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死に戻り王子に買われた奴隷は英雄になる  作者: 稲葉 鈴


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7.南の賢者と北の賢者-1

ちょっと長め

 あれからたまに、陛下が王子様の部屋を訪れるようになった。

 第一王子殿下とは執務で会うから、陛下だけが休憩の時に会うのは気が引けるのだそうだ。そりゃそうだよな。てめえは仕事してるのに親父がてめえの部屋で休憩と称して茶でも飲んでたら、イラっとするのは分かるわ。

 第二王子殿下は今が一番学びで忙しい時期だという。だからいつも忙しくしていてなかなか会えないし、アポイントを取らないと城にいないこともあるという。何をされているんだろうな。良く知らねえんだよな。

 王妃様もお仕事で忙しいから、急にぽかっと空いた時間をつぶす付き合いはあまりしてくれないという。あっちのお茶会に行ったりこっちにお茶会に行ったり、城でお茶会を主催したり。遊んでると思ってたけれど、あれはあれで仕事なのだとジジイが言っていた。

 下のお姫様方の所にこれまでは行っていたのだけれど、王妃様から多いと言われてしまって、で、王子様の所に流れてきたわけだ。王子様はこれまでの人生で学んできたことがあるから、午後は割と時間が空いてるっちゃ空いてるんだよな。実年齢はまだ幼いから、外に出るわけにも行かねえし。


「そういえば、前回はどうして負けてしまったんだい。そこから何か、見えるものもあるかもしれないだろう」

「俺が魔王にとどめ刺しちまったからですね」

「ああ、勇者が刺さないといけないのだったね。エモニエ叙事詩にその辺りの事が歌われていたと思うが」


 おい聞いてねえぞ王子様。王子様的には、というか、長く魔王討伐に関わってきていたこの国の王族にとっては、当然の知識なんじゃねえのか。

 俺のその視線に気が付いたのか、王子様が苦笑している。見つめてるからな、じっと。


「その辺りについて調べたのは、最初の時だけで。そろそろ記憶が曖昧かもしれません」

「では魔王討伐関連の書籍を集めて運ぶように申し付けておこう」


 まあ、王子様は俺の比じゃないくらい繰り返してるっていうから、そりゃ最初の頃の知識はそろそろ薄れてきていても仕方ないだろう。でもそれはさ、慢心って言わねえか? なあ。


「時が経過してから調べ直すのは、見落としの発見につながる。悪い事じゃないから、いま一度やって見なさい」

「そうします」

「それに確か、そういうのは南の賢者様がお得意だろう」

「南の賢者様?」


 賢者って呼ばれる年寄りは二人いる。南と北だ。南北に半島があって、そこの先にある塔に引きこもってる。どっちも白いひげを蓄えた、偏屈なジジイだと思うだろ? 北の方はババアなんだよ。年寄り同士は仲が悪くて、片方が参加してると、もう片方は参加してくれない。らしい。

 参加してくれたのは、北の賢者様の方が多かった気がするな。


「ああ、あの方はそう言った、ステータスに関することを研究していらっしゃるから。対して北の賢者様は、攻撃魔法がお得意だな」

「はい。ですからどうにも、北の賢者様に頼ることが多くて」

「なら今回は、南の賢者様を頼るといい」

「私が弟子入りしてみましょうか」

「一朝一夕で学べる事でもないだろうから、ほどほどにしておきなさい」


 確かにいつの日か、王子様がそれを使えるようになったら、北の賢者様を呼んであのすげえ魔法でドーン! っていけるんだろうけれど。でも今はそれに頼るよりも、俺の武器で削りすぎないようにした方が良さそうなんだよな。

 南の賢者様がお住いの半島は、アベラール王国の隣の国ではある。ボードレールというその国には、国土の三面が海に面していた。そういや前、前の人生のどこかで、行ったことある気がするな。


「勇者様に会いに行くには、もう少しバティストが育った方がいいだろう。南の賢者様に会いに行ってもいいかどうか、お手紙を出すといい」

「そうしてみます」


 という訳で、王子様にはお勉強することが増えた訳だ。

 まずは陛下が、陛下が仕事している方の城にある図書室の人に頼んでくれて、結構な量の本が届いた。木箱に詰められていたんだぜ。


「まずは年代順にお持ちしました。神話になってしまいますが、魔王が発生した際、初めて聖女様に女神さまが神託を下されたころのものになります」

「ありがとう」

「読み終わりましたら、使いをよこしてください。回収に伺います」


 その木箱は、俺の行かない三階に運び込まれた。担当の、司書、という職業の連中が自分たちで運び、棚に詰めてくれたという。ちなみにその時間帯、俺は訓練場にいた。だから俺が見たのは、部屋の外に積み上げられていた木箱だけだ。王子様とジジイがわざわざ俺を三階に連れて行って、そういう訳だからあの木箱は捨てないでくれと言われ、そもそも俺にはそんな権限はないという前に、この量を読むんだって、と王子様は小さく呟かれた。


「ま、頑張ってください」

「頑張るよ」


 俺はどうやら、あの木箱を見せるためだけに呼ばれたらしい。

 読書の他に、通常の家庭教師によるお勉強もある。マナーなんかもこの際再確認いたしましょうとジジイが言い出して、王子様のお勉強は増えた訳だ。王子様のお勉強は、モノによっては俺も同席するから、俺もお勉強の時間が増えた形になる。いやいいんだけどさ。

 その分、体を動かす練習時間が減るだけだけれど、その辺りはジジイとセドリック騎士団長が相談して、それなりの時間を確保してくれることになった。まあな。俺の鍛錬の時間が減って、俺が強くなりきれなくて、魔王を倒しそびれました、は、困るもんな。

 それでも今の俺がやるのは走り込みと、素振りと、素振りの時に足りていない筋肉を補うための筋トレだ。体はまだ子供だから、やり過ぎもよくないってんで、多少勉強のお時間が増えても問題はないらしい。

 ジジイと陛下の方で南の賢者様にお手紙を書いて、ボードレールの王家経由で親書を発行してもらえる事になった。よく分かんねえんだけど、王子様が自分で書くよりそっちの方が効果? がいいらしい。


「お前に分かるように言うなら、そうだな。第二王子さまがお前に直接遠征について来いと言っても断るだろうが、王子様や俺についてこさせるように行ってくれって話付けた方が、お前が遠征に参加する可能性は上がるだろう?」

「ああ、それはそうですね」


 セドリック騎士団長が、俺にもわかるようにとせ説明してくれる。俺は今は王子様の奴隷なので、第二王子様の遠征についていくとかそういうのは自分で決められない。けど、王子様とか団長に一緒に行くようにって言われたら、そうなのかな、とは思うな。

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