16.聖女様からの連絡を待つ間に、天馬を手に入れよう-1
魔王復活の時は近い。
近いっつっても、明日とか明後日とかじゃない。世界にはモンスターがいて、そいつらが増えたり元気になったりすると、魔王の復活は近い、って頭のいい人とかが言うわけだ。南の賢者様とか、先見の王子さまとかが。俺たちが旅に出ている間に、王子様は王子様で、王妃様を見習って色々とやっていたらしい。その結果が、先見の王子様って呼ばれるようになった、ってわけだそうだ。
「王家の書庫に保管されていたものを中心に、色々調べたのだけれど」
ここは王子様の部屋。いるのは扉近くの俺、窓の近くにベランジュのジジイ、ソファに王子様、テーブルを挟んでその向かいに南の賢者様、だ。
「魔王の復活は、聖女様に女神さまから神託という形で伝わる。その際、勇者様が誰か、というのも聖女様に伝わるそうだ」
ここで勇者様がカミーユじゃなけりゃまた面倒なことになるが、まあそん時はそん時だな。あいつがどれだけ強くなってるかは別として、討伐隊に誘えばいい。
「聖女様には、神託が下ったらご連絡いただけるようにお願いしてある。だからその連絡が来たら、私達は一路神聖王国バシュラールに向かい、聖女様に拝謁することになるね」
はいえつ。
多分あれだ。話の流れ的に会うってことでいいんだろう。貴族の言葉ってのは、難しくていけない。
王子様と南の賢者様の間にあるテーブルには、一枚の地図。世界地図、って奴だ。
王子様はその中の一か所、アベラール国がある場所を指さし、指を動かして、神聖王国まで移動させる。
「その後、ベシェールを経由して、エマールまで勇者様をお迎えに行く」
前回はどうだったか。
確か、神聖王国の聖女様に会いに行ったのは、同じだったと思う。そんで馬車に積んで、行きと同じようにアベラール国を経由して、エマールに勇者様を迎えに行ったんだったんじゃないか。多分そう。前回と、そのさらに前とか混在していて、自信はないが。
体大いつも陸路で旅をする。そういや二手に分かれたこととか、無かったな。
「魔王はここ、湖上にある島に封じられているから、船が必要だ。これはもう、発注してある」
王家の力を使ってね、と王子様は笑った。まあそうだ。船を仕立てるなんて、普通は出来ない。前は確か、聖女様から連絡を貰ってから作ったから、その間に勇者様を育てて、みたいな流れだったはずだ。仲間も集めなきゃならなかったし。北の賢者様、迎えに行く必要もあったしな。
今回南の賢者様はもういらっしゃるからいいんだけれど、北の賢者様は勇者様と一緒に会いに行かないと仲間になってくれないんだよ。しかも確かええと、勇者様が弱いと断られたこともあったはずだ。もうどれがいつの記憶やらどうでもいいから混ざってる。こういう時に困るんだよな。
「という訳でだ、バティスト」
王子様と、南の賢者様が俺を見る。俺?
「バティストには、国内のダンジョンで、間引きを行ってもらう」
「構いませんが、帰りにそこそこやってありますよ」
「うん。バティストは南の賢者様と旅に出て、ダンジョンの間引きを行ってくれた。この話は、騎士団経由で各地の貴族家に話してある」
どういう基準でダンジョンが選ばれたのかを、俺も南の賢者様も知らないから、王子様の言葉の続きを待つ。いや、最初から計算されてたのかよ。されてていいんだけどよ。
「つまり、私と、バティストと、南の賢者様が、ダンジョン巡りをしても、不自然じゃないわけだ」
「いや不自然だろ」
「不自然じゃないように根回しをしたし、これからもしばらくは間引き自体をしてもらうよ。目的は、その後だ」
「ああ、天馬か」
「はい」
南の賢者様は何かを分かったようで、王子様に話を振る。天馬?
「アベラール国内にも、天馬の出るダンジョンがあるんだよ。だから、城にも数頭いてね」
城にいるのは、背中に羽が生えたのも、足元に羽が生えてるのも、数頭、だ。多くはない。俺が連れて帰ってきたのが、大歓迎される程度しかいないのだ。
「それを、増やしてもらいたいと思う」
「なーんでバティストが頼むと付いてくるんかのー」
「なんでも何も、ミノタウロスの斧持った奴に頼まれりゃ、断りづらくないですか」
「……儂でも断りづれえわ」
「でしょ?」
要するにそういう事である。
天馬は確か、魔物ではない。なんか違う区分だった気がする。ダンジョン以外にも生息しているらしいが、俺は知らん。
この辺りには生息していないから、やっぱり山の方とか森の方なんじゃないだろうか。ダンジョン内でも、そんな場所にいた気がするし。
「まあまあ分かりました。そういう、場所の事とか、そういうのはそっちでやって貰えるんですよね?」
「勿論、バティストは当日頑張ってくれたらいい」
「それならよろしくお願いします」
ダンジョンについて調べて、王子様の移動についてまで俺にやれと言われたら断ることしかできないが、そっちは全部ジジイたちがやってくれて、俺は王子様の護衛と天馬の捕獲だけなら文句なくやる。問題はない。
しかし、俺と王子様と南の賢者様が天馬を求めて国内うろうろするのを不自然にさせないように、ダンジョンの間引きをさせるとは、恐れ入ったもんだ。よく考え着いたよな、って意味で。
それからしばらくして、俺たちは最初のダンジョンへと向かうことになった。同行者は騎士団で一緒のエメ。エメの実家のある領に、大分面倒くさいところにダンジョンがあって、冒険者からも不評だという。馬があれば最寄りの拠点からの移動も大変じゃないんだが、冒険者は馬なんか持って無いから大変、ってことらしい。マジかよ。
「ようこそおいでくださいました」
エメの案内で到着した領地の館には、エメの親父さんがいた。奥方も、跡を継ぐという兄貴も、その奥方も、館の前でお出迎えだ。王子様が来たんだから、それはそうか。
「しばらく厄介になるよ」
「我らにも有り難い事です。お気になさらず、どうぞ長逗留されてください」
エメは自室があるからそこではあるが、それ以外は俺にも一部屋与えられた。王子様がお泊りになる部屋の脇にある、小部屋とかではなく。そこはベランジュのジジイの部屋になるそうだ。俺はメインでダンジョンを攻略するから、という配慮らしい。
ちなみにエメは俺のことを実家宛の手紙に書いていたりしていたそうで、とても歓迎された。俺が奴隷であることも知っているらしい。お前は手紙に何を書いているんだ。
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