表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/23

近づく距離

 テニス少年は何も言わず、ただ恥ずかしそうに頬を緩めただけで、店に入ってくることもなく引き戸を閉めた。

 近所の子どものイタズラかなあ? と考えながら、コーヒーに口をつける。

 口に残っていたホイップクリームの甘さが、コーヒーの苦味と程よく馴染んで喉を落ちていく。 


「ワタルくんは、今日もテニスかい?」

 カウンター席のお爺さんが、マスターに話しかける。

「ええ。五月の連休に隣の小学校と試合をするそうですよ」

「小学生なのに、まるで部活動だね」

「まあ、中学生と違って放課後は少しだけですし、曜日も限られてはいるんですけどね。学童保育を卒業したあとも居場所があるので、親としては助かります」

 二人のやりとりに、キウイを刺そうとしていたフォークの手がとまる。


 え? 親?

 あの子、マスターの子ども?

 私が告白した当時、既に産まれてたとか……は、ないか。うん。高校卒業から十年経っているわけだし。

 でも、結婚はしてたかも。

 『子どもと恋愛する趣味はない』って、それ以前の話じゃない?


 悶々とした気持ちを顔には出さないように押し込めていると、お爺さんと話しているマスターが顔の前で左手を軽く振って。その薬指に、鈍く光る指輪が見えてしまった。



「……な、さん」

 隣からの声で我に返る。

「香奈さん?」

「えっと、ごめん。何だっけ?」

「いや、なんかすごく深刻な顔で固まっているからさ。大丈夫?」

「あーごめんね。ちょっと……仕事の事を思い出してしまって」

 昨日も定休日だから、苦しい言い訳かな? と、言ってしまってから後悔するけど。

「国公立の後期が終わったばっかりだから……忙しかった? 無理に付き合わせてゴメン」

「え、あ、いや……大丈夫」

 余計な気を使わせてしまった。


「俺も去年は三年生の学年団にいたから。この時期は、しんどかった」

「学年団?」

 聞き慣れない言葉が出てきた。

「ええっと……なんて説明しようかなぁ」

 ちょっと考えるような間を置いた彼は、左手の親指で顎の下を掻く。

「メインで担当している学年、かな? 今年の俺は一年生の学年団に居て、春からは生徒たちと一緒に進級して二年生の学年団になるんだけど」

「学級担任とは違うの?」

「学級担任をしてない先生でも、この学年の数学は田中先生と岡本先生が受け持って……って」

「あー、なんとなくわかった。職員室で“三年生の先生の席”はここの塊、みたいな。あれ?」

「そう、それ。学級担任をしてなかったり、全学年対象の芸術専科の先生も、どこかの……香奈さんの言う“塊”に席があるわけ」

 なるほど、なるほど。


「うーん、でも。教育実習の時に、そんな言葉は聞いたっけなぁ?」

 毎日が、いっぱいいっぱいで、記憶に残っていない。

「……香奈さん、実習うけたんだ? 教員免許も?」

「う、え、あー、まあ」

 しまった。言うつもり、なかったのに。

 単位を無駄にしたくなくて取ったような免許、現役で働いている人には、失礼すぎる。

 でも、岩根さんは違ったようで、

「じゃぁ、同僚として働いてた可能性もあったのか」

 しみじみと、呟いた。

「……まあ、無くはない?」

「写真部の顧問同士として、コンテストや文化祭で出会っていたかもしれないし」

「文化祭?」

「市内の高校の文化祭には、なるべく行くようにしてる」

 さすが、勉強熱心だ。



 そんな話をしながらコーヒーを飲み、ワッフルを食べる。

 最初に渡された“お約束”に従って声は控えめだけど、隣に並んでいるからか、会話に不自由はない。むしろ、二人だけの空間で秘密の話をしているみたいな気分になるくらい。

 近すぎると感じた椅子の近さが、却って心地良い。


 ゆったりとした時間を過ごすうちに、テーブル席の人たちが出て行ったり、新しいグループが訪れたりと、数組の出入りがあって。

 カウンター席に居たお爺さんも、

「じゃ、先生。また」

