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死に戻り王子に買われた奴隷は英雄になる  作者: 稲葉 鈴


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15.王子様の所へ帰ろう-2

長め

 俺たちは村人たちに手を振って、三時間かけてオーリク村の隣町、オービニエに到着する。魔法のポーチを返したりなんだりして、まあでも一泊していく。歩きだからな。今出ても、隣町には届かない。野宿なんてしたくねえってジジイも言うし、俺だって別にしたいわけじゃない。道っ端で寝るのは別にいいんだけど、町でプロが作った飯を食う方が俺は好きだ。


「ちょいと遠回りになるが、まずはビドーだ」

「なんでだよ」

「天馬だよ。あそこには天馬がいる。ほれ、お前さんも城にいた頃乘ってたろう。あの足の所に羽のある馬」

「ああ」

「ビドーにあるダンジョンでは、あれを仲間にすることが出来てな」

「へえ」

「ちったあ遠回りだが、その方が早く帰れる」


 そういう訳でビドーに行って、ジジイだけが天馬を仲間にする方法を調べた。その状態で俺が天馬を仲間にする方法が分かるかどうかの実験だそうだ。

 結果から言うと分かった。すげえなこの魔法。

 「普通は分かっても出来ねえんだよ!」というギルドの職員とジジイのの言葉は聞かなかったふりをして、俺たちはエマールを出る。オベールを経由して、そうだ。ベケを勧めてくれた職員のいた町にも寄った。


「魔法の鍵な、道中で手に入れたから、もういいわ」


 俺は首から下げたそいつを見せる。ゴブリンの落とした粗末な鍵だったけど、今はジジイが手を入れて、ちゃんとした魔法の鍵だ。南の賢者様は違うよな。あの時いくつか手に入れた粗末な鍵は、一つを俺が貰って、もう一つを魔法使いに適性のあったベランジュールにあげた。俺もベランジュールも、この程度の魔法の鍵で十分威力を発揮する。ジジイはなんかもっとすごい魔法の鍵を持っているけれど、ベケでそれと同じくらいの魔法の鍵は手に入らないだろう、ってのがジジイの見立てだ。

 ジジイはアベラールの誰ぞやと、多分ベランジュのジジイ辺りだと思うが、やり取りをしている。宿に泊まるたびに鳥が出ていき、鳥が戻ってくる。アベラール内にもいくつかある、間引きが必要なダンジョンで間引きをしてから戻ってきて欲しいとの事だそうなので、俺とジジイはアベラールでも間引きの仕事をいくつかこなした。

 俺にとってもジジイにとっても大した仕事ではなかった。まあ、一度はジジイと二人で潜って、あとは俺が一人で何とかする、というだけの話だ。どこも、二、三日だけという約束で間引きを行った。間引きが必要なダンジョンってのは、敵が弱すぎて冒険者が寄り付かねえか、敵が強すぎて寄り付かねえかの二通りだ。だからまあ、手に入るモンも期待できない。期待出来たら、冒険者は来るからな。


「おかえり」

「おーう! 戻ったぞ!」

「戻りました」


 城の厩舎に近い裏口から、城へと入る。ジジイが連絡を飛ばしてあったのだろう、セドリック騎士団長と、王子様がお出迎えに来てくれた。なんでだよ。二人ともそれぞれの執務室で待ってろよ。

 俺とジジイの天馬を受取って、セドリック騎士団長と一緒に待ってた厩舎番は大喜びで戻っていく。俺とジジイの個人の馬とはいえ、天馬が二頭も増えたのはあいつらにとってはただただ楽しい事だろうからな。

 大体二年ぶりに見る王子様は、背が伸びていた。声変わりもしただろうか。前々からご令嬢方に人気のあった王子様は、多分さらに人気が出ただろう。そんな成長をされていた。


「報告を聞こう」


 王子様とセドリック騎士団長に迎えられた俺たちは、旅の垢を落とす間もなく、騎士団の応接室へと通される。まあな、王子様いるもんな。俺一人ならその辺だろうけどよ。ジジイは南の賢者様だしな。


「すでに鳥で報告した通りじゃい。でもまあ、口頭で聞きたくもあらあな」


 分かってるんだったら早く答えてやれよ、と、俺はソファに座るジジイの頭に向かって思う。当然俺は座っていない。セドリック団長と、ベランジュのジジイも座っていない。座っているのは、王子様と南の賢者様のみだ。


