11.冒険者になろう-2
フォロー評価いいねありがとうございます。
たまに見るとちまちま増えてるので、まあ面白くないことはないんだろうと自分に言い聞かせています。
私は面白いんだけどなあ!
正直、奴隷も冒険者としての身分を得られるなんて、ありがてえと思うよ。俺には恩恵ないかもしれねえけど、この恩恵にあずかれる奴は相当いるだろう。そういうやつからしたら、とてもいいことだろう。
「バティスト」
「はい」
「忘れてるみてえだが、魔王倒したらお前さんにも恩恵あるからな?」
「あ、そうか」
魔王を倒したら、俺にも恩赦が下されて、奴隷から人になれる。人になったら、その、冒険者って奴にもなれるんだ。市民とか国民とか、そういう区分ですらないからな、奴隷。まずは人にならねえと、そういうモノすら貰えない。
「ご理解いただけたようで何よりです。こちらにご記入お願いします」
出された用紙に、面倒くせえとかぶつぶつ言いながら、南の賢者様はご記入くださった。俺はほら、奴隷だから。文字の読み書きなんてできてもしちゃいけねえ身分なので。身分ですらねえよな?
それからまあ、奴隷は刃のある武器を使っちゃいけねえの何のと、分かっている話を神妙な顔で聞いた。俺の冒険者登録証は、南の賢者様が管理をするそうだ。それだとやっぱり、いくらでもどうにかできそうだなと思うが、まあ、その一歩が大事なんだろう。つか、南の賢者様が、ってなったら、まあまあみんなそれに続いてくれるんじゃないかね? 多分、この人もそれを狙ってるんだろうっていうのは分かる。
「ッあー、肩凝ったな」
「お疲れさまでした」
冒険者証というのはそれすなわち身分証明証にもなるので、南の賢者様のポーチの中だ。冒険者のギルドの人に色々聞いて市場で買い物をして、城下町を出る。今日中に城下町を出て、少なくとも隣町まで行っておきたいところだ。ボードレールからこっちに来た時の南の賢者様だったら、なんやかんやぐだぐだ言って、今日は城下町に泊まったかもしれない。
「まずはオベールに向かう。それからエマールだ。アベラールでいくつかダンジョンに潜ってお前さんの使えそうな、そんで、儂が魔力付与できそうな武器を集められりゃあ御の字だ」
「防具は」
「そんなもん、出たらいいな、だ」
「あいよ」
ダンジョンというのは、街道沿いにはない。アベラールの城下町から、まずは隣国オベールへ向かう道中にあるダンジョンを冒険者のギルドを出る前に調べた。南の賢者様が。その内、それほど日数のかからなそうなもの、それから二人で走破出来そうなものを南の賢者様が選んで、そこへと向かうことになった。
走破出来なきゃ意味がないし、無駄に時間がかかるのも困りものだ。かといってどこにも寄らずに勇者様の所に行くわけにもいかない。大きな街には冒険者のギルドがあるから、そこで近隣のダンジョンについて調べ、向かうかどうかを決める。
アベラールの国を出るまでに三つのダンジョンに寄った。持って出た棍棒は折れたが、代わりにもっと良い棍棒を一本と、両手剣を一本手に入れた。棍棒は俺が貰い、両手剣は南の賢者様のポーチに入れた。勇者様が使えるようであればそれに渡せばよい。どちらも魔法の品ではないから、売り飛ばさなかった。それから良い靴と良い手袋とを手に入れた。これらも魔法の品ではないから、俺が使うことにした。特に靴はありがたい。
「まあまあだな。通常はな、バティスト。一つのダンジョンで、欲しいものが出るまで潜るもんだ」
「それは、それを仕事にしている者たちの事だろう」
「まあな。儂らは、エマールで似たような事をすることになる。それは覚えておけ」
「そうだろうな」
オベールではもう少し、武器を集めたいと南の賢者様に伝えた。いや石でもいいんだが、棍棒は折れる。数本確保しておきたい。
「ああ、オベールについたら、ダンジョンの中でなら刃のある武器を使っていいんじゃねえか」
「いいのか? 駄目だろう」
「お前それを儂に向けんのか?」
「向けたところで、死ぬのは俺だ」
確かに南の賢者様は、北の賢者様に比べると攻撃魔法の名手ではない。北の賢者様に比べると、だ。そこいらの魔法使いと比べたことはないから分からんが、それだって俺よりは強いだろう。そういうことだ。だから、俺が刃のある武器を持って問題がない。そういうことらしい。いいのかそれで。
「まあなまくらの斧でも、人は殺せるが」
「ええ……」
「殺せたぞ。初回か、その次だったかは忘れたが」
「ああいや、そうだった……小僧はそうだったな……おお。そうだそうだ。オベールについたらな」
「ああ」
「儂の事はジジイと呼べ。儂もお前の事は小僧と呼ぶ。良いな?」
「南の賢者様と呼ぶなということだな。分かった」
ボードレールでは仕方がないし、アベラール内にいる間は監視もついているだろう。けれどオベールに入ったらその限りではない。だから、もうちょっと、軽い関係になりたいのだろう。
その証拠に俺の左手の甲に描かれている奴隷紋は、奴隷の子である終生奴隷紋ではない。インクで描かれたそれは、借金奴隷ではないが、期間奴隷のものだ。羨ましく、俺が見つめていたものだ。いや今じゃない。一個前でもない。もっと前だ。俺が死ぬまで戦うしかなかった頃の。