 と、岩根さんに挨拶をして店を出て行った。


「香奈さん、お代わり頼む?」

 残り少なくなってきた湯飲みに気づいた彼に訊かれて、

「コーヒーはそんなに飲めないから……いらない」

 正直に断る。半分くらいなら飲めなくもない気がするけど、残りが無駄になるしね。

「あ、岩根さんが飲むなら、遠慮なく頼んで」

「うーん。どうしようかな」

 って、考えていたのは、ゆっくり五を数える間くらい。

 岩根さんは、常連らしい慣れた雰囲気でお代わりを頼んだ。 


 豆を挽くミルの音を聞きながら、ワッフルの最後の一欠片にフォークを刺す。

「香奈さん」 

 呼ばれて、口に運びかけたフォークをお皿へと戻す。

「なに?」

「今日のこの……コレ、なんだけど」

 これ? どれ?

「生徒たちや、ご隠居さんに言われたみたいにさ、『デート』ってことに……したいなっていうか……」

 生徒? デート?

 ああ、駅で会った子たちか。

 そして『ご隠居さん』は、さっきまで並んで座っていたお爺さんのことで、この店の隣にある薬屋の先代店主らしい。


 それはともかく。

「デートってことに、“する”の?」

「それは、その……」

 口籠った岩根さんの真後ろ、テーブル席に座っていた三人組がレジへと向かうのが、目の隅に見える。コーヒーミルから手を離して、マスターが会計へと向かう。

「……香奈さんの……いや」

 言いかけて、また言葉を止めた彼が、一つ深呼吸をして。

「俺と付き合わないですか? ってことで」

 囁くように言った言葉が、まっすぐ耳に飛び込んできたのはきっと、この店のもつ静かさのせい。


「え? でも……なんで? 私?」 

「それは、まあ……好き? だから?」

 『好きだ』と言われて、嬉しいと思ってしまう程度には、岩根さんのことを憎からず思ってはいるけど。

「付き合うっていうのは……ちょっと」

 言葉を濁した私に、彼の顔が曇る。

「ダメ?」

「うーん」 

 特別な他人って気持ちを、すっかり忘れてしまっているから。

「まずは友達から……だったら……」

「うわぁ、そこから?」

 悲痛な声を上げた彼が、慌てたように口を押さえる。マスターの方をそっと見る。

 レジの前でマスターが、苦笑いを浮かべたのが、私のところからも見えた。

 あーあ、『おしゃべりの声は、控えめに』って、約束を破ってしまったね。

 

「じゃあ、それはまあ。そういう事にするとして。もう一つお願いがあるんだけど」 

 気を取り直したらしい彼に、何をお願いされるのか。ちょっと身構えたけど。

「友達未満から友達に昇格したんだから、『岩根さん』って呼ぶのを止めてほしい」

「はぁ」

 言われてみれば、確かに他人行儀かもしれない。

「苗字で呼ぶのは、香奈さんの拘りかと思ってたんだけど。作品展のとき、『ミノルさん』って呼んでいたよね?」

「それは……『ミノルさん』としか知らないし。あれ? でも私、あの人と話したっけ?」   

「俺との会話の中でチラッとだけ、名前を呼んでた」 

「……覚えてないレベル、なんだけど?」

「うん。でも俺はあれ、嫌だなって思ってしまってさ」

 カウンターに頬杖をついた彼は、そう言って目を逸らした。

 その横顔を眺めながら、何と呼ぼうか考える。ミノルさんが呼んでたみたいに『ガンタ』? は、何か違うな。

「じゃぁ……ガンちゃん?」

 さっき生徒たちに呼ばれていた愛称を、唇に乗せてみる。 


 ずるり、と、頬杖が外れて。

 カウンターに突っ伏す彼が居た。


「ここで、それ?」

 苦笑いに下から覗き込まれて、顔が火照る。何を言ったんだ。私。

 恥ずかしくなって、目を逸らした先では、招客のネコが澄ましている。

「え……だって……」

「惜しいなぁ。せっかくなら濁音じゃなくって『カンちゃん』。俺の名前、寛太だよ?」

 って、言われて

「カンさん」

 敢えて少し、外してみる。

「……総理大臣?」

「ああ、もう。分かった。寛ちゃんでいいの?」

「うん」

 嬉しそうな寛ちゃんの笑顔に、シャッターを切りたくなる。

 