「バティストは魔法を使えるようになった。魔法使いって方じゃなくて、魔法も使える程度の戦士だな。それから、勇者様もまあまあ同程度には魔法が使えるようになった」


 マジかよ。勇者様も使えるようになってんのかよ。まあ、勇者様が使えるようになってりゃあ、楽にはなるわな。


「あとは勇者様と、それから村人が想定外に冒険者になったくれえだな」


 勇者様が冒険者になったのは、俺もジジイも誘導したけど、他の村人がなったのは想定外だったな。別にどうでもいいんだけど。

 まあ報告はそんなもんだ。あとはお姫様方にスライムロッドのお土産くらい。


「バティストはこっちだ」


 報告が終わったところで、セドリック団長に呼ばれる。


「失礼します」


 王子様方に軽く挨拶をして、俺は団長にくっついて応接室を出る。応接室に入った時に一応下ろしたでかいリュックを慌ててひっつかんで団長の後を追う。汗流してえんだけどなあって思うけど、一応おくびにも出さない。さっきまでだったら別に出してもよかったんだろうけど、今は駄目だ。俺はもう、城の騎士相当なんだから。相当、だけどな。


「修行の成果を見せて貰おうか」


 団長に連れていかれたのは練習場。俺が戻ってきたことで、皆場所を開けてくれる。エメがひょいっと、手にした剣を投げてくれた。うっわ、軽。手に馴染まねえ……戦うの? これで?


「どうした、バティスト?」

「いや、軽くて」


 不思議そうな顔の団長に、不思議そうな顔で俺も答える。

 最近使ってたの、サイクロプスの棍棒に、ミノタウロスの斧だからな。


「お前最近どんなの使ってたんだよ」

「見せてみろ見せてみろ」


 先輩方がわらわらと寄ってくる。団長との手合わせは一時延期。応接室からひっつかんで持ってきていた、流石に二年たつとボロボロなリュックサックから、ジジイに作って貰ったポーチを取り出す。リュックが良かったんだけれど、俺の立場上目立つのはよくないってことでポーチサイズだ。もうこの時点ですでにいいなの合唱である。貴族だってあんま持ってねえもんな、これ。むしろ貴族より冒険者の方が持ってる。一度手に入れたら手放せねえよな、これ。


「道中で手に入れた、粗末な棍棒だろ」

「捨てろ」

「捨てなさい、そんな焚き付けにもならない」

「いや、奴隷の俺が持ち歩くのにはちょうどよかったんですって」


 要するに見せ武器だ。ダンジョンの中に入っちまえば、ダンジョンによっては他の冒険者に会うこともないから、ミノタウロスの斧とか使えるんだけどよ。

 あと最近は使ってなかったけど、こいつ魔力付与の通りがいいんだよな。その辺を話したら、先輩のウスターシュさんが粗末な棍棒を手に取った。手をかざして、呪文を唱える。そういや俺は、呪文を唱えない。唱えんでもできる、という師匠の教えに従ったまでだ。


「どうせお前は覚えられねえわ」


 って方が多分、正解なんだけどな。


「本当だ、通るな。まあ通ったところで、俺たちには使いもんにならないが」

「魔力付与が通ると、壊れにくくはなりましたね」


 なっただけだけどな。

 そしてその粗末な棍棒は、城に戻ってきてしまった以上、いるもんではない。城だと、焚き付けにならねえんだよなあ。


「あと使ってたのは、サイクロプスの棍棒各種と」

「各種?」

「属性付与されたのが手に入りまして」


 どさりと、棍棒を地面に置く。属性が付与されていないのと、付与されている奴各一本。どれどれと、皆手に取って見ている。


「うっわ、おっも。お前こんなの使ってたのか」

「そりゃこの剣軽く感じるわな」

「いやそっちじゃなくて」


 サイクロプスの棍棒を使っていたのは、サイクロプスダンジョンの前半だけだ。ミノタウロスは四階にいたから、割とすぐに乗り換えられた。サイクロプスの棍棒な、属性付きのヤツはそこそこの値段で売れた。

 ミノタウロスの斧を、何本か取り出す。現状、こっちが俺のメイン武器なので、先輩方におもちゃにされたら困るから、全部は出さない。まあ全部を出せとは言われないと思うんだけどな。


「こっち使ってましたね。終わりの方」


 ダンジョンに入ってからじゃないと使えない、って難点はあるけど、まあ、ダンジョンに入ってから使やいいわけだ。いやあの村人たちは俺がこっちの斧振ってたの知ってるから、いいんだけどな。

 団長がそっと頭を抱えた。しらん。

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