第1話 念願の婚約破棄されました♡
よろしくお願いします!
「レオナルド様?貴方が私との婚約を破棄したいと耳にしたのですけれど?」
「俺は本気だ」
彼はレオナルド=ホークス公爵令息。私との婚約が破棄されずに婚姻となると、王配というやつになる予定なのに、その地位も放るとは。まぁ知ってるんだけど。王家の影がついてるからね。
えー、私はこのヴィーナスヴェール王国における唯一の後継。一人娘。私もレオナルド様など欠片も慕ってはいないので、好都合と言えば好都合なのですが、国のためにはどうなんでしょう?
あ、名前。リリアーヌ=ヴィーナスヴェールと申します。
「第一俺はなぁ、王女殿下の清ました喜怒哀楽のない顔が嫌いなんだよ!」
淑女たるものそう簡単に感情を表しませんからね。貴方が私の喜怒哀楽を引き出していないのですよ。と言っても耳を貸さないんでしょうね……。
「それに比べて、ベティは表情が豊か!殿下とは月と鼈!」
……不敬じゃないでしょうか?
あ、影の報告でベティさん(男爵家に養女になった元平民)はお胸が大きいと。いろいろ言ってるが本音はそこでは?と私は思うのです。私の体の事です。私にはわかります。ええ、いわゆるちっぱいというやつですよ。
なんかいろいろ言ってたけど聞き流してしまいました。ベティが可愛いだのなんだの言ってたような?
「あ、ごめんなさい。途中から自分の世界に入ってしまい聞いていませんでした。でも要約すると、本気で私と婚約破棄をしたいという事ですね?家との契約ですから、ホークス公爵の許可も必要なのですが?」
「そんなもの、奪い取った。コレが我が家の印璽だ!さぁ、破棄の書類を作ろう!」
盗んだのですね?あとでこっぴどく怒られる様が目に浮かびますがいいのでしょうか?放っておきましょう。私には関係のないことです。
「破棄について、貴方の有責で構いませんね?貴方が言い出したことですし、事実貴方が心変わりをしたのが原因ですから」
「ああ、なんでもいいから一刻も早く婚約破棄の書類を作ってしまおう。破棄してしまえばこっちのもの」
怒られて廃嫡されたのちにベティさんにも捨てられるでしょうね。恐らく彼女は公爵夫人の地位と財産目当て。廃嫡されたら価値はないでしょう。しかも婚約破棄の慰謝料借金付きの男なんて願い下げでしょう。きっとベティさんの目的はキラキラウハウハ生活でしょうから。……高位貴族夫人の生活はそんな甘いものじゃないのですがね?
陰謀渦巻く社交界を生き抜き、領地経営に片足突っ込み(片方は夫の役目)、跡継ぎを夫の実家からせがまれ……など。
こうして私は無事(?)婚約破棄したのです。これでお慕いしているあの方へ近づけたわ。キャッ♡
私がお慕いしているのは、ただ一人!騎士団長をなさっているカミール=ベル様。
お父様(陛下)は年齢差とか言うけど、私はあの方に首っ丈!
カミール様は、銀髪緑眼。騎士団長だもの、剣術にも秀でているわ。体型だって、騎士体型(?)!とはいえ、筋肉だるまではなくほどよく筋肉がついてる感じで素敵なのよ~!きゃ~~!!
私とのこ…婚姻だって問題ない侯爵子息だし。三男だから実家を継ぐ可能性はほぼないと見きりをつけるのが早かったのかなぁ?若くしてどんどん出世して今や騎士団長だし!