「申し訳ありません。お待たせして」

 寛ちゃんの向こうから静かなマスターの声がして、コーヒーの香りが漂ってきた。

 やっぱり私もお代わりをしようかな? 

「すみません、私もコーヒーのお代わり……少なめにできますか?」

 彼と一緒に頼めば良かった……と反省しながらの注文に、マスターは微笑みと共に頷くと

「お待ちの間に、よかったらどうぞ」

 小鉢に盛られた棒状のお菓子を、寛ちゃんとの間に置いた。


「今日はクッキーじゃないんだ」

 ボソッと寛ちゃんが呟く。

「クッキー?」

「うん。お代わりにはサービスでクッキーが付くんだけど……」

 私に説明をしながら寛ちゃんは、カウンター内に戻ったマスターへと問いかけるようなまなざしを送る。

 コーヒー豆をミルにセットしたマスターは、

「今日は、裏メニューです」

 内緒、という風情で、立てた左の人差し指を口元に当てて見せる。薬指の指輪が鈍く光を反射する。  

「ほかのお客様もおられませんし、一勝一敗にもちこんだ、先生へのエールということで」

 勝負要素なんて、どこかにあったっけ?  


 首を傾げている私の横で寛ちやんが

「いや。彼女が誘いに応えてくれたので、俺としては二勝です」

 と、左手の指で“二“を表して。 

 いや? もしかして、Vサイン?

「おや、そこから?」 

「はい」

「先ほどの話からすると、うちの店が役に立ちましたか?」

 柔らかく微笑んだ気がするマスターの低い声が、

「撮影禁止の約束を初めて見た時は、『なんて酷い』と恨みましたけど」

 って寛ちゃんの言葉に、明らかな笑い声に変わる。

「でも、逆に誘うきっかけに使わせてもらいましたから」

 改めてお礼を言った寛ちゃんが、深々と下げた頭越し。豆を挽き始めたマスターが私の方を見て、にこりと笑う。

「よければ、お連れの方も気軽に来てくださいね」

「あ、はい」

 営業トークとはいえ、『来てください』と店の人から言われたのは久しぶり。

 顔を覚えられるような常連ってものに憧れはないし、どちらかといえば一期一会の軽さで買い物なんかは済ませてしまいたいほうだけど。

 ちょっと嬉しいかもしれない。


 お代わりを待つ間に、一つ。お菓子を手に取ってみる。

 しっとりとした歯触りとともに、ココアの風味を楽しむ。

「これは?」

「ブラウニーです。少し過ぎましたが、ホワイトデーの時期だけお出ししているんですよ」

 ふふふ。十年以上が経ったけど、ホワイトデーのお返しをもらってしまった。苦く終わった初恋が、きれいな思い出に生まれ変わったような気がする。



 喫茶店からの帰り道。児童公園と歩道を区切る街路樹に、桜っぽい木肌をみつけた。

「桜が咲いたら、どこかへ撮りに行きたいなぁ」

「あ、とうとうカメラを買ったんだ?」

「言っていなかったっけ?」

「うん、聞いてない。そうか。桜、か」

 少し考えるように、彼の歩調がゆっくりとなる。それに合わせて、私もペースを落とす。近づいて、しっかりと街路樹を観察。

 これは、やっぱり桜。蕾もそろそろ柔らかくなってきているかな?


