第三十章・省吾くんも男子。
出てくる小説は架空のものです。あしからず。
第三十章・省吾くんも男子。
文芸部では、それぞれ持ち寄った本を読んでいた。
うちはリチャード・ミルズ著の『永遠の恋わずらい』。
街で買った本だ。
恋愛小説で珍しく、男性作家が女性の視点で書いているものだ。
省吾くんは文芸部用に買った本が、谷川逸三著の『遥かなる合気』。
大東流の本の他に買っていた小説である。
中身は武道が出てくるマニアックな小説らしい。
それはそれで読んでみたい。
深く興味があるワケではないのだけれど、省吾くんの好きなジャンルを知っておきたいかなと思ってるんです。
雪枝先輩はいつも何かを読んでいるので、決まった本はなかった。
ビブリオマニアの読書歴はすごい。
野毬先輩は石田貴之著の『S&W』
スミス&ウェッソンのことではない。セックス&ウォーのことらしい。
どういうチョイスなのか…。
でも野毬先輩にとっては好きな内容なのだろう。
うちは口を挟まないようにした。
それぞれが夏のコンクールのために、読書を開始する。
部の雰囲気はほぼ沈黙だった。
四人しかいないし、男子二人に女子二人だ。
それにうちと省吾くんは一応、付き合ってることになっている。
雪枝先輩にはもう、打ち明けてある。
うちらのことを祝福してくれた。
結婚じゃないんだから、祝福の言葉を述べられても困るけど。
でも喜んでくれたし、いいよね?
うちはそう思う自分を恥ずかしくも嬉しくも感じた。
読書は続くが、集中力はそう続かない。
うちたちは一時間後に小休止すると、持ち合わせている冷えたお茶を紙コップで飲んだ。
「読むのが面倒になって来たわ。ネットであらすじ調べてもいい?」
部長の雪枝先輩が横着し始める。
「雪枝先輩、仮にも部長がそんなことしたらダメですよ」
うちは雪枝先輩を叱った。
「だって、面白いと思って買ったのに、読んでみると結構つまんないんだもん」
~だもん。とか言っちゃって…。
雪枝先輩は子供ですか?
まったく……。
でも、面白そうだから読んでみると、結構つまらなかったりする時ってありますよね?
そこだけは同感です。
「そこの二人!」
突然、雪枝先輩はうちと省吾くんを指さした。
「おしべちゃんとめしべちゃん、受精はもうしたの?」
またバカなコト言い出した。
「雪枝先輩!」
うちは怒る。
うちだけなら構わないけど、いいえ、構いますけど、それでも省吾くんにまでからかうと、うちは許せないんです。
「冗談よ、冗談。でもあんたたち、付き合ってるんだから、用意くらいはしといた方がいいよ」
何の?
いいえ、分かってるんです。分かってるんですよ。
でもうちは、そういう気はまだありませんから。
そんなんじゃないから…。
たぶん。
あ、うちってカマトトかな?
そういう女子って実は人気ないからなぁ。
女子としては、恋人さんがいても、身は守らなければいけないと思うんです。
でもやっぱり、省吾くんも男子だからなぁ。
前に街で読んだ女性雑誌を思い出す。
『男はオオカミ』。
省吾くんも例外ではないんですよね。
省吾くんはムッツリだけど、それでも男子は男子だから……。
読者の皆様には感謝しかありません!!




