起床
頑張って描きます
この世には、人と群れるのを嫌うくせに友人と馴れ合うのは好きな奴がいる
私である
この世には、休日だというのに食事や排泄、入浴といった事柄以外は全てスマホかパソコンをイジるだけの社会性の薄いもやしみたいな奴がいる
これも私である
この世には、流行にのり、みんなとソシャゲをはじめた癖に熱量はなく、三ヶ月も持たずに話についていけなくなる愚かな奴がいる
これまた私である
この世には、ネットに触発され描いて消して書いて消して描いて消して書いて消して描いて書いて描いて描いて書いて書いて、結局公開に至らず完成もさせず、挙句脳内ある構想だけで満足し「私には創作の才がある、ただ出力してないだけ」と保身に走る足踏みだけが得意な身の程も知らない阿呆がいる
全て私である
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ある日、ネットサーフィンをアウトドアと言い張る愚か者は青い鳥のSNSの波に瞳を揺らしていると一つのツイートが目に入った
「目を閉じて、あなたは作家です。本屋に平積みにされた書籍の中で『これが売れています!』と手書きPOPが書かれた本があります。これに貴方が、嫉妬するモノを想像してください。それが貴方が本当に書きたいものですよ」
正直、何言ってるんだコイツはと思った
そんなもん可愛い女の子が気ままにお喋りする日常系以外ないだろうと思った
でも私は大人だから、立ち止まって考えた。確かにそんな作品にはハンカチを噛み切るぐらい嫉妬する。しかしよくよく思考を巡らせるとそれは作品に対する嫉妬ではない
私は美少女になりたい。見知らぬ土地で出会った女の子に誘われてコーヒー屋で二つ屋の下で終わらぬ日常を過ごしたい。訳のわからない部活に黒のビニール袋に包まれたのち、連行され美少女達とくだらない部活動の毎日を過ごしたい。金髪の同級生からアヤヤと呼ばれたい
そうだ、きっと私は登場人物になりたいのだ。この時初めて私が描きたいモノが見えた。
私が出る作品を描こう、そう決意し包まる布団を緩め寝ぼけ眼こじ開け、靴下を履き、洗面台に向かう。鏡に映るのは寝癖で跳ね返った髪の毛、目やにに死んだ目とダボダボ皺のよりまくった抹茶の汚れ付き白Tシャツ
「終わってんな....」
諦めは早かった。歯を磨き、トイレ。便座に腰掛けたままなくなったトイレットペーパーを取り返え、芯に関しては自由意志を尊重し床へ
外に赴き美術館に入りしみじみと過ごす余裕はある、カフェに入り積読を消化する日もある、アニメを一気見する体力もある、アダルトゲームを読み進める暇もある
そんな人間が、ある日突然作品の登場人物になるには些か非凡が過ぎた。現代社会ではそのような大人が多数である。私がそうであるように
そんなことを考え、昨夜脱ぎ捨てたベルト付きのジーパンを履き、7の付くコンビニに向かう。飯だ
冷凍食品2品にお弁当が並ぶ冷蔵品の端っこのよくわからない山の描かれたコーヒーとプリン。いつもの定番だ
お会計を済ませチャックの壊れた財布を何度も開け閉めし帰路に着く
私はこんな人間だ。きっとみんなそうだ。劇的なことは何もない。可もなく職場で微妙な仕事を済ませ家に帰り惰性に生活している
こんな人間を描いて誰が見るんだ...?
私か
週間少年に出てくる船大工のオッサンも昔言ってた、「自分だけは自分の作品を愛さなければなんねぇ」って
私は私が好きなので、この作品も頑張って書き続けたら...
書くか、日常