第九十三章・いざ夏合宿へ!<前編>
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第九十三章・いざ夏合宿へ!<前編>
うちと省吾くん、それに雪枝先輩と野毬先輩の四人で、電車に揺られている。
座席は向かい合わせに四人分、確保していた。
大きな荷物は上の網棚に置いている。
小さなバッグなどは通路の邪魔にならないように、寄せて置いていたけれど、車両にはほとんど乗ってる人がいないため、まるで貸し切りのようだった。
うちたちがなぜ電車に乗ってるかというと、前に雪枝先輩が立てた合宿プランで、一泊二日の温泉宿へと向かっていたからだ。
うちは合宿なんて初めてだった。
部活に入ると合宿なんかもあるのだなと思った。
うちは中学の頃は帰宅部だったので、そういう部活のイベントという経験がない。
なので、うちは少々気負っていた。
省吾くんはどうなのだろう?
「省吾くん、合宿の経験ってあります?」
「え?あるよ」
「そ、そうなんですか…。うちは初めてです」
「僕は合気道教室に通っているんだけど、子供たちの引率を手伝って近くの民宿にお泊りさせたこともあるからね」
そうなんだ。
うちは省吾くんの意外な一面を知った。
「海さんは?」
「うちですか?うちはまったく、合宿なんて行ったことありません」
「なら、今回が初めての合宿なんだね」
「はい」
うちと省吾くんは、すでに打ち解けていた。
もううちらは、キスをした仲なのだ。
うちにとっては今年最高の思い出となった。
大事な大事なファーストキスだ。
雪枝先輩がうちに話しかけてくる。
「海、アンタ顔がニヤケているわよ。どうしたの?」
「え、そうですか?」
「何、思い出し笑い?キモいんだけど」
キモいとはひどい!!
そんなに顔に出てたかな?
恥ずかしい。
うちは思い出すのをやめた。
「アンタたち、もうキスくらいはしたみたいね」
雪枝先輩が言う。
エスパーですか?
どうして分かっちゃうの?
「どうなの、海?」
グイグイ来る雪枝先輩。
もう勘弁してください!
分かってるならこれ以上突っ込まないで。
「しましたよ。キス…」
うちがそう言うと、省吾くんがむせるように、分かりやすい反応を見せる。
「へー。どこで?」
「観覧車の中でです」
「観覧車?遊園地にでも行ったの?」
「はい。デートで」
「やったじゃん!キスの味はどうだった?」
「先輩は知ってるんでしょ?キスの味くらい」
「人それぞれ違うものよ。で、どうだった?」
「どうって…、特には」
「まさか唇同士、触れ合うだけのキス?」
「そうですよ?」
「なーんだ。大人のキスじゃないってことね。つまんない」
先輩にとってつまらないことでも、うちにとってはロマンチックな瞬間だったんですけど…。
まぁ、それは言わないけれどね。
ホラ、省吾くんが照れてる。
うちは冷静だった。
「まあ、最初の難関はクリアしたってことね。良かったわね」
雪枝先輩はうちに賛美を送った。
クリアとか、ゲームみたいな言い方はしないでほしい。
長い乗車時間に退屈を感じたのか、うちは眠くなってしまった。
電車は時々、駅に停車するけれど、それでも時間をかけて、目的地へとうちらを運んでいった。
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