「香奈さんなら、どこの桜を撮りたい?」

「少し遠出をして、楠姫城(くすきのじょう)の日本庭園かな?」

 西隣の楠姫城市との市境近く、桜が綺麗な日本庭園がある。昔、この辺りを治めたお殿様の別荘だったとか。楠姫城市が管理しているので、市の文化財として茶室などの建物も当時の姿で保存されている。まあ、彼からしたら、『ちょっと違う』のかもしれないけど。

 そこから足を伸ばした城址公園も桜の名所と言われている。

「寛ちゃんは? どこがいいと思う?」

「近場だけど、柳原西高までの桜並木も、なかなか」

 知ってる? って、首を傾げる寛ちゃん。

「桜並木?」

 柳原西高は蔵塚市では一番南に位置する高校なので、私の行動範囲外って感じ。成績的にも、ご縁がなかったし。

「駅から学校までの遊歩道が、見事な桜並木なんだよ」

「へぇ」

 それは、行ってみたいかも。

 思いつくままに、駅までの道のりで桜の名所を挙げていくけど。

 ただ一つ、問題点が。

「年度替わりなのが、ネックよね」

「うーん。たしかに。俺は持ち上がりだから……」

来年度(つぎ)は、二年生の学年団?」

 知りたての言葉を使ってみると、彼は一瞬、驚いた顔をして。

 くすぐったそうに笑った。


 そして私の方も、春休みは受験シーズンを終えて、新入塾生の獲得競争の真っただ中。 

 それが終わる前に学生バイトの入れ替わりもあって、ミスの起きやすい時期に入る。

 些細なミスが大きなミスにつながらないように、受講生に影響がでないように……とフォローをするのは、正社員である私たちの仕事になるわけで。なかなか思うように指定休を取ることができない時期は、桜の見頃をローカルニュースで伝えていても『思い立ったら吉日』って訳にはいかない。

 せめて、定休日がお天気に恵まれるようにと、祈るばかりだ。


 その日の別れ際、

「香奈さん、もし桜の写真を撮りに行けたら……いつか見せて欲しい」

 控えめに差し出された言葉に、私自身の欲が顔を上げた。

「寛ちゃんの作品も、見せてくれる?」

「じゃあ、その頃にメールするよ」

「うん」

 来月の指定休は日曜日だし、その後にはゴールデンウィークもある。

 その頃には、少しくらい仕事も落ち着いてくるはず。



 上司である教室長の異動で始まった新年度は、いつも以上に忙しくて。桜が満開を迎える四月の上旬は、休日出勤をする羽目にすらなってしまう。

 せめて……と、通勤途中の街路樹で一本だけの桜が、夜風に散らした花吹雪を携帯電話で撮っておく。

 三分咲きのうちに、柳原西高の桜並木を撮りに行っておいて良かった。


「この夜桜、良い……」

 やっと取れた日曜日の指定休は、四月の半ばを過ぎていた。寛ちゃんの職場近くにある、あの喫茶店で互いの作品を見せ合う。

「携帯で撮ったから、もうちょっとなんとか……って、思うんだけど」

 仕事帰りだったし、職場にデジカメを持っていく訳には いかないから、諦めたけど。来年は……来年こそは、自分で納得がいくような一枚を、モノにしたい。

「アスファルトと花びらの対比が、さすが。街灯も、良い場所にある」

「そう? そうかな?」

 構図を褒められるのって、やっぱり嬉しい。口元が笑むのを自覚して、照れ隠しの紅茶を一口。

 カウンターの最奥に座った私の前で、白い招き猫が左手を挙げて幸せを呼んでいる。

 あれ? 招福と招客って、どっちだったっけ? レジ横の黒い招き猫は逆の手を挙げてるし……


 そういえば、この店。店内に幾つも招き猫が飾られているせいか、近所の人からは『ネコの喫茶店』と呼ばれているらしい。マスターもそれを知っているのだろう。先月、貰って帰ったショップカードの片隅には、足先だけが白い黒猫のイラストが描かれていた。


「寛ちゃんの、これは? どこで?」

 どっしりと根を張り、枝ぶりも見事な一枚。背景の空は、薄雲がたなびく、明け方と思われる。

「笠嶺市の公園なんだけど」

 大学時代を過ごした街の名前が出てきて、記憶の片隅を引っ掻く。

 誰かの作品で見たことがある……かも?

