11.冒険者になろう-1
昨日はすみませんでした。
本日から再開です。
俺は前回の人生と今回の人生で、お城の中の王子様が知らないような裏道とかそれから騎士団の練習場周りで人目につかない道には詳しくなったが、城下町に出たことはほとんどない。あるとしても城下町で何かある時の警備くらいなもんだから、先輩の後ろをついて行けば目的地にたどり着けた。だからその目的地がどこかとかすらわからない。城に来ていただいた南の賢者様もご同様で、城下町の道案内にはジジイの部下の方がついてくれた。
見送りは特に要らない、と伝えたけれど、王子様とベランジュのジジイ、それからなんでか知らんが、妹姫様方の乳母の、オーギュスティーヌがきていた。俺、あんまりあの人と話したことねえんだけどなって思っていたら、南の賢者様は妹姫様方にも魔法を教えていたらしい。何やってんだ。暇だったのか。そうか。
「あのお二方はな、強くなるぞ。まあ、魔王討伐にはちぃと年が足りんがな」
「参加させる予定はありません」
王子様がきっつい声で南の賢者様に言う。まあ、あぶねえからな。二人がやいのやいのと言ってる間に、オーギュスティーヌが俺と南の賢者様に姫様方の伝言を持ってきた。というか、耐えきれなくなったんだろ。口にした。
「お土産をお願いしますね」
「遊びに行くんじゃねえんじゃけどな」
「まあ最悪帰りに城下町でお菓子でも買ってきましょうや」
「そうすっかね」
城の裏門から出て、大通りに出て、そこを真っすぐ行くと噴水広場があって、そこに冒険者のギルドがあった。これくらいの道なら俺たちだけでも辿り着いたかもしれねえけど、そもそも裏門から大通りに出ることが難しかったかもしれねえ。
「じゃあ、私はここで」
軽く手を振って、ここまで案内してくれた男は人ごみにまぎれていった。
「おう、ありがとうな」
ひらひらと南の賢者様は手を振り返して、ちらりと俺を一瞥すると、その建物に入っていく。棍棒はリュックからいつでも取り出せるようにはしてあるけれど、今のところ取り出す必要はあるまいと、俺は南の賢者様の後について建物に入った。でかくていかつい建物には、でかくていかつい人たちが多くいた。
「ちょいとお尋ねしてえんだがよ」
建物には、開きっぱなしの両開きの扉があって、建物の前から見ると横にでかいように見えたけれど、奥行きも凄くあった。手前半分ほどのところには椅子やテーブルがあって、奥の部分にカウンターがある。二階へ上がる階段は、カウンターの向こう側だ。
めちゃくちゃ視線を感じるけれど、それをものともせずに南の賢者様はカウンターへと向かった。
「いかがされましたか」
「これまだ使えるか?」
カウンターのこっち側にいる連中と比べるとほそっこい姉ちゃんが南の賢者様の相手をする。俺は南の賢者様の斜め後ろに立って、南の賢者様が姉ちゃんに何か雫型の石が付いたペンダントを見せているのに視線をやった後は、こっちを見てる連中へと視線を向けた。
奴隷が主の持ち物に興味を示すのは、よろしくない態度だ。正直金目の物かどうか分からないけれど、なんだろうあれ、くらいの視線であっても、嫌がる持ち主はそれなりにいる。そうしたら殴られて殺される可能性すらあるわけだ。
南の賢者様は俺にそんなことはしないだろうけれど、南の賢者様にそうチクるやつが出てきたら面倒くさいので、俺は主の持ち物には興味なさそうに、けれど外の世界が珍しそうなふりをして建物の中を見まわす。実際めちゃくちゃ珍しいからな。初めて来るし。
「これは……」
「おうどうした」
南の賢者様を受付の姉ちゃんが困惑しながら対応してるところに、いきなり重低音が割って入ってくる。そちらに視線を戻すと、なんだなんだとこっちを興味深げに見ている連中と同じくらいの筋肉量のおっさんが、どすどすとカウンターの向こう側からこっちへ歩いてくる様子だった。カウンターの姉ちゃんは困惑している。
「ああ、奥へお通しして」
南の賢者様が持っているものに視線をやった大男は、軽くそういった。そうして、俺を見る。
「お連れ様で?」
「おう、儂の奴隷でな」
俺は左手の甲に書かれた奴隷紋を、おっさんに見せた。おっさんは南の賢者様を胡散臭そうに見て。なんだ知り合いか? それなら納得できる態度だ。
「まあいい。お前もこっちだ」
「はい」
俺は特に敵対する理由もないので、従順に答えてカウンターの向こうにある奥の部屋へと入る。
奥の部屋は殺風景で、大きなローテーブルに、大きなソファが二脚あるきりだ。ローテーブルを挟んで、大男と南の賢者様が座る。俺は、南の賢者様の後ろに立つ。ドアが近い。
「簡単にでいいんで、順を追って説明願えますか、南の賢者様」
やっぱり、南の賢者様をご存じの御仁だったわけか。話早そうでいいな。
「魔王の復活の時が迫っておるのは、なんとなくわかるな?」
「活性化は感じますね」
「そのため、この小僧を育てたい。しかし小僧は王子様の奴隷での」
「ああ、問題ありません。昨今問題が色々ありまして、奴隷でも冒険者登録が出来るようになりました」
「お、まじか」
「奴隷を肉盾として使い潰したり」
正しい使い方だと思うが。
「奴隷に資産を分配しなかったりということが増えました」
いや奴隷なんだし、そんなもんでは?
「一部の使い潰すことを前提とされた奴隷以外でも、です。彼等には、刑期を終えた後の生活がある。それに、資産の分配がなければ彼らは借金の返済が終わらない」
「どう思う?」
「そんなもんだろ?」
南の賢者様が振り返って、俺に聞く。奴隷になっちまった以上、主は選べねえんだ、しょうがない。運が悪いと嘆く前に、奴隷に落ちることになった己を不手際を嘆くしかねえのよ。
「と、生まれつきの奴隷は言っとるが」
「それを自分たちがはいそうですか、と受入れる訳には、いかんのですよ」
ご立派だと思うので、頑張って頂きたいところだ。俺はそれに思うところもない。ありがたいとは思うかもしれない。すごいとも思うかもしれない。
けれど、俺にとって、奴隷の主っていうのは、俺たちをすりつぶすことに、心が痛まない連中だってことだ。痛む連中なら、そんな制度なくても、優しくしてくれるからな。王子様や、南の賢者様みたいに。
「ありがとうございます」
けれどまあ、王子様や南の賢者様みたいな人が少数なのは分かる。ありがてえよな。そして目の前のこの人も、王子様や南の賢者様と同じタイプの人なんだろうなってのもわかるわけだ。
だから俺は、奴隷を代表して頭を下げる。この人にどれだけお礼を言いたくても、言えずにすりつぶされていった奴が、きっとたくさんいたからな。
ちなみに俺は前の人生で一度たりとも冒険者になったことがないので、この制度が他の時もあったのかは知らない。
13日の夜に作業をしています関係上、13日の夜遅くの更新よりは14日の朝の更新の方がましかなと感じて朝の更新です。
夜は駄目だ。
全然読まれている感覚がなくて私が病む。




