第七十八章・雪枝先輩の恋愛話
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第七十八章・雪枝先輩の恋愛話
パソコンのデータにアクセスすると、横書きのみちみちした文章が並んでいた。
これは読みにくい。
でもうちは、椅子を持ってくると、それに座り、OBやOGの書いた小説を、気合いで読んでいく。
うちの将来の夢のためにも、出来るだけたくさんの小説に触れたいのだ。
それにしても女子の書いた小説は恋愛ものが多いなぁ。
いいえ、それはそれでいいんですけど、他に何かなかったのかなと思ってしまう。
題材となるテーマが…。
でもうちの書く小説のテーマは『ぱんつから始まる恋』なので、どこまで参考になるやら。
「海、何か目ぼしいのはあった?」
雪枝先輩がうちに訊いてくる。
うちはずっとパソコンの画面に羅列してある素人の小説を見ていたので、背中を向けて答える。
「OGのって恋愛小説ばかりですね」
「ああ、それはわたしたちがそういう時期だからだと思うわ。何?恋愛ものは読みたくないの?」
「いいえ。でも女子イコール恋愛ものっていうのが、決まり切ったテーマなのかと…」
「ああ、そういうことね。わたしが去年書いたのも、お題は『抱かれたい男』ってテーマだったわよ?」
「何ですかそれ?」
「まあ、そのおかげで、わたしは恋愛に対して積極的になれたのよ」
「それって、雪枝先輩の彼氏のことですか?」
「まぁね」
その時、野毬先輩が顔を上げた。
「えっ、秋島は彼氏いたのか?」
「え、いるけど何?」
「いや、聞いてないぞ、俺」
「アンタにどうして言わなくちゃいけないのよ」
「俺が知らないなんて…、何か嫌だなぁ」
「あ、ひょっとしてアンタ、わたしに気があったとか?」
「そんなんじゃないよ。寝言は寝て言え。でも…なぁ…」
「まあ、バラしちゃうと、わたしの彼氏は一コ下なのよ。しかも他校の」
「お前、年下と付き合ってるのか?」
「悪い?」
「いや、別に。それって続いてるのか?」
「当たり前でしょ!付き合って一年くらいね」
「へー。きっかけは?」
「わたしが満員電車で痴漢に遭ったの。それで捕まえたのが、その彼氏よ。冤罪だって分かって、謝りに行ったのがきっかけなの」
「それって負い目を感じて付き合うようになったと解釈していいんだな?」
「負い目…ね。確かに彼は、警察で取り調べを受けて、ボロボロになって、ついに自白したんだけど、のちに本物の痴漢が他の事件で捕まった時に、その痴漢も自白したことから、彼は釈放されたのよ。わたしだって悪気はなかったんだけど、それで頭を下げて謝って、許してもらえたのが、わたしと彼のきっかけなのよ」
「雪枝先輩。そのきっかけって、この『痴漢から始まる恋』っていう見出しの小説のことですか?」
うちはパソコンの画面に出ている小説を指さして言った。
「それはわたしが、去年の冬頃に書いた小説よ。お題をそうしたの」
痴漢から恋が始まったらいけないだろうと、個人的にうちは思った。
でもそれは雪枝先輩の場合の話だ。
うちには関係のないテーマだとは思ったけど…。
それでも痴漢は絶対にいけないし、その冤罪もまた然りだ。
雪枝先輩の恋の始まりが聞けたのは良かった。
それだけ思ううちだった。
他に参考になるものは…。
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