15.王子様の所へ帰ろう-1
勇者様が、成人をした。それから、デオダとベネディクトもだ。その三人と、それからデオダの姉のベランジュール、カミーユ達よりは年上のエドガールの五人が、冒険者になることにしたらしい。
丁度、俺も借りてる魔法のポーチ一杯にアイテムが集まったから、一緒に町に行くことにした。まあ、ベランジュールとエドガールの二人は、これまでに冒険者になることは出来たんだ。成人してるからな。けれど他の三人と足並みを合わせることにしたらしい。
これまで村人たちがダンジョンで集めた分は、俺が換金して村長に渡していた。それで村の借金をコツコツ返していた、ってわけだ。この度その返済が全部終わったもんだから、村人たちも自分のために冒険者になることを決意したらしい。
南の賢者様から魔法を教われる機会なんて、魔法使いは皆喉から手が出るほどうらやましがるだろうから、絶対に言うなよと念を何度も押す。特にお前だデオダ。
受付カウンターに行って、冒険者になる連中を預けて、俺はその奥の買取カウンターへ行く。まだサイクロプスダンジョンに潜るのは終わっていないから、魔法のポーチの返却手続きとかはしない。
「助かってますよ」
「なにがだ」
しみじみと、買取担当の職員が言う。査定の手は止めない。
「サイクロプスダンジョンて、変なサイクロプス多いじゃないですか」
「ああうん、一つ目の巨人は二体しか出ねえな」
ヒト型、という緩い縛りにするなら四体出るが、俺の思い描くサイクロプス、一つ目の巨人は最初の一体だけだ。二体目の頭が二つあるやつも、なんか違うんだよな。
「あそこにしかいないのもいるんです。で、そういうのに限って求めている人が多くて」
「レアって奴だな」
「バティストさんのおかげで何とか流通に乗せられて、さらに村の人たちに色々教えてくれてるもんだから」
「依頼出してねえのか?」
「出てても微妙なんですよねえ」
まあ分からなくはないから、お疲れ、とだけ労っておいた。
俺たちがいつまでもあのダンジョンにいないだろうことは、ギルドの職員なら知っていることだ。思いの外長逗留しているが、それは勇者様育成計画の為だ。正直、カミーユが仲間たちとサイクロプスダンジョンに潜れるようになれば、女神さまから勇者様の力を貰えれば、魔王退治だって何とかなるんじゃねえかなって思ってる。合流してからだって、何とかなるだろ。
とりあえず持ってきたものを売って、ジジイからの指示で依頼していたもんを受取って、金をさっきの売り上げから払って。また必要なもんを依頼に出して。
「なんに使うんですか、これ」
「知らん。暇つぶしに何か研究するっつってたのしか知らん」
「あなた弟子でしょ」
「魔法使いの弟子じゃねえからなあ」
そもそも俺は覚えられるものはもう覚えた。ダンジョンで飲み水を作るのも風呂を沸かすために薪に火をつけるのも洗った服を乾かすために風を吹かせるのも。それから敵の情報を見るのも。魔法の鍵は便利でいいな。
ちなみにジジイが今作ろうとしているのは魔法のバッグだ。あの沢山入るやつ。ポーチじゃなくてバッグだってよ。前にも作ったことがあるから作れるけれど、その素材を一回で集めたら不審だから、と、何回にも分けて集めさせている。俺の分と、王子様の分と、勇者様の分。とりあえず王子様の分だけ作って、俺の分の素材と、勇者様の分の素材をそこに詰めて、あとは城に戻ってからでもいいとか言ってたな。
「でなんでお前は一人で回れるようになっちまうんだ」
「ジジイがやれって言ったんだろうが」
サイクロプスダンジョンを、俺は一人で踏破した。ジジイに、敵の情報を見る魔法について、教わってからは早かった。まず、こう、魔法の鍵をひねるだろ。そうすると、分かるんだよ。顔に一個だけある眼球が弱点なんだけど、そこは残しておきてえから、他の場所。そうすると、どこを攻撃すればいいのか教えてくれる。あと、取っといた方がいい素材なんかも、この魔法は教えてくれる。俺の知識じゃなくて、ジジイの知識だ。ジジイはこのダンジョンにすでに入っていて、あいつらを見ているから、俺にもそれが分かるようになる魔法、ってことらしい。
ヤバくねえか、この魔法。
ちなみにジジイが言うにはそんなことはないらしい。ねえよ普通はそんなことねえよ、お前の知識量に比例すんだよ。とか言っていたが、俺が知らないことを教えてくれるってことは、そういう事じゃねえのか。
「奴隷紋が関係してるのはあるかもな」
「ねえよ!」
左手の甲にジジイによって描かれたこの奴隷紋は、俺が現在ジジイの所有奴隷であることを表すものだ。だから関係してるのかと思ったけれど、そういうことはないらしい。へえ。
「じゃああれか。俺が聞き流してて覚えてねえだけで、ジジイがなんか言ったのを実は覚えてたとかいうそういうあれか」
「だといいよな、儂の心の平穏のためにもよ」
それからしばらく、ジジイは呪文の研究のためにくっついてきた。別にいいんだけどよ。
俺たちがそんなことをやってる間に、村人たちは順調に力を付けていた。いい事だ。冒険者の数も増えた。町まで三時間かかる、って問題はあるけれど、大人の足なら、まあ、町に何かの用事があったついでに登録してくりゃいい、みたいになったらしい。登録しておいて損はないしな。
実際カミーユたちは、俺みたいに底まで行く必要はない。今回俺が相当数間引いたので、今後は週に一度くらい一階か行けて二階までのサイクロプスを間引けばいい、はずだ。その辺りについては、町のギルドが知ってるはずだから、とジジイが村長に教えていた。
「行っちゃうのか」
「おう。終わったからな」
サイクロプスダンジョンも踏破したし、勇者様の村の財政難も救えた。なんかちょっと最初と予定は違う気もしなくはねえが、まあ問題はないだろう。勇者様も今必要な分は鍛えられたし、今後もサイクロプスダンジョンに挑むだろうし、他のダンジョンに行ってみてもいいんじゃないか、とは勧めておいた。
「また、会えるかな」
「おう。次は魔王討伐隊で会おうぜ」
俺は参加する。お前も参加すればいい。
それだけのことだ。
お別れのシーンなのでしんみりしてる人としてない人。




