しばらくして一息ついたころに、結局冒険者になって世界をめぐることにしたと手紙が来た。まあ、年取って冒険者やるのが辛くなってから、村人はやればいいんだよ。

 後お前は伝書バトの魔法を覚えろ。俺は使えないが、お前が覚えれば連絡はとれるんだよ。イチイチ冒険者のギルド伝手に手紙をよこすな。


 南の賢者様は、何とボードレールに帰らないとか言い出しやがった。やめろ、帰れ。さっさと帰れ。国際問題になるだろ。

 誰も言わないから俺が代表して言ったら、なんか誰かに伝書バトの魔法を送り出していた。ボードレールの王族じゃねえだろうなと思っていたら、なんと弟子にだった。お前の兄弟子だとか言われたけれど、俺は南の賢者様の魔法の弟子になった覚えはないから、俺の兄弟子じゃなくて王子様とお姫様方の兄弟子じゃねえかな。分かったよ、俺の兄弟子でもいいよ。だからそんなショックを受けた顔するんじゃねえよ。

 それからなんやかんや伝書バトの魔法ででやり取りをして、南の賢者様は南の賢者様をやめた。兄弟子が継ぐことになったのだという。あれそういう類の称号だったのか。

 南の賢者様をやめた南の賢者様は、なぜか王子様についてくることになった。なんでだよ。いや王子様がいいならいいけどよ。


 王子様は、案の定王様になるべきです、みたいなことをよく言われるようになった。すでに上の兄王子が陛下の跡を継ぐために政務を執り行っているというのに。そして別に、失策はしていないし兄弟仲も悪くない。

 だから王子様はさっさと臣籍降下することにしたらしい。王領地を一部貰って、そこに引っ込むことにしたのだとか。

 さてそうなると奥方の選定ということになって、とても大変なことになった。あっちからもこっちからも縁談が舞い込んだのである。前からだけどな。俺は大変ですね、と、ただあっちのお茶会とこっちのお茶会とそっちの夜会に出席なさる王子様を見送るだけだ。あ? 護衛で俺も行く? しょうがねえな、あちらの玄関までですよ。

 そうして選ばれた奥方と、王子様は、訂正シリル大公様は仲睦まじくいらっしゃる。

 ベランジュのジジイはアベラール国の諜報部の偉い人のはずなのに、しれっとシリル大公についてきている。南の賢者様と一緒で、跡を誰かに譲ったのだろう。陛下をはじめ誰も問題にしていないので、きっと問題など無かったのだろう。

 初めて会うベランジュのジジイの奥方が、お屋敷の一切を取り仕切っている。夫婦そろって、自分達はもう長いことこのお屋敷に勤めていますが? という顔をしている。おい息子、お前もか。

 まあ、楽しそうなので問題はあるまい。


 最後に、俺だ。

 俺は奴隷紋を消して貰えた。南の賢者様がちょいちょいちょいとやれば消えた。魔法のインクを使った入れ墨だから、痕は残ったけれどまあこんなところ外からは見えないしどうでもいい。南の賢者様、流石だよな。

 問題はその後である。俺が奴隷であることを知っているのは少数なので、俺は騎士だと思われている。いや結構な人数が知っているはずじゃねえのか。だって王妃様、俺を騎士相当にするために相当。

 なるほど。騎士相当にするために王妃様が頑張ってくださった結果、魔王を倒した俺は奴隷から解放されて、その時点で王子様の騎士という扱いになったのか。分かるかそんな貴族みてえなこと。

 なので俺は一足飛びに騎士になった。騎士になったのはいいんだが、王妃様が手を回して下さったのが五年以上は前だったために、俺は元々騎士であった、と勘違いしている人がそこそこいた。あの五年前の時点で、奴隷から解放して騎士に、って話になってると思われていた訳か。だから何か褒美を取らせなくてはいけなくなってしまった。王子様とベランジュのジジイと南の賢者様はにやにや笑いながら俺に何がいいかと聞いてくる。


「特に望みなんてねえんですよ」


 俺は奴隷だった。奴隷には望みなんてものはない。しいて言うなら、上手い飯と、いい寝床と、あとは悪く無い主がいればそれでいい。それはずっとあったから、あとは魔王を倒せりゃそれでよかった。

 で、それを達成してしまったわけだ。

 先見の王子様ただ一人の護衛にして、魔王討伐の英雄というたいそうな肩書を俺は貰ってしまったわけで、しかも功績に欲しいもんもないときたら。


「妹の内どっちにする」

「お断りだわ」


 姫君をめとるくらいしか褒美が思いつかないとか言われてもめっちゃ困るってことを学んでくれや陛下! 違う? 知ってた? 尚たち悪いわ!

 とりあえず俺もジジイたちと一緒に王子様にくっついて大公領に行くことになった。拒否権など無かった。いや別にいいんだけどさ。安定した生活は喜ばしい事だし。

 新しい生活を送っていたら、お断りしたはずの妹姫様の片方が押し掛けてきた。なんでだよ。俺にはあんたが怖い記憶があるんだよ。あんたら二人揃うと北の賢者様と同じくらいの威力の魔法出すじゃねえかよ。あ? 南の賢者様に弟子入りしたから単体でもいける? なお悪くなってんじゃねえか!

 でもまあご本人様の意思だというなら俺に拒否権など無く。いやダメだろ。ただの騎士に、爵位すら……くれる。お姫様には着いてくる。そういうもんなのかよ。

 こっちに移住してきた冒険者パーティのシャルルとクリストフにはめちゃくちゃ笑われた。笑うがいいわ。俺がお前らの立場だったらむせるまで笑うわ。

 俺とお姫様は大公家の隣に領地を貰い、分割じゃねえって辺りがすげえよな、流石王家。爵位はお姫様に持って貰って、俺は大公様に仕えている。なんやかんや言ってくる連中ももちろんいるけれど、それはどっちかって言うとおっさんどもの下卑た笑いなので放っておいている。楽しそうで何よりだよ畜生。

 引退された王様や、王妃様や妹姫様の片割れとそのご家族や、跡を継がれて陛下になった兄王子様や侯爵家のお嬢様と結婚する形で臣籍降下された兄王子様も、たまには遊びにいらっしゃる。

 夜寝た時でさえ、こんな幸せな夢は見たこともないけれど、これが、まあ、今後この国で語り継がれることになった、先見の王子様と奴隷騎士の物語だ。

 何とか王子様の魂が擦り切れる前に魔王のヤツを倒せたので、俺としてはもうそれだけで満足なんだけどな。

お付き合いありがとうございました。

十万文字で物語を畳む、という練習のために書いたものです。

とても楽しく書きました。

わたしの悪癖として、無駄に長く丁寧に書いてしまう傾向にあるので、「とりあえず先に先にと進んで、枝葉は切り捨てる」とした結果「切り捨てすぎでは??」となりました。

学びにはなったけれど難しいなあ!


今回もやるなら、最初に三万文字くらい使って、魔王討伐を二周か三周王子目線で書いておくべきだったな、と思います。

正直王子様の死に戻り部分が死んでいる。そこで魔王に複数形態があることとか、示唆できればよかったですよね。

十万文字では無理なんじゃよ。

二十万とか三十万とか五十万とかけて丁寧にやるべきだなと分かったのでまあ学びはあった、ということで。


次は何を書こうかな。

もうしばらく、十万文字チャレンジはする予定です。

ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