おつぱいが爆死した
そうそう、この【ラブロマ】との出会いだったよね。
とにかくどハマりした私は、推しに推しまくった人がいた……のだけれど。
「あれ、思い出せない…」
うーーん。誰だっけ。あれだけこの人は攻略してやるううう!!!って意気込んで、何度もバッドエンドを経験しながらやっとのことでハッピーエンドに持ち込んだあの人……。
あぁ、ダメだ。何だか混乱気味で、っていうかそもそも転生したんだ!ふぅん!って受け入れられ……
大体、私の声ってこんなに高くて幼女声だったっけ。
んんーー?あれれれ〜?大☆混☆乱☆
腕組みしながらボケェっと掛け布団を見つめる。この質感はシルクだろうか。
すべすべとしていて、包み込まれたらすぐに眠気に襲われるいつものお布団。
ちらっと上を見上げると、天蓋の付いたベッドであることが分かる。
ははぁ、なるほど。これは貴族だな。……って、あれ、私はダレだっけ?
パート主婦……もとい、転生とやらをしてしまった謎の自分の腕組みを解いて掌をグーパーグーパーとしながら見つめた。
あら、可愛いおてて。思いの外小さく柔らかな肌に、思わずふふっと笑みがこぼれる。
なんだこの、小さい子特有の可愛らしさに溢れる、猫の肉球のようなぷにぷに感は。
……はっ!
恐る恐る胸に手を当ててみる。
……んんんんっ!?
「な……な………ないーーーー!?!?」
一応当時は大きすぎず、かと言って小さいとは言えない満足なブツを2つ程こしらえていた……のに!なのに!
何故!何故消えた!!なんでぇぇぇえぇぇ!!?!
――トントン
混乱を極め、悲しみと絶望の淵で涙を拭っていると、どこからか扉を叩く音と同時にどうしましたか!?と驚いた様子の女の人の声が近付いてきた。
「お嬢様!どうされましたか?どこか苦しいのですか?」
声の主を見上げると、そこには心配そうにこちらを見下ろしながらオロオロとする女性が居た。メイドのサヤだ。
「サヤァ……」
ぐすんぐすんっと泣きながら、私はサヤの顔を見る。
はい!と、私の声に耳を傾けようと、私の顔と同じくらいの高さに顔を近づけるサヤ。
「あのね、おっぱいが……」
「お、お胸がどうされましたか…?」
眉をへの字に下げたサヤに、私は心からの絶望を叫んだ。
「おっぱいが消えちゃったのぉぉおぉぉぉ!!!」
と、同時に溢れ出る涙を堪えきれず、わぁぁっと声を上げて泣き始める私に、サヤはおろおろしながらも背中を擦りながら何か言葉を選んでいるようだった。
「お、お嬢様。大変恐縮でございますが……」
「なによぉ…グズッ」
「お嬢様はまだ8歳でございます。平均的なサイズでございます。更に、特別まだ胸を痛めるようなお年ではないと思われますよ」
主人の体の異常が乙女の病?だと分かった途端、安堵で少し微笑むサヤに、私はぶんぶんと首を振った。
「違う!違うの!本当に消えたの!もっと大きかったの!こんなツルペタじゃなかったのよぉ!!!」