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90話 終結

区切りの都合上短めです、すみません……!

 秘匿聖堂での戦い。

 大司教グレゴリオとの遭遇。

 想像だにしない邪悪の直視。グレゴリオの撃破。

 その後のラプラスの急襲、教皇の立場。ユルゲンの裏切り、クロノの正体。

 ローズの参戦、オルテシアとの因縁、クロノの魔法。


 ……あまりにも、多くのことがありすぎて。全てを体験したはずのエルメスたちですら全貌を把握しきれないほどの多くの状況変化の、その果てに。


「なので……ここは、お互いに引くという形でどうでしょう?」


 クロノの、そんな提案。

 桁外れの魔力……それこそローズに匹敵するほどの威圧を背にかけられたその問いに。


「…………、くそ」


 ローズは、悪態を突く。

 分かってしまったからだ。……現状の戦力差や状況を加味した上では──その提案を呑むしか、最早自分に道は残されていないということを。


「──皮肉なものですね、『空の魔女』」


 そんなローズの葛藤を見透かしてか、クロノが穏やかに続ける。


「貴女の強さは、その血統魔法が示す通り誰よりも自由であることだ。自分に関わるしがらみの全てを捨てて、己の魔法のみを探究し続けたからこそ得られた強さ。

 今回も、それを存分に発揮して。周りを何も考えず向かってこられたらこちらも相応の被害を覚悟しなければならなかった。けれど──」


 今は、そうではない。

 ローズは今、弟子を取ってしまっている。


 弟子のためという動機を得てしまっている。弟子と、それに関わる人間を優先するようになってしまっている。

 ……たとえそれが、この場においては圧倒的な足手纏いだったとしても。


 故に。随分とベタな言い方になるが、今のローズは……


守る人間が(・・・・・)できて(・・・)弱くなった(・・・・・)

 別に、人は一人の方が強いなどと断言するつもりはありませんが。少なくとも貴女は──一人であること以外の強さを磨いてこなかったことは間違いない。

 ……ええ。本当に、助かりましたよ」

「……上等だ」


 事実を述べているだけではあるのだが……それでも許容できない言葉を前に。ローズは静かな声と共にクロノを見据える。


「これ以上話すことは、ありませんかね。向こうも見逃して下さるみたいですし……退散させていただくことにしましょう。ラプラス」

「あいよ」


 そんなローズから視線を切ったクロノが、傍のラプラスを見る。言わんとするところを読み取ったラプラスが、撤退の用意を始め──


「ちょっ、ちょっと待ちなさい! ここで引く気!? 許さないわよ、せっかくローゼリアに出会えたのにあんたたち──!」

「はいうっせぇ」


 ──それを確実に許さないだろう教皇オルテシアの反抗すら読み切って。即座にオルテシアを黒い結界で覆って閉じ込める。


「待ち人に出会えて狂喜乱舞してんのは分かるが落ち着け、この場でおっぱじめても誰にもメリットはないってことくらい分かってんだろお前も」

「──ッ! ────!!」

「安心しろ、わざわざここで始めなくてもどうせそこの魔女サンはまた俺たちんとこに来るよ、あんたを無視して逃げるような真似はせんさ。だって……最初からその気なら、魔女サンは端からこの国を出てたはずだ」


 暴れるオルテシアに、淡々とラプラスは続ける。恐らく聞こえていないだろうが関係ない。並行して抵抗能力を奪う『拒絶』の力をかけ続けている以上いずれ大人しくなるだろうからだ。

 その予想に違わず徐々に小さくなっていく抵抗の行動を見据えつつ。


「いずれまた再戦はするだろうから、今は寝てろ。

 というか、ここであんたに魔法を使われても困るんだよ。何せあんたは──」


 ラプラスは、ローズの方を見て最後に一言。



「──()空の魔女(・・・・)()ためだけに(・・・・・)俺たちが用意した切り札だ。

 わざわざここで手の内を見せる必要はねぇ。大暴れは、また後にとっておきな」



 ──俄には信じがたい、言葉と共に。

 オルテシアの動きが完全に止まり、ラプラスが黒い結界ごとそれを回収する。


「…………わざわざ教えてくれるとはな」

「こう言っときゃ頭の良いあんたは警戒すんだろ? ……教皇サマの魔法を大凡察してるあんたなら、これをブラフと断言するわけにもいかねぇからな」


 ローズの追求にも、淡々とそうした理由を返す。

 ラプラスは最早完全に冷静さを取り戻した様子で、変わらず言葉は多いが意味があり、立ち居振る舞いにも隙はない。


「んじゃ撤退だ、ボス。エスティアマグナはこのアホ教皇が放って出てきたらしいが、その後きっちり部下が回収した。さっさと戻って始めようぜ」

「ああ」


 言葉を交わしつつ、二人が悠々とその場を去る。


 ……そして。

 静寂の中、唯一残った──この場で残るべきではない存在になってしまった人間は。


「……お父、様」

「……」


 ユルゲン・フォン・トラーキアは。

 未だ信じられない、信じたくない表情で自分を見る娘と、失望し切った能面のような顔で自分を見る旧友に、軽く視線を向けた後。


「……これ以上」


 静かに、語る。


「これ以上、ひどいものを見たくないのなら──今すぐに、国を出ることをお勧めするよ」

「え──」

「私たちが、どうしてこのタイミングで正体を明かしたか。明かしても、問題ないと判断したのか。……よく、考えてみると良い」


 それだけを、語った後。

 ユルゲンも、身を翻し。それ以降は何も語ることなく──決別の歩みと共に、暗がりの中に消えていくのだった。




 その後。

 ローズの先導によって、エルメスたちも秘匿聖堂を脱出し。

 秘匿聖堂の外──未だ教会兵との戦いが続いていた状況の中、攻める理由が無くなったためルキウス指揮のもとどうにか兵士たちをまとめて脱出し。


 大司教、攻略作戦。

 目標、大司教グレゴリオ、大司教ヴァレン、大司教ニコラ──全員撃破。

 大司教派閥は壊滅し、エルメスたち第三皇女派の道を阻む目下最大の敵は、完全にいなくなった。


 秘匿聖堂での戦いは──当初の目的を完璧に果たし。

 この上ない成功で、幕を閉じたのだった。

次回、戦いの後のお話。

子供たちが各々どうするのか、重要エピソードになる予定なのでお付き合いいただけると嬉しいです!

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― 新着の感想 ―
[気になる点] >「んじゃ撤退だ、ボス。エスティアマグナはこのアホ教皇が放って出てきたらしいが、その後きっちり部下が回収した。さっさと戻って始めようぜ」 ライラとリリアーナがその場に取り残されてたはず…
[気になる点] ほんとにこの章はボリュームが桁違いですね 起承転結で言えば承の部分かな? ユルゲンパパの裏切りとか転といえなくも無いけど・・・ これはリリィのターンなので彼女の転は訪れてません。 こ…
[一言] 第三章終了か…? でもそう考えなくても厳しいな… まず、政治的な揉め事が起こった場合に、 当主のユルゲンが居ないからトラーキア家の権力が使えなくなる可能性が高い。 しかもユルゲンが居なくなっ…
2022/05/29 18:11 退会済み
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