透けてる助手はタスケテほしい
「犯人は……貴方だ」
探偵の私は、助手に目配せをした後、証拠を出し揃える。
証拠の数々を前に、容疑者の方々へ無罪の証拠、そして残る一人へ、犯人である事の証拠を指し、語っていく。
首を垂れ自白した犯人を、駆け付けた警察が連行していく。
これで今回の事件は解決だ。
「いやあ、今回は随分と働いてもらったね。助手くん」
「望んだことではありましたが、それにしてもこき使い過ぎですよ! ホント!」
「すまない、とは思ってるんだ。しかし、これは助手くんの為でもあったからね」
「……ありがとうございます」
犯人には余罪があり、それが明るみに出れば、助手くんのこれからも大きく変わって行く。
そして私と助手くんとの関係も、この事件まで、という事だ。
「有能な助手が居なくなったら、探偵さんは困りません?」
「まあね。しかし、私は心晴れやかな助手を泣きながら引き留める程、無粋ではないつもりだよ」
「……探偵さんと過ごした日々は、嫌いではなかったですよ。そして、本当に……ありがとう」
そうやって私と助手くんは、最後に笑いあった。
◇
「今回もその助手、とやらの活躍があったんですかい?」
馴染みの警部補が事件の報告書を差し出しながら、コーヒーを一口すする。
「証拠探しから見張り、怪しい会話のメモまで、随分と手伝ってもらったよ」
「しかし、何度聞いても前代未聞ですよ、幽霊を助手として使う探偵だなんて」
そう、私は幽霊と意思疎通が出来る探偵だ。
幽霊ならば、霊感の無い人間には感じる事は出来ないし、尾行や見張りにうってつけなのだ。
「こっちとしては難事件を解決してくれるんで、願ったり叶ったりなんですが……その、探偵さんが呪われたりする事は無いんですかい?」
「ま、そういう事もあるのかもしれない。けれど、私は、助手を探しているんじゃない。助手という声に耳を貸しているだけなんだ」
助手という漢字2文字を音読みすれば<じょしゅ>だが、訓読みをすれば<タスケテ>だ。
私が雇う助手は、助けてくれる人でもあり、助けを求めている人でもあるのだ。だから、彼らの後悔を晴らす為、事件を解決している。
『あのう……こちら、幽霊の依頼も受けていると聞いたのですが……』
「……うん……ええ、受けておりますよ。ですが、私の仕事を貴方に……助けて頂きますよ」
「んっ?えっ、探偵さん誰と話してるんです?!」
先ほどお気に入りの紅茶を淹れたばかりだが……温かな内に飲むのは、また難しそうだ。
この短編の続きみたいな短編を書きました。上記シリーズから見る事が出来ます