第四十九章・泥のように…
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第四十九章・泥のように…
省吾くんと二人きりでは場が持たないので、うちは本を読むことにした。
省吾くんも何か本を棚から選んでいる。
うちはブルースト著の『若き日の初恋』を読み始めた。
省吾くんは何の本を開いてるのか分からない。
これでいいと思います。
うちらは健全な高校一年生なのですから。
うちは本に集中した。
本は場を和ませる。
ただでさえ文芸部という部活動なんですから、読書は当たり前です。
うちは噛み付くようにページに目を当てる。
その時、静かに部室のドアが開くと、雪枝先輩が入って来た。
うちと目が合う。
「あ、先輩」
「海。それに…」
省吾くんは隣に座っていたのだけれど、疲れているのか、いつの間にか寝てしまったようだった。
本を置いて、机に突っ伏している。
うちは省吾くんの寝顔を初めて見た。
可愛い。
男の子なのに…。
それでもその寝顔は罪なくらい天使だった。
「省吾くんは読書感想文の書き直しを頑張ったみたいです」
うちは雪枝先輩に言う。
「そっか。急がせ過ぎちゃったかな?」
「まあ、今はゆっくり寝かせておきましょう。起こすのも悪いですし」
うちも本を置くと、机に突っ伏してしまう。
「ああ、うちも眠いんです」
「うん。寝ていいよ。今日だけね」
雪枝先輩は気を遣ってくれたようだ。
うちも省吾くんも並んで眠る。
それはもう、体が机に引っ付いているような感じだった。
こんなにグッタリとなるのは久しぶりな気がする。
中学生の時の体育祭が終わったあとのような、泥のように眠る心地である。
そんな気の張ることはしていないつもりだと思ったけれど、高校に上がってからは、忙しくなって、勉強も難しくなって、部活も体力を使うようになり、疲れがドッと出たのかもしれない。
緊張の糸が切れたような、そんな気分だった。
しばらくはうちも省吾くんも起きないだろう。
それを見守るように、雪枝先輩の視線をかすかに感じた。
下校時間までゆっくりと静かに眠る、うちと省吾くんだった。
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