8話
僕は居候をしている身だ。だからできる家事はできるだけ行うようにしている。
主に洗濯と掃除、あと皿洗い。
まあ、この家に基本的に、あの人はいないから、必然的に僕がそういった家事をする事になった。
そして。あの人がこの家に基本的にいないせいで、まだ6歳であるフルール様が独りぼっちでおとなしくする事を強要されてた。
が、僕がこの家に居候させてもらう事になったため、フルールがかなり僕と遊ぼうとしてくる。僕としてもロリからのお誘いを断る理由はないのだが、いかんせん僕は男だしフルールとは倍ぐらい歳が離れているしやっぱり男だしで。一体全体どんな遊びをすればいいのかがわからない。
「ねえ、にいちゃん、どんな遊びする?」
そんなに目を輝かせて質問してこないで欲しい。僕にはその最適解を導き出せない。
大前提として。男と女とでは、遊び方と言うのが大きく異なってくる。基本的に男は服を泥だらけにするような遊びが好きであり、女はおままごとやお料理ごっこ的なのがが好きなはずだ。まあ6歳だとかなら、女でも男っぽい子もいれば、男でも女っぽい子もいるし、どっちがどうってのはないのだが。
でもやっぱり、男女で好き嫌いは別れる。
けど、そもそもとして。僕は16だ。そんな大昔に好きだった遊びとか、憶えてないし。仮に憶えていたとしても、僕は男であり男ばっかのグループの背後を追っていたような人間だったため、ヒーローごっこ的なあれをしていた記憶はあるが、果たしてそんなごっこ遊びは女の子にウケるのかどうか。いや絶対にウケない。てかヒーローとか、こっちでは伝わるのかさえ危うい。
まあそんな訳で、前まではフルールは何がしたいのか聞いて凌いでいたのだが、もうそろそろ自分のしたい事は一通りやりつくしたのか、僕がやりたい事で良いと言ってくる始末。いやいや、僕としてはロリと同じ空間でお喋りできるだけで満足なのだが、まあそんな事を言っているのではない。
「かばんを漁ってみるか」
僕が日本から持ってこれた荷物は、すべて学校の登校に用いていたかばんに詰まっている。だからなにか面白そうな物も、このかばんに入っているかもしれない。
けどまあ、所詮学校に持っていけて尚且つ大きすぎず没収もされない程度の物しかない。電マだとかローターだとかが入ってはいたが、まあうちの学校はそこまで校則も厳しくなく、荷物の抜き打ち検査なるものは存在しなかったため、入っていたことさえ忘れていたのだが。
まあでも、あれらは例外。基本は、そんなに重たくないような物が、このかばんに入っている。
「軟式のテニスボール。野球ボール。卓球の球。……、なんでこんなのが入っているんだ?」
いじめられていたのかな。でもいじめにしては、こう、緩くない?かばんの中にそれぞれ一つずつしか入っていない。
あ、もちろんだけど、僕が入れた訳ではない。こんなものは僕には必要のないものだ。だから入れたとするのなら、僕以外の誰かだが、まあ日本ではない世界にいる以上、誰が入れたのかわかる事はもう二度とないのだろう。
「次は、花札。……、持ってる僕すらちゃんとルール憶えてないけど」
いやまあこの花札には説明書もあるけど、まあ僕すらちゃんとルールを憶えていないゲームをしても、あまり面白くはないだろう。
「おっ、トランプがあるじゃん」
このトランプは、秋月がマジックを披露する時に持ってきて、もういらないからと貰ったものだ。つまるところ、開封して一回しか使われなかったトランプ。
「じゃあこれを使って遊ぼう」
「でも私、このもじよめないよ」
「あー。考えてなかった」
さて。どうしようか。
「じゃ、今日はマジックをするから、見ておいて」
「わかった」
ま、僕だってそんな凄いものができる訳ではないが。こんなしょぼプレイヤーのマジックで満足してくれればよいのだが。
_____________
「じゃ、今日から魔法の練習だな」
今の今まで、魔法を使ってこなかった。まあ、言ってもまだこっちの世界に呼ばれて、1か月も経っていないので、魔法が使えない事での影響ってのはなかったが。
「と、言ってもだな。生憎私も魔法は苦手でな」
「へ?」
「これと言ったアドバイスをしてやれない」
いや、まあ、1か月経ってない程度の関係性ではあるものの、それでもそれなりに人となりを知る事ができる期間はあった。
だから、僕はこの人からまともなアドバイスを受けられるとは思っていない。
剣術も、最近は素振り以外にも剣の振り方と言うのを教わる機会があった。だが、基本的にこの人の教えるは、「ぶんっ!でくんっ!だ」とか、よくわからない擬音語を使った説明なせいで、何をどうすればいいのかわからず、結局僕が自分で考えて自分で適当に剣を振る事になっていた。
だから、この人から、ちゃんとした教えを受けられるとは思っていない。いなかったのだが、まさかこの人も魔法が苦手だとは。あり得ない程わからない説明が、更に訳の分からない事になる。
「魔力を一か所に集め、使いたい属性の名前を言えば、それなりに魔法は使えるはずだ」
「マシな説明が出て来た」
ぶんっ、とかくんっ、とかみたいな訳の分からない説明がやってくると思っていたせいで、思っていた数100倍マシな説明が飛んできたのはびっくりしたのだが。
その説明、結局のところ、訳が分からなければ意味がない。そして僕には、魔力と言うものがなんなのか知らない。
「……、魔力ってのは、魔法を使うエネルギー的なあれです?」
「おっと、魔力の説明がまだっだった。まあ簡単に言えばそれで良いが、基本的な魔道具を使う燃料にもなるし、自身を強化することもできる。強化も魔法も自分で魔力を認知しなければ使えないのだが、魔道具を使う分には自分が魔力を認知していなくても使える。王宮にもあっただろ。スイッチを押すだけで光がついたり、レバーをあげれば水が出たりするものが。あれらが魔道具の一種だ。それらは問題なく使えただろ?」
「あれって魔道具とか呼ばれる代物だったんだ」
知らなかった。いやまあ知っていた方がおかしいか。異邦人である僕が、そんな知識を持っていて、当たり前のようにそれが魔道具だと知って使っていたら、それはもうエスパーとかのレベルを超えているだろう。
「まあとにかく。まずは魔力を認知するところからだな。魔力はな、瞑想をしていれば、こう、ずぎゅんと、ぽわぽわとしてきて、そのホカホカが魔力だ。一回認識してしまえば、あとはそのトロトロな魔力を操れるようにするだけだ」
……。ぽわぽわなのかホカホカなのかトロトロなのか、ハッキリさせてほしい。
「とにかく、しばらくは瞑想。それでも無理なようなら、滝行だな」
「え」
「じゃ、分かるようになったら教えてくれ。魔法の練習はそれからだ」
「え」
え
え
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