第八十三章・夏祭り<前編>
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第八十三章・夏祭り<前編>
うちは白地に赤い金魚柄の浴衣を着て、夏祭りに出掛けた。
地元の祭りで、八月の上旬に行われるのだ。
もう夜だというのに、出店には人が溢れ、迷子になりそうだった。
この年で迷子もないのだけれど。
省吾くんとは夜六時半に、橋の上で待ち合わせをしている。
ちゃんとLINEで、前にデートした時の服で来るように指示してあった。
またダサい服で来られたら、恥ずかしいし。
ダサいは言い過ぎかな。
地味な服だ。
それにしても、うちは浴衣の着付けに時間が掛かってしまい、待ち合わせに遅れそうだった。
浴衣に合わせて下駄ばきなので、そうそう速く走れるわけでもない。
仕方なく、ゆっくり急いだ。
ようやく橋の上にたどり着くと、そこにはうちの彼氏の省吾くんがいた。
でもその服。
本人はバシッと決めてるつもりだろうけど、前みたいに着こなしてる感が薄い。
ああいう服は、アイロンを掛けてパリッとしないと、意味がないのだ。
まったく、省吾くんは…。
もうちょっと教育しなければと、うちは思った。
「待ちました?」
「十五分遅れだね」
「すいません」
「いいって!」
「それじゃあ、行きましょうか?」
「うん」
うちと省吾くんは、一緒に夏祭りに行く。
デートだ。
うちはちょっとだけドキドキした。
デートの時にドキドキ出来るのは貴重な体験かもしれない。
こんな時間がずっと続きますように。
贅沢な願いかな?
それでもうちは、そう願った。
今しか味わえない時間もある。
それが今日なんだと感じた。
うちは浴衣姿を省吾くんに見せびらかした。
「今日のうち、どう思います?」
「え?」
省吾くんはちょっと鈍い。
浴衣のことなのに…。
「ああ、その浴衣ね。綺麗だよ」
「浴衣が綺麗なんですか?」
「え?」
「うちのことじゃなくて?」
「ああ、もちろん海さんが綺麗だよって意味で…」
む~。
浴衣姿を褒めたんだと解釈します。
鈍いのはNGですよ、省吾くん。
うちはフイッと顔を逸らした。
「海さん、綺麗だよ」
また言われた。
今度はちゃんと、うちのことを褒めたようだ。
うちは嬉しくなる。
「もう、本当に鈍いんですから!」
うちはクルリと回って浴衣姿を披露する。
そして人の多い出店をあちこち巡った。
今日は楽しい夏祭りや。
うちは祭りを回ると、いつの間にか、自然に省吾くんの手を握っていた。
読者の皆様に幸あれ!!




