第八十四章・夏祭り<中編>
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第八十四章・夏祭り<中編>
うちと省吾くんが出店を回っていると、私服の絹代ちゃんと千百合さんが一緒にいるのを見つけた。
「絹代ちゃん、千百合さん」
「ああ、海と渡辺くん。よっ、ご両人!」
と、絹代ちゃん。
夫婦ではないです。
「省吾も。二人で夏祭りデート?」
「ああ、うん」
照れるように省吾くんは千百合さんに言う。
「お熱ぅございますわねぇ~。手なんか握っちゃって」
からかうように千百合さんは言った。
反射的にうちと省吾くんは手を離し、離れる。
恥ずかしさの方が勝ったようだ。
「暑いの間違いだろ。今日は特に猛暑日だしな」
省吾くんは千百合さんに、強く言った。
千百合さんに対しての省吾くんの態度は、うちへの態度とはまるで違った。
これも省吾くんの一面なのだろう。
「一緒に回る?どうせもうすぐ花火の時間だしさ」
千百合さんが言ってきた。
「バカ、千百合!二人の邪魔をしちゃ悪いでしょ」
と、絹代ちゃん。
「邪魔はしないからさ」
「そういう問題じゃないの。ホラ、もう行こう!」
絹代ちゃんは千百合さんの腕を掴み、引きずるようにうちらの前から離れていった。
気を遣ってくれてるんやわぁ。
ごめんね絹代ちゃん。
「じゃあ、僕たちも行こうか」
「はい!」
うちは出店で夏祭り定番のスイーツ、かき氷イチゴ味を省吾くんに買ってもらうと、それを先がスプーンになっているストローで、シャクシャクと食べる。
省吾くんは虫歯にしみるからと、かき氷は遠慮したようだ。
虫歯は治さないといけませんよ?
うちたちが人ごみの中を歩いていると、今度は顧問のさっちゃん先生に出くわした。
たぶん見回りだろう。
生徒が節度を守って遊んでるかを見に来ているのだと思う。
さっちゃん先生はうちらに気が付いた。
「あらあら、お二人さん。ご両人」
だから夫婦ではありません。
「ちゃんとコンドームは持ってきた?あと、場所は選んでしなさいよね」
相変わらずこの先生のズレっぷりには呆れるほどだ。
たまにキレそうになる。
「そんなことしませんから!」
うちは怒って言う。
「あら、そうなの?」
「うちたちはまだ、キスもしてませんから!」
「まあ、純情なのね」
もうやだ、この先生。
あ、なぜか省吾くんがへこんでいる。
キスもしてないと言ったのが、かなりのショックだったのかもしれない。
うちが悪いんや。
「しっ、失礼します!」
うちと省吾くんは、逃げるようにその場から離れた。
まったく、さっちゃん先生には困りもんやわぁ。
その時、花火が打ち上がった。
もうそんな時間?
うちはかき氷を食べてしまったあと、カップとストローを分別されたごみ箱に捨てると、また省吾くんと手を繋ぎ、花火を見た。
これがロマンチックってことなのだろう。
うちはそのムードに押されて、省吾くんと近い距離で、花火を満喫する。
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