12.ダンジョンで修業をしよう-1
まあ要するに、俺はジジイに金で買われた奴隷、ということになる。借金奴隷は借金を返し終われば放免になるが、期間奴隷は特定の期間を売り渡した奴隷である。どういう奴がそうなるのかは知らない。犯罪奴隷でないのは知っている。
オベールの国に入るのは、大変ではなかった。南の賢者様のジジイが、俺の分とまとめて冒険者証を見せて、国境を通り抜ける。冒険者っていうのは、そういうもんだと道中南の賢者様のジジイが教えてくれた。長くて言いにくいな、南の賢者様のジジイ。ご本人様のご要望に応えてジジイだけでいいか。
「流れ者なんだよ、冒険者ってぇのはな。どこか一か所に留まることが出来る奴もいれば、留まれない奴もいる」
「ふぅん」
「流れてえのに流れられなくて、留まる場所を定めて流れる奴、なんてえのもいるな」
よく分からん連中だ。それでもまあ、ジジイが楽しそうだからよい、ということにした。
オベール国では二つのダンジョンに入った。オベール国に入ってすぐの所にある町で、ジジイが確認したのだ。一つは、良い棍棒が手に入りそうだったから。現在ストックにあるのは、棍棒が一本と勇者様に渡す予定の両手剣が一本のみだ。出来ればもう少し増やしておきたい。勇者様に選択肢を与えたいし、俺は斧の類が欲しい。
一つ目のダンジョンでは斧は手に入らなかったが、棍棒は手に入った。相手によってジジイが俺の棍棒に付与する術を変えたけれど、その術を少しずつ教わることになった。勇者様を仲間にする頃には、全ての属性を扱えるようになっているようにと宿題を出された。無茶言いやがる。俺、自分の体を強化する以外の魔法使うの初めてなんだぞ。
もう一つのダンジョンは、ジジイが持っているポーチみたいなものが手に入りそうなダンジョンだった。手に入らなかったが、もう一本両手剣を手に入れた。今使っている棍棒が折れたら、こっちの両手剣を使うことにした。普段はジジイのポーチに入れて貰って、ダンジョンに入ったら俺が受け取って使う。棍棒は一本、見せておくためだけに必要だった。
「使ってる風に、見せた方がいいんじゃねえか? 新しい奴じゃなくて」
「ああそうか。じゃあこっちを残して、新しい方を使うか」
冒険者は次々新しい武器に持ち替える、ともいうそうだ。俺が使える武器には制限があるから、少なくとも他の冒険者がいる前では制限があるから、それらしいふりをしなければいけない。
それに金属製の武器よりは木製の棍棒の方が付与魔法の通りがいい。特に俺には師匠がおらず、魔法の鍵を持たないからなおさらだ。ジジイには大差ないらしいけど、そりゃあんたは南の賢者様だからな。俺の話をしてるんだよ。いやなんであんたは俺の師匠にならねえんだよ、やれって言うならちゃんと教えろよ。まったく。
「どこかで魔法の鍵も入手しねえとな」
魔法の鍵も、ダンジョンで落ちるらしい。マジかよダンジョン、何でも手にはいるな。
オベールからエマールへ向かう道中のとある町の冒険者のギルドで、ジジイがダンジョンについて調べる。分厚い台帳に、この辺りのダンジョンがまとめられているんだそうだ。文字がいっぱい書いてあって、俺は見ているだけで頭が痛くなる。ジジイはそんなに苦も無くぺらぺらとめくる。賢者すげえな。
「エマールへの道中は、ねえな」
「ねえか」
「エマールに入ってからはあるから、そこに寄ってだな」
「ベケのダンジョンにありますよ」
「ベケ……ベケ……ああ、ブザール寄りか。いや、エマールに向かっていてな。ダンジョンに潜るのがメインじゃねえんだわ」
声をかけてきた冒険者のギルドの職員にジジイがそう答える。用があってエマールを目指していて、その道中で、道楽でダンジョンに寄っているだけだと。
「見たところ、それなりの魔法の腕をお持ちのようです。でしたら、ベケでちゃんとしたものを入手された方が」
「ああ、儂のじゃない。儂のはある。不肖の弟子どものよ」
それは俺か。俺と王子様と勇者様の事か。妹姫様方は違う気がするな。
アベラールのダンジョンで入手した手袋をはめているから、俺の奴隷紋は目視出来ない。俺の冒険者証を確認すれば理解されるが、それを確認しなければ、分からない話だ。まあ、ジジイが俺を弟子として買い取った、って話になってるんだろうな、とは思ってるが。だったらちゃんと俺にも教えてくんねえかね。そんなこうやってこう、みてえなのじゃなくてだな。
「なら帰りでいいんじゃねえか。急ぎの仕事じゃねえけど、エマールへはまっすぐ行かなきゃならねえ。エマールからの帰りなら、まあ、ちょっとくらい寄り道したって、いいんじゃねえの?」
「そうすっかね。ありがとうよ、お若いの」
なんでか知らんがベケに行くのをとても勧められた。だぁからエマールに行きてえからブザール寄りにはいかねえんだよ、と、ジジイがけんか腰になってきていたから助け船を出す。不肖の弟子だからな。それくらいはするだろ。
「魔法の鍵について、教えてやろうな」
次の目的地を決めて、歩き出す。ダンジョンで靴が入手できるのはありがたい。魔法の靴だと歩くスピードも上がるらしいが、二足なけりゃ困る。いや、ジジイにくっついて俺が走るのは別にいいのか。まあ、魔法の靴じゃなくても、新しい靴はありがたいんだ。
「昨今は道具にもあの鍵はくっついてるからな。お前さんだって、使ったことあるだろ?」
「ねえよ。奴隷だぞ?」
「マジか、徹底してんな」
「示しがつかねえだろう。俺はまだ魔王も倒してないのに、優遇されすぎてる。だから魔法の鍵も使わせないし、刃のある武器も使わせねえんだよ」
そうは言っても、騎士団の風呂に魔法の鍵はいらない。大浴槽が温くなったら、魔法使いが火の球の魔法をぶち込むし、従騎士が練習で使う武器はどれもこれも危なくねえように刃は潰されている。
それに、刃が潰されていても、重量がある斧とか使えば、敵の頭は潰せる。いける。いけた。俺はやれた。
「まあ、大事なところか。
ああ、ええと、な。使ってるのは見たことあるだろう」
「便利だよな、あれ。俺も奴隷じゃなかったら、使えんのか?」
「おう、使える使える」
ちらり、と、ジジイは周囲を見渡した。人はいない。今街道を歩いているのは、俺とジジイだけだ。前方と後方にはいるけれど、声の大きさに気を付ければ、聞こえねえだろう。
ダンジョンはロマン




