第5話 子供はピュア♡
そうこう言っているうちに、今日は孤児院を慰問する日です。
私は知っています。
この孤児院を併設している教会のお墓にカミール様の亡き奥様のお墓があるという事を!
「お久しぶりになってしまいました」
「おやまあ、こんな寂れた孤児院でも王女殿下みたいなキレイな方がいらっしゃってくださるだけで……」
「そんなこと仰らないで下さい。今日も少しですが寄付金と、ココで暮らす子の生活が少しでも良くなればと、備品を持ってきました」
「あらあら、いつもありがとうございます。少しなんてご謙遜を。馬車が何台も」
「王女様なの?お姫様~?」
「こらこら、失礼な事言ってはいけませんよ」
「うふふ、そうよ。王女なの。ゴメンね?王子様はいないのよ」
「「「え~!いないの~?」」」
(お父様とお母様の都合かなぁ?今後生まれるかもだけど)
「お姫様じゃダメかな?」
「「「お姫様になりたいんだもーん」」」
(孤児が無茶言うなぁ)
「そうだよなぁ。殿下!殿下が昔着ていた服とかないのですか?」
「多分探せばどこかに……」
(城のどこかだけど……)
「その服をこの子達に着せてあげましょうよ。一日お姫様というのはどうでしょうか?」
「王子様はいないから我慢してね。言う事聞けるなら、頑張って探すわ。いう事聞ける?」
「「「はーい!」」」
(子供の扱いが上手ね)
「女ばっかりズリー」
「ははは。それじゃあ、君達男の子は一日騎士をやるかい?」
「「「おもしろそー。やるやるー!」」」
(カミール様が団長の騎士団かしら?一日騎士って体力づくりとかやるのかしら?)
「いう事聞いてね」
「「「はーい」」」
「あらあら、うちの子達が簡単に言う事聞いて」
院長には、一日お姫様は楽だけど一日騎士はキツイか暇かということになるだろうと伝えた。カミール様が一日中チャンバラをさせるかもしれないけど。騎士団はそんなとこじゃないし。
その後、私は女の子に質問攻めにあった。普段何してるの?何を食べてるの?何を着てるの?等一日中の出来事を。あとは、刺繍のやり方とか指導した。読み書き計算は普段指導しているはずだから。
男の子はカミール様以下護衛騎士の方々が全身で遊んでやったらしい。
その間の護衛?影の方に頼りっきりです。
「うふふ、私はもう年で一緒に走り回ったりできないから助かります。あら、そこの貴方!毎月お墓参りにこの教会のお墓にいらっしゃる?」
「あ、はい。亡き妻がここのお世話になっております」
そんなこんなと孤児達と交流していてわかった。
ん?孤児達は読み書き計算ができない??
なんで?十分な寄付はしてるはずでしょう?
つまり、教会からきちんとした指導をされていないのでしょう。このまま成長しても自分で生活していく事が出来ない。
せっかくの寄付が全く役に立っていないということ!これは重大なこと。お父様(陛下)にも要相談案件。
そもそも寄付金は私のポケットマネーよ?それを横領しているの?
指導していないのはわかった。孤児達は十分な食事ができているのでしょうか?
「お父様!」
きちんと周りに臣下達がいないことを確認したうえで、呼びました。
「一応、陛下って呼んで欲しいな。リリたん」
私はリリたんて呼ぶのをやめて欲しい。
「ゴフンッ、ゴフッ、王女殿下。どんな用件でいらしたんでしょうか?」
まだ宰相が残ってたな……。お父様が‘リリたん’って呼ぶから宰相閣下が動揺したでしょう!
