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家に代々伝わる髪色を受け継いでいないからとずっと虐げられてきていたのですが……。  作者: 四季


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5話「彼の母親は明るく善良な人」

「メリアちゃ~ん! ちょっといい?」


 あれからしばらく、トレットの家で生活しているのだが。


「あ、はい、何でしょうか」

「んもぉ、固いわね! あのね、ちょっと、お菓子づくりとかしないかなーって」


 トレットではなくトレットの母親がやたらと構ってくる。


 いや、もちろん、悪い意味でではない。


 彼女は私と関わることを望んでいるようなのだ。

 その積極的さにはいつも驚かされる。


「お菓子づくり……ですか?」

「楽しいわよ!」

「で、では、よろしくお願いいたします」

「やった! じゃ、行きましょっ」


 お菓子づくりは今日が初めてだが、これまでもいろんなことに誘われた。ガーデニングとか、ハーブティーの茶葉づくりとか、料理とか。彼女はいつも私に色々な世界を見せてくれる。


 でも嫌いではない。


 これまで見ることのなかった世界を見られる。

 しかも明るい視界のままで。


 それはとても嬉しいことだ。


「まずはね、これをここに置いて」

「はい」

「それから、こっちを先に――」


 彼女といると学びが多い。



 ◆



 トレットの家に住ませてもらってから一月が過ぎた。


 その日はよく晴れていて。

 爽やかそのものな日であった。


「メリアさん、ここでの生活はどうですか?」

「トレットさん……その、とても幸せです。毎日楽しくて。その……色々、本当に、ありがとうございます」


 彼には感謝しかない。

 もしあの時彼が提案をしてくれていなかったら、私はきっと今も生まれ育ったあの家で母や姉妹に虐げられ続けていただろう。

 地獄からこの身を救いだしてくれたのはトレットだ。

 彼に会えたからこんなにも穏やかな今がある。


「なら良かった」

「でも……ずっとここにいるわけにはいかないですよね。次をどうするか、早く考えないと……」

「ここにいる、というのはどうです?」

「え」

「嫌なら嫌と言ってくださいね。そのうえで。ここで僕と生きていくというのはどうでしょうか?」

「え、ええと……」


 もっと詳しく知ってからの方が良いのだろうか、と思う面はあって、けれどもここは勢いに乗ってしまった方が良いのでは、と思う部分もあって。どうしよう、どうしよう、と狼狽えてしまう。そもそもこれまではあまり、自分で決定させてもらえる、ということがなかった。だから、いざ自分で決めろと言われても、なかなか難しいのだ。慣れていないから。


「では、一応、その方向で……」


 取り敢えず返事をする。

 曖昧なものだけれど。


「その方向で考えてくれる、ということですね?」

「はい」

「良かった! ではよろしくお願いします」

「すぐに決定できずすみません」

「いえ。前向きに考えてもらえるだけでもありがたいですし嬉しいですよ」


 こうして私たちの関係は一歩進んだ。


 それは小さな一歩でしかない。

 けれども確かに未来へ続く足取り。


「あの、トレットさん、何か仕事があったら言ってください!」

「え? 何の話です?」

「お世話になったお返しがしたいので……」

「いいんですよ、お返しなんて。そもそもこれは僕がしたくてしていることです、貴女はこれからものんびり暮らしていてください」

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