第4話 いろいろ試練が立ちはだかる♡
きゃ~~!カミール様はカッコいい!!
覗き見してます。
「恐れながら、王女殿下」
「何~~?」
「最近カミール様の付近をうろつく貴族女性がいるとの噂を耳にしました」
なんなの?カミール様ならカッコいいからわかるけど……。騎士団長だし?
「で、どんな女なの?」
「その女は未亡人で、初婚の男性亡きあと、老い先短い貴族男性に嫁いでは遺産を相続して裕福にくらしています」
「うわー、最低。カミール様のように一途に想い続けるとかないんだ?」
「そのような考えはないようで、次なるターゲットをカミール様にしたのは、ただのタイプだったからでは?肩書きも騎士団長ですし。遺産目当てというのが社交界でけっこう噂になりましたからココで違うということを世間にアピールする狙いもあるかと……」
そんな狙いのために、カミール様をターゲットにしないでよ~~。
「スタイルは抜群ですね。凹凸がはっきりしています。老眼の老い先短い方でもわかるでしょう。茶髪で、黒目。きついイメージの美人なんですけど、接すると違うよってタイプです」
「……詳しいわね?」
「はい。殿下のために変装して実際に接してみました。きついイメージでしたが、共にいますとそこらの野草について気を使ったりしていました」
「あぁ、それ。演技ね。男性に変装したんでしょ?男の前だと猫被るタイプね……。その野草、別れた後絶対踏んでるわよ?」
「私もそのように思います」
私の侍女のベティはかなり力を入れて調べてくれました。どっかの令息の想い人のベティさんとは大違い!
カミール様とその未亡人が会ったのも覗き見しました。おそらく、覗き見をしている私をさらに護衛騎士が護衛しているという。なんとも言えない状態なんでしょうね。まさにカオス!多分その様子を王家の影が見ている物凄い状態だろう。
「カミール様ぁ、私は昔よりお慕い申していましたぁ。カミール様が婚約したと伝え聞いて、どんなに打ちひしがれたことか!」
(そんなことは知らないわよ!私だって凹んだわよ!)
「オーラレル男爵令嬢。貴女については結構な調査をしました。離婚歴が3・4度ありますね。初婚の時はともかく、その後は明らかな遺産狙い……と言われてもおかしくないほど高齢の方に嫁いでいますね?」
「初婚の時は、貴方が結婚してしまったという心の隙間を埋めるように、求婚してきた殿方と婚姻したのです。その方が若くして儚くも亡くなってしまい、私は世間でキズモノとして扱われるようになりました。結果高齢の方の後妻になっただけでございます。高齢の方の後妻に納まるか、修道院に入るか私にはその2択でした。今、貴方にアプローチしているのはずっと前からお慕いしていたという気持ちをお伝えするためです」
(きーーっ!それだけなら体をカミール様に密着されるんじゃないわよ!その胸が忌々しい。なんで慕っている事を伝えるのに、わざわざ腕に絡みつくのよ。カミール様も振りほどいてしまって!なんかカミール様が穢れるわ!2択なら修道院に入りなさいよ!)
「貴女の気持ちは嬉しく思うが」
(迷惑でしょ、正直に言って。大体、男爵の喪がまだ明けていないんじゃないかしら?礼儀知らずね。恥知らず?)
「私は亡き妻一筋なので、再婚など考えていない」
(きゃ~~、流石カミール様♡それでこそよ!そこの恥知らず男爵夫人も見習いなさいよ!)
「ではまた、喪が明けてからアプローチすることにしますわ、ふふふっ」
「私が亡き妻一筋っていうのは変わっていないと思いますが?」
なによ、去り際に気持ち悪いわね。なんとかなるとでも思っているのかしら?私(王女)すらどうしようか考えているのに(王命却下)。
「全く、男爵令嬢風情が図々しいわよね。体でカミール様に取り入ろうとしてるのかしら?カミール様も騎士団長ではあるけど、侯爵子息だから家柄もよろしいし。でも侯爵子息と男爵令嬢ってカップルはないよね?」
「そうでございますね、王女殿下。少なくとも侯爵子息に釣り合うには……そうですね、伯爵家、もしくは裕福な子爵家でしょうか?」
「そうよね!」
「お嬢様!声が大きゅうございます。部屋の外で護衛をされているカミール様に聞こえてしまいますよ?」
「あら、それは困るわ。私だって『レディになりました!』感を出したいもの」
******
王女殿下はカミール様が自分をどのように見ているのか気付いていない様子。
僭越ながら、私が見る限りあの一途なカミール様の様子だと『亡き奥様との間に子供がいたら、こんな感じだろうか?』というように、お嬢様を見ているような感じがするのです。
恋愛感情とは程遠い。このような事は、懸命なお嬢様にはとてもとても言うことが出来ません。
一途な騎士団長を振り向かせるのがお嬢様の目標です。
*****
「ベティ」
「なんでしょうか?」
「カミール様を見ていて思ったんだけど、この間の男爵令嬢みたいなのが多いわね」
「今頃気づいたのですか?カミール様は未亡人に人気です。特に早くに旦那様を亡くされた方」
マナーとしては、きちんと喪が明けてからのアプローチでしょうね?
この間の胸が忌々しい男爵夫人が非常識なのです。
「カミール様自身も奥様を早くに亡くされていますし、同じ痛みを分かち合う。というような感じでしょうか?」
痛みなんて人それぞれでしょう!亡くされた原因だってそれぞれ違うでしょうし、一緒にしないで欲しいわ!
カミール様は一途なのよ。カミール様にアプローチをしようって未亡人は一途じゃないわよ。きちんとお墓とか、亡くなった旦那様の実家の許可とか取ってるのかしら。
「未亡人てみんな体型に凹凸があるの?」
「そんなことはありませんよ。千差万別です。カラダに自信がある方がカミール様にアプローチするのではないでしょうか?」
「カミール様はやっぱり凹凸がある体型の方が好きなのかしら?」
翌日
私はうじうじ考えたりするのが嫌いなので、カミール様に直球で聞くことにしました。
「カミール様!カミール様は凹凸がある体型の女性の方がお好みなのでしょうか?」
「ゴホっ、ゴホゴホ、……私個人の事を質問でしょうか?」
なんか笑ってるけど、そうなんだけどなぁ。
「そうですね、亡き妻は標準体形でしたね。とりわけ、凹凸がある体型というわけでもありませんでしたよ?リリアーヌ様はもしや自身の体形を気にしていらっしゃる?まだまだ成長過程でしょう?気にすることでもないと私は思いますよ」
私はカミール様から聞いた事をベティに話して相談した。
「確かに成長過程だけど、私と同じ年代ですでに凹凸が完成しているような方もいらっしゃるし。ホラ、あのベティさんとか」
「あぁ、阿呆公爵子息にくっ付いてたベティさんですね?はぁ…お嬢様、カミール様はお嬢様を『亡き奥様が子供を産んでたら、お嬢様くらいの年齢だろうか』というように見ています。なので、凹凸のある体型と聞かれて驚いたでしょうね。とりあえず、成長過程と茶をにごしておいたのでは?」
カミール様は私を子供として見ている……
だから、‘成長過程’とか言ったの?
出会った時すでに、カミール様は騎士だったし、いつまでもそういう目で見ちゃうのかなぁ?異性として見て欲しいんだけどなぁ。