3話「どうして私なのか」
「どうして私なのですか……?」
「貴女に興味を持ったからです」
今私はなぜだか分からないがトレットと共にある。
一つの部屋で二人きりになっているのだ。
「すみませんね、驚かせてしまって」
「いえ……」
こんなこと、初めてで。
上手くやりきれそうにない。
礼儀正しくしないと。
でも、気をつけてはいても何かやらかしてしまっていそうで、震える。
「メリアさん、いつも掃除なさっていますよね」
「えっ。なぜそれを」
「はは、すみません、気持ち悪いですかね。実は、たまにこの家の前を通るんです。その時いつも貴女が掃除をなさっていて、素晴らしい方だなと思っていました」
馬鹿な……。
知られていたなんて……。
「でも、どうして? なぜいつも貴女だけが掃除を?」
「家での役割なのです」
「しかし、他の娘さんがされているところは見たことがないのですが」
「掃除、いえ、家事雑用は全部、私の仕事なのです」
するとトレットは驚いたような顔をした。
「どうして」
私だってそう思う。
なぜ私だけなのか。
なぜこんな目に遭わされなくてはならないのか。
「多分、私が出来損ないだから……です」
「出来損ない?」
「緑髪じゃないですし、恥さらしだそうなので……」
すると。
「何ですか、それ!」
トレットは怒った。
そして。
「あの! 僕、お母様へ言ってきます! 酷い扱いをするな、と!」
それはやめて。
あまりにまずすぎる。
絶対後で酷く責められ虐められる……。
「お願いします、それはやめてください」
「なぜ」
「後で怒られますから……」
「でも」
「お気持ちは、嬉しいのです、本当に。トレットさんはとても優しい方と思います。だから、その、怒ってくださってありがとうございます、でも……そっとしておいてください。騒ぎを起こすとまずいんです……」
トレットは少し考えて。
「じゃあ、今日から早速、うちへ来ません?」
さらに驚きな提案をしてくる。
「僕の家にいればさすがに追われはしないでしょう?」
「え……」
「あ、もちろん、嫌ならそれを尊重します。いきなりのことですしね。すみません」
あの人たちから逃れられる絶好のチャンス。
でも、勇気がない。
踏み出したいのに。
踏み出す力が、私には……。
「やめておきますか。すみません、急に勝手なことを。では僕は今日はこの辺りで……」
「……あ、ま、待って!!」
「はい」
「お、お願いします。私を……連れていってください」
ついにそう口にした。
「もう逃れたいです!! こんな日々から!!」
するとトレットは微笑む。
「では一緒に帰りましょうか」