「今日、孤児院の慰問に行ったんだけど、そこの孤児達は読み書き計算ができないのよ。私は彼ら彼女らが最低限の生活を自分で出来るように寄付しているつもり。でもでも!読み書き計算できないのよ。おかしくない?」
「寄付金の横領・着服ですか?」
「しかもね、孤児達の食事だって粗末なのよ。贅沢をしろって言ってるわけじゃないわよ。最低限よ、でも成長に異常が出る程っておかしくない?年齢よりも体が小さいのよ。あ、今度城に来ることがあると思うから、実際に見てみるといいわよ」
「それはちょっとやりすぎですね。横領とかの証拠を見つけるのは至難の業ですが……」
「リリたんは厳しいなぁ」
「「陛下がのん気なんです!」」
「このままあの子達孤児院を出ざるを得ない年齢になっても、自分で働くってできないわよ?」
「ですと、女の子は娼婦でしょうか?男の子はよくて男娼……」
「そうよね!力仕事が出来たとしても、給料をちょろまかされてもわからないのよ。計算できないから。文字も読めないし、不利な契約を結ぶかもしれないわね」
「そこまでリリたんが言うなら、その教会調べてみよう」
「あぁ、その教会の墓地にカミール様の亡き奥様のお墓があるのよ。教会を潰すとかはやめてね」
「違う違う。頭のすげ替え!その神父はどっかに行ってもらって、新しく神父に来てもらう。敬虔な」
「あー、頭が固いタイプじゃなくて、柔軟な人がいいかな。孤児院が併設してるし」
今のピュアな子達じゃなくて、生きていくために体を売らなきゃいけないなんてダメよ!
「あ、そうそう!今度、そこの孤児院の女の子に一日お姫様体験をさせてあげたいのよ。それで、私が昔着てたドレスとかってどこにあるかな?捨てちゃった?」
「ばっ、馬鹿言うな!リリたんの歴史!大事に保管してあるぞ」
「よかったぁ。それを今度使おうと思うんだ♪女の子は一日お姫様なんだけど……」
「「なんだけど?」」
「男の子が一日騎士なのよ。監修・カミール様かしら?騎士っていっても、有事の際以外は体力作りとか護衛で立ちっぱなしでしょ?男の子のイメージする騎士様とは違うんじゃないかしら?」
「「あぁ~~」」
やっぱりなぁ。冒険者の方がそれっぽいよね。‘騎士’は規則があるし、基本体力づくりじゃないのかなぁ?
これも直接カミール様に聞いてみよう。
「で、その時に子供達が城に来るはずだから、見てみてよ!年齢のわりに体が小さいのよ。痩せてるし。健康的に痩せてるんじゃなくて、痩せすぎって感じの痩せ方よ?」
「わかった。国王の政務の一環として行おう。そういうわけで、スケジュールの方をよろしく頼む、宰相」
「……わかりました。頑張って仕事してください」
え?お父様の仕事増やしちゃった?
「カミール!件の一日騎士体験ですけど……、何をさせるつもりですか?」
「子供たちが思う騎士というものは、戦って武功を挙げるみたいなものだろう?だから、彼らには木刀より柔らかい剣で模擬試合をしてもらおうかなぁ。と思っていましたが、何か?」
「いぃえぇ、普段の騎士団の鍛錬をあの子らもすることになるのかと……」
「ははは。そんなことをしては、もしかしたらあの中に逸材がいるかもしれないのにトラウマになってしまうよ。『騎士団キライ』になるかもね。騎士にだけは絶対にならないって思っちゃうかもしれない。きちんと考えてますよ。これでも騎士団長ですから」
カミール様に笑われてしまった。馬鹿な質問だったのかしら?ますます子供に思われた?
「あ、そうそう!私が昔着てたドレスを大事に保管してるって陛下が言ってました。場所を聞くのを忘れましたが、とりあえず存在は確認しました」
「と、いうことは。昔会った時のドレスも大事に保管してあるのかな?」
「恐らく。身内の事で恥ずかしいのですが、陛下にかなり溺愛されてるので……」
溺愛は今も現在進行形で続いています……。
「リリアーヌ様がお小さい頃は可愛らしかったですからね」
「今は?」
「うーん。可愛いと美しいの狭間でしょうか?美形なのは確かですよ」
可愛いと美しいの間って何て言うんだろう?年齢的なものでしょうか?