6話
なんとか、言葉をひねり出す。
「ロリコンで誘拐なんて、救われないですよ?」
「ロリコンでも無いし誘拐した訳でもない。義妹だと言ったろ」
「……。犯罪者扱いの人が、誰かと一緒に過ごしてるってどうなの?」
「詳しい話はまた後でするかと思うが、とりあえず言える事は、その犯罪者扱いを受けている義理の姉を持っているフルールが、どんな目に合わされるかわからないからな。こうして、自分の手で守るに限る」
……。理解はできるとも。
ドラマとかでもよくあるもんね。犯罪者相手に、「こんな事知ったら、田舎にいるお前の母ちゃんはどう思うよ!」みたいな事を言われて、改心する、みたいな。結局人を動かすのって、その人にとっての大事な人が絡む時だから。
だから、向こうが容赦なしでこの人を捕まえようとした場合、義妹を人質みたいにすれば、捕まらざるを得なくなる。本当に義妹の事を案じているのなら、だけど。
だからこそ、そういう弱点みたいな感じのは見せたくないのだろう。
けどやっぱり、隠居してる人間が、家族と暮らしてるってのは、想像と違うというかなんというか。
「フルールです」
「あ、はい、山田太郎です」
突然喋ったらびっくりしちゃうじゃないか。お兄さんびっくりしちゃう。
「よし、自己紹介も終わったし、脱げ」
「はい?」
「良いから脱げ」
……。逆レ〇プ?
「マジで?」
「早くしろ」
「……」
いやまあ別に、ぽっちゃり体系とかでも無いし、女でもないから、そこまで脱ぐことに抵抗は無いが。うん、別に嫌じゃないけど。
……。え?ロリの前で、ですか?それは流石に、はぁはぁしちゃうというかなんというか。
「おら、さっさと服を脱げ。見極められない」
「あ、服だけで良いのね」
じゃあ別になんともない。
「うーん。普通だな。引きこもっているような人間のような肉付きじゃないが、かといって戦闘ができるようなレベルでもない。普通だな」
「見ただけでわかるものなんです?」
「まあ、私の目は少々特殊だし、大まかな評価ならこの目が無くともできる。単純に筋肉がしっかりついているかいないかは、お前でも判断できるだろ?」
「ま、まあ」
じゃないと、自分で鍛えるって事ができなくなるし。あいや、誤解を招きそうだし言い直す。鍛えても、筋肉がついているのか判断できなければ、達成感が無く、筋トレだとかが続かない。
「私はそれの熟練度が少し高いようなものだ。まあさっきも言ったが、目が特別だから、その経験もあまり意味はないが」
「は、はあ」
目が特殊とは一体どういった意味なのだろうか。
「そうだな。戦い方を学ぶ必要もあるが、先に筋トレだな」
「あの、やっぱり僕なんかは鍛えなくてもいいんじゃないのでしょうか」
「まあ、強制するつもりは無いが、恐らく鍛えなければならない状況だ。いかんせん魔王が戦争を仕掛けて来たせいで、魔物も活性化し、この付近でも魔物は見るようになってしまったし、なによりお前自身で暗殺者から身を守る必要があるだろう」
魔物に殺されたくないのなら強くなれ、は分かる。まあなんでそんな魔物がいるような場所に家があるのかは分からないが。
けど次はおかしい。素人だからおかしいと感じてるのかもしれないが、絶対おかしい。
「暗殺者から身を守るって、強くなって無理じゃない?」
「まあ、強くるだけでは意味がないな。が、しっかりと鍛錬を積めば、意識さえしっかりとしていれば、飛んでくる物の気配を察知し、躱す事もできる」
「あのー、それは僕のような平凡な人間にはできない事だと思うんですけど。天才だからできる事だと思うんですけど」
「とにかく。死にたくなければ死ぬ気で鍛えろ」
ゴリ押された。
「それと、カードを見せろ」
「カードって、ステータスの?」
「そうだな」
「あのおっちゃんに言われたんだ。信用できる人以外に渡すなって」
「良いから見せろ」
……。僕、この人に隠し事ができない気がする。
どういう訳か、僕のズボンのポケットにカードを入れている事がバレており、無理やりポケットに手を入れられ、ステータスカードを引き抜かれた。
乱暴なのはいけないと思います。はい。
「……、なんだかな」
「なにかあったんです?」
「いや、そうだな。パラメータの方は、まあ鍛錬を積めばなんとでもなるが。魔法の得意属性が無ければ、特殊能力もない。まあ特殊能力の方も、別に知らぬ間に追加されてるようなものだが、大抵は何かしら特殊能力があるようなものだが」
「えっと、魔法に、特殊能力?なんすかそれ」
うんまあ、魔法も特殊能力も、ゲーマーとしては、もちろん知っているとも。まあ説明するのは無理だけど、魔法はあれ。メラゾーマではない、メラだ、ってなあれ。特殊能力は、まあその名前の通りの特殊な能力だろう。
そう、別にそれらは知っている。知っているが、え?そんなものがあるんですか?