*****
公爵家にて…
「婚約破棄してきただとぉ?どうやって?私は聞いてないぞ?」
「まぁまぁ、父上。勝手に印璽を持ち出したことは謝罪申し上げます。興奮なさると、お倒れになりますよ?」
「勝手に印璽を持ち出した?お前はな、な、なんてことを……。私は急ぎ陛下に謝罪を申し上げてくる。お前はしばらく自室で反省していろ!」
それではベティに会えない……何てことだろう?父上だってベティに会えばその愛らしさに絆されるだろうに。わかってない人ばかりだなぁ。とりあえず、自室に戻ってベティへ手紙でも書こう!そうだ、婚約破棄できたという報告をしたいしな。
**
宮廷にて
「王国の太陽であらせられます陛下におかれましてはご多忙の中時間を作っていただき誠にあり難きことと存じます」
「うむ。貴殿の子息が暴走をして、我が娘との婚約を破棄したとか?」
「はい。その際に我が家の印璽を勝手に持ち出したのです」
「貴殿の家の問題は貴殿が解決するがよい。以上だ」
(私は一刻もはやく愛しの我が娘、リリたんと会いたいよ~♡)というのが国王陛下の内心だ。公爵家に興味はない。
**
マイ スイート ハニー ベティ へ
さっき王女と婚約破棄してきたよ♡ これで二人を邪魔するものは何もないね。
勝手に我が家の印璽を持ち出したからさぁ、自室で反省しろって怒られてるけど、これからは手紙をちょくちょく送るよ。待っててね♡
レオナルドより
「うげっ。キモ」
「言うな。自室に軟禁されているという自覚はないな……。コレをこれからベティとかいう女に届けるのか?」
「ちょっと待て。届ける前に、旦那様に見てもらった方がいいんじゃないのか?」
「「「そうだなぁ」」」
ホークス公爵家の護衛達の心は一つになった。
「旦那様。自室で反省しているハズの坊ちゃんがベティなる女性に送ろうとしていた手紙です。既に邸の者が読んだ後ですけど、拝見後ベティなる女性に送るか否かを判断したいと思います」
「……」
公爵閣下が絶句した。
「こ……これは。我が家の恥まで外に漏らそうというのか?印璽を持ち出されたなんて恥以外のなんでもないのに。あいつはそれもわかっていないようだな。はぁ、どこで教育を間違えたのだろう?レオナルドを連れて来い!」
父上に呼ばれた。父上もベティの素晴らしさがわかったんだろうか?遅いくらいだけど。
「コレを書いたのはお前か?」
「父上!コレを読んだのですか?というかまだここにあるのですか?」
「屋敷の者がほぼ全員読んでいる。お前はどうして自分が自室で反省しなければならないのかを理解していなかったようだな。コレを読んで私の心は固まった。今まで自由にし過ぎたのか……ハァ、お前を廃嫡する!」
「そ、そんな…。で…でも、この家の後継は私一人しかいないではありませんか?」
「優秀な親戚を養子にする。…たしか、弟の息子が優秀と聞いたような?その方が安心して老後を過ごせる。お前はそのベティとやらと共に生活をすればよかろう?」
「昔は『お前の従兄弟が優秀だと噂になっている。当然のことだが、お前はさらに上をいくように』と仰ったじゃないですか‼」
「そんなことも言ったが、お前はせっかくの婚約を破棄し、最高の道を行くはずだったはずなのに、我が家の印璽を盗む等言語道断‼ 嗚呼、どこで道を誤ったんだろう? ベティとやらと一緒になって最高の道を行けるわけがない……。陛下に会わす顔がないじゃないか‼ 全部お前がしでかしたからだ」
こうしてレオナルド公爵令息は廃嫡された。やっぱりとしか言えない。そして、やっぱりベティなる女は公爵夫人になって贅沢三昧するのが目的だったようで、『公爵令息じゃない貴方に価値なんてないわよ。一緒に平民なんてゴメンよ』とレオナルドの元を華麗に去っていった。というか元の男爵令嬢として男漁りをしていると耳にした。地位が高くて操りやすそうな男を求めて彷徨ってるんだろう。
でもまぁ、そんな二人も関係ない! 私の両の目にはあの方しか映っていないのよー!!
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