17.勇者様を迎えに行こう-1
バシュラールを出て、天馬を一頭ゲットして。ちなみに天馬の出るダンジョンは、聖女様の同行者、修道女のカリーヌさんが知ってた。俺たちは一路ベシエールを通り抜けて、エマールの勇者様の元へと向かう。
もちろん道中ベシエールの王様に会ってパーティーが開かれたり、魔王討伐の軍資金を出して貰ったり仲間が増えたりして、それからエマールだ。今回は、エマールのお城にも行く。前回エマールに行った時は、近くに行きもしなかったから新鮮だ。
エマールの王族の皆さんと晩餐会の準備をしている王子様と聖女様を、大変だなと思って見ていると、ソファにだらしなく座り込んだ南の賢者様に呼ばれた。俺の名前だけ呼んで、あとは手をひらひらと振って呼びつける。ジジイには堪えるんだよとぐったりしてるから、ついでに水も持って行ってやろう。
「お前、明日になったらちいと行って、勇者様連れてこい」
「あいよ」
コップに注いだ水をぐっと南の賢者様が飲み干したころ、ベランジュのジジイが地図を持って、こっちに来る。
「ここが現在地、目的地はここになります」
エマールには二本の大きな川があって、その片方がウジェ川。勇者様のいる、オーリク村のある川だ。お城があるのは、も一本の川、ブラシュ川の方だ。陸路で行くとなると、結構離れている。街道の都合もあるしな。
「エマール国王陛下は、こちらにしばらく殿下方にとどまって頂きたいようです。勇者様をお迎えしたら、おそらくすぐに出立となるでしょう。こちらの城に再度寄ってもらうのも心苦しい、と」
確かに地図を見る限り、行って、戻って、それからアベラールは大分遠回りだ。
確かにそれなら、俺にちょっと行ってこいって、言いたくなるわな。ここからオーリク村への道は分からないが、ウジェ川のそばまで行けば、あとは道は分かる。一回行ってるからな。
「じゃあちょっくら行ってくるわ」
背中に羽が生えている方の天馬、ビュファール種のセレストを引っ張り出して鞍を乗せる。そういえばアベラールの城に帰った時に乗っていた天馬は、鞍なんて無くて裸だったから、厩番に相当文句を言われたな。鞍が仕上がるのを待ってたら、帰ってくるのもっと遅くなるんだ。そう言ったらそれもそうかと理解されたが。貴族様の時間で生きるな馬鹿野郎。
セレストに乗せるのは、二人用の鞍だ。勇者様を乗せるためにもう一頭ビュファール種の天馬を引き連れていくのもあれだし、そもそもカミーユ、馬に乗れるかどうかも分からん。当時のオーリク村に馬はいなかった。いたはいたけれどあいつは乗馬用じゃなくて荷馬車用の荷馬だからな。乘っちゃいけない。子供ならともかく大人が乗ったら潰れるわ。
ふわりと、セレストは空を飛ぶ。目指すのは、もう一本の川。ウジェ川だ。うっすらと見えているあれがそうだろう。
後はウジェ川に沿って進んで、見えてきたのはオービニエの町。オーリク村までは、もう少しだ。空からだとよく分からねえけれど、オービニエの町の辺りで、地図を見た限りウジェ川は少し折れてるから、多分あそこがオーリクの町だ。
空を滑るように、セレストは飛ぶ。夕方が近い。朝に城を出て、夕方にはもうオーリク村だ。ビュファール種の天馬の機動力はけた違いだ。道を歩かなくていい、ってのが、でかいよな。
「よう勇者様、魔王倒しに行こうぜ!」
森の中、ダンジョンの近くに人を見つけた。似たような焦げ茶色の髪の連中が全部で五人。ダンジョンから村に帰る途中なのだろう。そこに、カミーユもいた。デオダもベランジュールもエドガールもベネディクトもいる。
そこにセレストが舞い降りる。
当然だけど、みんなびっくりした顔で俺を見る。
まあな。手入れもしていないぼさぼさ髪で、たまに奥さん連中にとっ捕まって櫛を入れられていて、服だって村の人に作って貰った適当なのを着てた。棍棒や斧をぶん回して戦っていた俺とは、印象が違うだろう。天馬に乗って、髪を後ろに撫でつけて、着ているのはかっちりとした騎士服だ。
村を出てから二年が経っている。三年に近いかもしれない。デオダなんか顕著に大人になっているが、俺だって変わりようがすごいな。
「バティスト……?」
「お前、バティストか?」
「は? 魔王? 勇者様??」
俺が、みたいな顔をするなデオダ。お前じゃねえわ。
セレストは地面に降りる。俺も馬上からはあれ何で、ひょいと、セレストから降りる。分かった、分かったから撫でろと強要してくんな。鼻を押し付けてくるな。ブラシもそういや持ってきてねえわ。
「聖女様より、魔王の復活についてお言葉があった。カミーユ、勇者様として魔王を倒してくれ」
「待て、待ってくれバティスト」
「おいバティスト、どういうことだ?」
混乱するカミーユに、落胆するデオダ。それから、代表して俺に問いかけてくる混乱した顔のエドガール。そりゃそうだよな。
「とりあえず、村に帰ろうぜ。一晩泊めてくれ。村長さんにも説明しないといけないしな」
「そう、そうだよな」
どこから聞いたらいいのか分からない、という顔の冒険者連中を連れて、オーリク村へと戻る。ダンジョンの方から俺と天馬が来たもんだから、みんな口を開けて驚いていた。そりゃそうだ。
「バティスト……か?」
「よう、久しぶり。バティストだ。村長さんを呼んでくれ」
「え、お、おう」
村の大工のドミニクに行き会ったので、片手を上げて挨拶をする。村長を呼びに行ったのは、ドミニクじゃなくて、他の。誰だ。顔よく見えなかったぞ。まあいや、ありがとうな。後ろ姿だけだと、この村の連中、いやこの村だけじゃねえけど、似通っていてよくわからねえんだよな。
「いやなんでお前が……それにその格好。どういうことだ」
「村長さん来たら説明するから、ちょっと待ってくれや」
「口調はバティストなんだよなあ」
まあこの格好と合ってない自覚はあるから、気にしないでくれ。無理だろうけどな。
デオダ好きです。
彼が主人公のスピンオフを書く予定はないんですよ。