「魔法は、特別な才能がない限り、火水風土雷の五つの魔法を使う事ができる。特殊能力は、簡単なので言えば、念力だとか透視だとかを使えるようになる。そして毒だったり催眠だったりの、魔法と特殊能力の間のものも存在している。
そして私達は人間だ。得意不得意が存在する。誰しもが得意な魔法があれば苦手な魔法がある。が、どうもお前は、この五属性の魔法、どれも得意ではなく苦手でもない。良くも悪くも普通で特別だな。そして特殊能力の方だが。大抵の人は持ち得ているそれを、お前は持っていない。まあ先にも言ったが、別に後から追加される事も普通にあるが、最初から一つもないというのは、あまり聞かないな」
「ほお」
なるほどなるほど。
わからん。
「じゃあ、ベイルさんの最初の特殊能力って何だったんです?」
「私は、透視の一種だ。さっきもサラッと触れたが、特殊な目をしていると言ったな」
「ああ、言ってましたね」
「いわゆるところの特殊能力であり、魔眼の一種でもある。と言っても、残念すぎるぐらいには残念な能力しか使えないが。さっきも見せたが、体を見れば、どのぐらい鍛えられているのかがわかったり、食べ物が美味しいか不味いかがわかったりする。まあ他人のそれより少し詳しくわかるんだが、結局それらは普通に見るだけでもわかるようなものだ。実質、ないに等しい能力だったよ」
「そうなんですか」
折角の透視って言う能力でも、服を透けてみる事ができないなら、いらないかな。
「だが、そんな私でも能力自体はあった。別に最初からない事もあるが、あまり聞かないからな。なんともまあ、何から伸ばせば良いのかわからん奴だな」
「どうも」
うん。パラメータもね。全部70で統一されてたから、どれがいいとかなく、どれも普通だからね。余計に困るよね。
まあ、魔力の値が低いのに、どちゃくそ優秀な魔法を持っているとかよりかは、マシかもしれないな。なんたって宝の持ち腐れになる訳だし。
「まあ、どれも苦手で無いのなら、どの属性もそれとなく扱えるようにしておくべきだな。得意が無いせいで強力な魔法は使えないかもしれないが、どれもそつなくこなせるのは武器になる。特殊能力の方は、なにかしたところで、別に得られるものでもないし忘れろ。こういうのは忘れた時に増えているものだからな。剣術は、まずは素振り100回こなしても疲れなくなる程度まで体力と筋力をつけてからだ。なに、時間はあるさ。焦らず鍛えて行こう」
鍛えるのは嫌だ嫌だと思っていたが、なんか色々説明を聞いてたら、ちょっと面白そうだと思ってしまった。てか普通に魔法とか使えるなら使ってみたい。
「よし。じゃあご飯を作るか」
……。急に話が変わった。
けどまあ、時間も時間、……、スマホの時計がちゃんと機能しているのなら、今は4時半。ちょっと早くない?
「これ持て」
「ナニコレ」
「見ての通りナイフだ」
「はぁ」
無駄に斬り味がよさそうなナイフを渡された。
「よし、行くぞ」
うん、どこに?
サブタイトル考えるのが面倒で、これからはただの数字でいきます。まあ付けたくなったら付けます。要は気分で数字かタイトルがあるか変わります。そして別にタイトルがあっても、別に重要な話って訳でもないです。