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3.バティストは思い出した-1

本日投稿三話目です。

一話辺り大体二千五百文字にしていきたいとおもっています。

毎回そうではない。目標の話。


「あんた、あんときの王子様か」

「態度を検めんか!!」


 もう一度、王子様付きのジジイにぶん殴られる。けど別に、痛くはない。いや痛いけど、別に、普通。いつも誰かに殴られていたから、それは別にいい。もう慣れたし、まあ奴隷なんてそんなもんだ。


「覚えているの?」

「思い、出した?」


 で、いいのだろうか。多分そうだ。魔王って言葉で、思い出した、の、だと思う。

 ジジイに殴られはしたけれど、ジジイだって別に俺を殴り殺すために殴った訳じゃないから、俺の後ろに立ったままだ。追撃してこねえだけで、ありがたいもんだ。俺は椅子に腰かける王子様から距離がある場所に立っていて、互いに声は届くけれど手足を届かせるのは難しい。

 いや正しくは立っていた、だ。この部屋に入ってきた時俺は立っていたけれど、ジジイに殴られるとかそんなことは関係なく、今の俺の体は弱り切っていて、すぐにぐらりとよろめいた。ジジイに支えられて、そん時は何とかなったけれど、今は結局床に座り込んでいる。

 すげえよな、王子様の部屋の床。ふっかふかのカーペットが敷かれているんだぜ。最高級の絨毯、と、後日ジジイに検められた。さいこうきゅうのじゅうたん。

 それはそれとして、あの王子様に、俺は危害を加える気はない。良くしてくれた記憶があるし。


「ベランジュ、やめてくれ。いいんだ」

「いいえ、良くありません」


 俺はどっちかって言うと、ジジイ寄りの考えなので黙ってる。そりゃ殴るよなって思ってる。けどなんだ。王子の側にいるジジイがそんなに手が早くていいのか、とも思って見ている。


「バティストは、別に」

「いいえ良くはないのです」

「俺もそう思う」


 俺の行動に対して良い、良くない、のやり取りがしばらく続いたので、俺は俺の意見を言った。俺が言わねば、続くだろう。

 おや、と言った顔で、二人が俺を見た。


「王子様は別に、俺に子を産めという訳じゃ」

「言葉を慎め!」


 またジジイに殴られた。いや、そもそも俺は男で子を産めないのは分かってる。出来れば最後まで聞いてくれ。


「えー……と。俺を人前に、出すんだろう?」


 殴られなかったので、言いたいことは伝わったようだ。


「そうだね。騎士団に稽古をつけて貰おうと思っている」

「それだって、人前、だろ?」


 ジジイの顔色を伺ったら、頷いていた。俺とジジイの言いたいことは、要するにそういう事なんだよ。


「だが、いきなり手を上げるというのは」

「犬猫の躾と同じです。その証拠に、バティストは私の顔を見ました。己の言葉が合っているのかどうか、私に確認を取ったのです」


 後はそっちで決めて貰った方がいいだろうから、俺は口をつぐんだ。記憶の中の俺は、今の俺よりいろんな言葉を知っていたけれど、今の俺はそうでもない。あのくそどもが俺を口汚くののしってた言葉と、俺の側で話してた言葉しか知らないからだ。記憶の中の俺はもっと大人で、もっといろんなことを知ってたから、いやもう一回やりてえかと言われたら腕をなくしたくもねえし目もなくしたくねぇよ。


「分かった。じゃあ私が家庭教師に習っている間は、バティストも学んで貰おう」

「結構でございます」


 結局王子様が折れる形になって、俺の事が決まったらしい。

 実際俺の立場、というものは、なんになるんだろうか。まあ、王子様付きの護衛、辺りが落としどころだろう。奴隷でいいのか、という気もするんだが、その辺を考えるのは俺じゃなくて、王子様とジジイだろう。ジジイが許可を出したのなら、いいんだろうし。


「それじゃあ、バティスト」

「おう」

「返事ははい、だ」

「……はい」


 ジジイに殴られたので、言い直す。改めろと言われても改められないので、こうやってどう改めればいいのか言って貰えるのは助かる。今後もそれでお願いしたい。


「思い出してくれたようなので、簡単におさらいしよう。まず、魔王の復活が近い」

「どれくらい……」

「ですか」

「ですか」


 なんて言っていいのか分からないから黙ると、ジジイが訂正してくれる。

 おそらく、あれだ。くそどもが俺に向かって言い放っていた言葉じゃなくて、あのくそが他の小奇麗な恰好した連中に向かって言っていたのを思い出してみればいいんだ。よく覚えてねえけど。覚えてねえけど多分違うな、ってところで黙ると、ジジイが教えてくれる。


「今僕が九歳だ。だから多分、十年以内には」

「待ってくれ」

「お待ちください、だ」


 ジジイにまた殴られた。殴り続けたら、ジジイの手が痛くなりゃしねえかと思って見てみたら、手に何かを持っている。ならいいや。俺自体は、そんなに痛くはない。ダメージを与えて俺を壊したいわけじゃなくて、それによって俺に行動を変えさせるのが目的だからだ。


「ええ、と。お待ち下さい?」

「そうだ。続けろ」


 言い直したせいで、なんて言おうとしたのか、ちょっと忘れた。

 ええと、なんだっけな。ああそうだ。


「ジジイいるのに話していいのか?」


 殴られなかった。

 いやそんなはずないだろうと思ってジジイの方を振り返ると、頭に手を当てている。あ、どこから教えるか悩んでんな。ごめん。

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