 首を捻っていると、

「先生、俺も見せていただけませんか?」

 マスターの低い声が挟まれた。


「ああ、桜寿公園ですね。これは」  

 カウンター越しに寛ちゃんが渡したポケットアルバムを見て、マスターが口にした地名に、寛ちゃんが頷く。

「そうです、そうです」

 地元では知る人ぞ知るお花見スポットだと、聞いた気がするけど。

「マスター、行ったことがあるんですか?」

 この店からだと、ちょっと離れている。

「ええ。俺、笠嶺の出身なので……小学校の遠足で行きましたね」

 あら。この店、マスターの親から継いだとかじゃないんだ。



「柳原西高前の桜並木は、この木が親木だとか」

 『ありがとうございます』とアルバムを返したマスターが、解説をしてくれて。

 ソメイヨシノは確か挿し木でしか増やせないから、全ての木が同じDNAを持っているとか……聞いたことがある。  

 そんな豆知識を脳内で引っ張り出していると、

「これ、ですね」

 と、寛ちゃんが、私の方のアルバムをマスターへと差し出す。

「ああ、こっちも懐かしいですね。俺の母校なんです」

 笠嶺市から越境で柳原西高って……。

「マスター、めちゃくちゃ成績優秀じゃ……?」

 全県学区で受験ができるコースが柳原西高にはあるけど、県下トップレベルの偏差値で、かなりの難関校。

 うちの塾生で合格者が出たりしたら、広告に絶対載せるレベルだというのに、マスターは

「いや、それほどでもないですよ」

 さらりと謙遜すると、布巾を手にとった。



 この後も、ゴールデンウィークに寛ちゃんが撮ってきた、港町の歴史的建造物や、私が撮った菖蒲園の写真なんかを、寛ちゃんの休みと私が遅番が重なる日曜日の午前中、僅かな時間を利用して見せ合う。


 そして。

「香奈さん、文化祭に来ない?]

 寛ちゃんに訊かれたのは、五月下旬に掛かってきた電話でだった。

[気が早いね。秋じゃなかった?]

[五年くらい前からかな? うちも受験に力を入れることになって、六月に文化祭をしてる]

[おー、舞郷もとうとう進学校の仲間入り?]

 私が高校生だった頃も、市内有数の進学校である蔵塚南や柳原西は既に『文化の秋』に囚われず、一学期に文化祭をするようになっていたと聞く。手頃な偏差値で、大学進学率が半分をきるか……って感じの母校も方向転換をしようとしているらしい。

 仕事を通じて見ている感じでは、その効果は、まだ出てないみたいだけど。


[来月は、休みに充てられる中番が土曜日だから……]

 シフトとしては,問題ない。

[昔と違って、フリーパスで入れるなら行こうかな?]

 その辺りも、トップ校並みになったのかな?

[いや。相変わらず、事前申請がいるけどさ]

[だったら、ダメじゃない。生徒家族に限定でしょ?]

[卒業生で通せるよ?]

 確かに、卒業生ではあるけど……。

[私のことなんて、覚えてる先生が居るとは思えないんだけど?]

[いるよ]

[えー?]

 生徒指導の樋田先生……は、春で転出したんだっけ?


[俺が居る]

[寛ちゃん? それ、アリ?]

[写真部の卒業生は、顧問の俺を通すから]

[あー、そこかぁ]

 確かに、顧問と卒業生と言えなくもない……のかな?

[じゃ……じゃあ。お願いしよう、かな?]

[OK。だったら、卒業期生と住所を近いうちにメールして]

[卒業期生?]

[この春、卒業した子らが四十三期生。今年の俺は二年生だから、四十五期生の学年団]

[ああ、はいはい。分かった。そのことね]

 修学旅行だったり、受験だったり。学年を挙げてのイベント事には必ず出てきたわ。舞郷高校 三十ニ期生って。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