表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/37

三人は今、改札の外。ステーションの入り口脇にいる

 三人は今、改札の外。ステーションの入り口脇にいる。

 オフィス街に近く、しかも高等学校の最寄りでもあるこの駅は立派。

 二十人くらいでGメンウォークしても問題なく通れる。

 

 ん? Gメンウォークが解らない? 

 あれか。君は少々流行に疎いタイプなのか? 

 まあ、なんでもかんでも流行りものに飛び付くのも、節操はないと呆れるがね。

 ほら、君の世界のティヴィプログラムじゃないか。

 正式タイトルは解らないが、Gメンなんちゃらとかいうドラマ。

 オープニングで、登場人物が一列に並んで歩……。

 まあいい。つまり、横並び歩きだ。

 

 補修したギアを義足に戻すと、老婆は立つことができた。

 念のため、駅員とティータニアが外まで連れ添ったのだ。

 

 時刻は八時四十五分。この世界での業務開始は九時半が主流である。

 周囲に、通勤客の姿はほぼなし。気の早い礼装の学生を少し見かけるくらい。


「目は大丈夫?」

「はい。目薬も打ちましたし、直ぐに充血も治るはずです」

 

 へらへら笑いながらティータニアが、「こういうの慣れてますから」と継ぎ足す。

 

「駅員さんも、大丈夫かしら?」

「ご心配には及びません。それよりお客様に何もなくて良かった」

 満足そうに青年が頷いた。


 名誉の負傷みたいな雰囲気を出してはいるが、お前さんは何かしてたのか?

 

 凄まじい閃光だったが、それは結界の内側だけの話。

 ティータニアの結界は、光を見事に減退させた。

 周囲を歩いていた人には、「今、ちょっと光った?」くらいの程度だった。

 ちなみに防音効果も完璧。

 誰にも気付かれる事もなく、ふたりは悲鳴をあげながら地面を転げ回る事ができた。

 貴重な経験だったろう。

 

「お婆ちゃん。その、あの」

 真面目な表情を作るティータニアに、老婆は表情を緩める。


「ええ。今日の夕方にはメーカーさんに修理をお願いするつもりよ。だから、安心してね」

 

 ティータニアは安堵した。

 

 修復したギアだが、大きさは一ミリ未満の誤差で及第点。

 しかし、強度は九十三パーセントに低下した。

 九十五を最低ラインと考えていたティータニアにとっては大失敗だった。

 

 ギアの破損分を復元するためにティータニアがチョイスしたのは複製魔法だった。

 元素結晶を変成し、オリジナルに近い金属をコピー。

 それを溶解した金属に混ぜ込み、破損分を戻した形で整形する。

 破損したところだけを継ぎ足したり、残っている部分を変形させて引き伸ばすよりは良策と考えたからだ。

 しかし、最後の最後で複製魔法が不完全に発動してしまった。

 結果、少し金属が足らない状態で、形を戻したために強度不足に陥った。

 

 独唱同調ソロ・シンフォニーが途絶え、不完全同調になったのが原因だが。

 

「私達がつい見とれてしまったから」

「それは違います」


 食い気味で否定した。

 

「魔法の使用はありとあらゆる状況を想定し、使わないとダメなんです。

 アクシデントが起こったから、失敗しましたではダメなんです」

 

 不完全な素材を混ぜ混んでしまった事で、リトライが出来なくなった。

 時間をケチらず、きちんと金属成分をスキャン。正しく精製すべきだった。

 四十分あればできるはず、ギリギリ間に合っただろう。

 後悔しかない。


「ダメなんです。起こった事は取り返せないから」

 つい繰り返していた事に気付いて。


「ほら、賢者ヒモロギ様も、そんなことを言ってますよね」


 へらっと表情を崩し、「えっと、なんだったかな」と言葉を揺らす。


「いたずらに魔法を使うなかれ。軽はずみは鉄拳となり、自らに降り戻る。だったかしら」

 老婆が引き継いだ。

 

 賢者ヒモロギ。

 現代魔術の父と呼ばれるだけあって、含蓄がんちくのある言葉を多く遺している。

 創作も多いが、この言葉はオリジナルだ。

 魔法の使用に対する戒めのひとつ。とされているが現実は違う。

 

 ある日、ヒモロギは火炎魔法を利用したイタズラを考案し、それを仲の良い助手の女性に仕掛けた。

 イタズラは大成功。

 助手の綺麗な黒髪はチリチリのアフロになった。


 助手は激怒した。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