9.騎士様相当になろう-1
南の賢者様を迎えに行って、一年。王子様は十三歳になられた。それから俺も、成人した。って事になった。奴隷の俺は、年齢が分かんねえから、多分これくらいってことで、そうなる。そうなった? そういうことにされた?
成人するまでは従騎士つって、騎士団の人達の訓練生みたいな扱いだった。訓練に参加できるけど、その一段下、みたいな。実際はもっと下なんだけどな。
成人すると、騎士団の受験資格を入手できる。俺とそんなに歳の変わらない従騎士連中が、俺に騎士になるのかと聞いてくるけどよ。いやお前ら知ってるだろうがよ。
「奴隷は騎士には成れねえんだよ」
「あ、そうか」
「いやでも、殿下にお願いすれば」
「理由がなけりゃ、奴隷は解放できねえの」
裏を返せば、理由があれば開放できる。魔王を討伐したとか。
まあまあここにいるのは全員がお貴族様だ。次男や三男が多いけど、それでも本人たちはまだ貴族だ。当主じゃねえし当主にもなれねえけど、どのみち騎士になってしばらく経つまでは結婚も出来ねえから、問題ねえらしい。よく分からんが、そう言ってたってことは、そうなんだろう。
「それなんだがなあ」
最近赤ちゃんが言葉をしゃべり始めたというセドリック団長が、頭をかいている。なんだろう。
「王妃様から、許可が出たんだよな」
「なんでですか」
前回は出なかった。出てなかったぞ。
「多分なんだが、騎士相当の扱いにする、ってことじゃないかと皆で話し合った結果そうなった。お前を、殿下の側に置いておくための措置だな」
「それならわかります」
現実的には奴隷なので、騎士爵位は与えられない。与えてやる必要もないが騎士試験を受けさせることは、内部なので可能だ。団長と、それから幹部連中がいいぜっていやあ、それが通る世界だ。王妃様がくちばしを突っ込んでいらしたんなら、通す方向で調整されるだろう。だって王妃様だぜ? よほどの事がなけりゃ、断りづれえだろうよ。俺が試験に受かったら、騎士相当の実力があるのは確定するので、問題なく王子様の側において置けるってことなんだろう。
俺のためじゃなくて、王子様の為だ。王子様は、王妃様の三番目のご子息なんだから。そう言われりゃ、誰だって納得だ。王家の皆さんは王子様のやり直しのことを知っていて、それも南の賢者様がなんかいい感じにさらに説明したらしいから、俺のことまでご存じだ。その上で、ってことなんだろう。
「騎士になると、どうなるんすか」
そもそも騎士になるとかどうとかがよく分かんねぇんだよな。だって俺には関係のねえ世界だと思ってたから。気にも留めてこなかった。
「まずは騎士爵、というものが与えられる。一代限りではあるが、貴族みたいなもんだな」
実際はちょっと違うけれど、俺にとっては大差ないからそれでいいと、従騎士仲間たちが補足してくれる。
俺とは同じ釜の飯を食って、それから一緒に鍛錬を積んで、つれえだの足がいてえだの泣き言を言ってたから、俺に対して気安いところがある。その上で、俺の知らないことを教えてくれるからとても助かっている。
奴隷に物事を教えることを、嫌がるやつの方が多いのにな。
「これがあると、貴族や王族に仕えることが出来る。身分の保証だからな」
「あー、なるほど。ただのチンピラじゃねえんですよってことにもなるんすね」
「そうだ」
騎士ってのは武器を扱うから、身分の保証は必要かもわからん。まあちゃんとした騎士だって、ご主人様殺したりとかしてるらしいけどよ。そういうお話があるって、王子様が言ってた。
奴隷剣士なんて、その最前線だ。いつでも主を殺せるだけの力を持ってるから、心か体を折らなきゃならねえ。いい主のところだと、そういうのじゃなくて、飯とかで還元してくれるところもあるらしいけれど、伝説だよなって思ってる。俺見たことねえもん。今のところがそうって言われると、そうかもしんねえな。
「あとは給料が出る」
「え、お前ら貰ってねえの?」
俺は飯と寝床が貰えているから、文句なんてもんはない。大分待遇がいいので、王子様のためにめちゃくちゃ頑張っている所だ。魔王を倒すって方向に。
「貰わないよ。僕たちは貴族家の子供だから、そっちからお小遣い貰えるけどね」
「なんに使うんだよ」
「新しい武器を買ったりとか」
「国から支給されんじゃねえか」
「いや、自前だよ。騎士になると自前」
「マジか」
「ああ、バティストの場合は、騎士相当、だから、給料が出ない代わりにそれらも王子様が誂えることになるだろう」
「馬とかもそう」
「アベルとか借りれなくなんのか」
「アベルとかを借りる必要が出た時は、借りれると思うけど。普通の馬の話」
俺にはこの国の、貴族とか騎士とか、そういった常識がないから、教えてもらう。奴隷にそんなもん求めんな。
まあ気のいい連中だし、教えること、について苦がないみてえだから、いつも教えて貰えるんだけど。ありがたいよな。




