第百十五章・合宿の帰りも騒がしい?
読者の皆様に幸あれ!!
第百十五章・合宿の帰りも騒がしい?
昼過ぎにバスが旅館前に来ると、帰るためにバス停で待っていたうちらは、自分の荷物を持って、バスに乗り込む。
その時、千百合さんがうちらを呼び留めた。
「ちょっと待って!」
息を切らしてやって来た千百合さんは、手に何かを持っていた。
「千百合ちゃん、どうしたの?」
雪枝先輩がバスを降りて、千百合さんに尋ねる。
「女子部屋にこれが落ちてたんです。これ誰の?」
そう言って、千百合さんは手のひらにUSBを載せて、見せてきた。
「あっ、これ…」
雪枝先輩がそのUSBを見て、反応する。
うちのことを手招きして呼ぶ雪枝先輩。
まさか、あれはうちのUSBなの?
昨日の夜に、鞄に入れておいたのに、まさか落とした?
鞄の中を確かめると、実際にうちのUSBは、中には入ってなかった。
うちはバスを降りて、そのUSBを見る。
これは本当にうちのや。
「あ、ありがとうございます、千百合さん」
「まったくもう!忘れ物なんて勘弁してよね、海っち」
「す、すみません…」
「ま、いいけどね。省吾のことは頼んだわよ」
「はい!」
千百合さんは良い人だ。
うちはそう思った。
なんだかんだ言って、うちらは友達なのだ。
千百合さんに感謝しなければ!
「千百合さんもバイト頑張ってください。新学期に学校でお会いしましょう」
「うるさいわね。早く行きなさいよ。バスの運転手さん待ってるじゃないの!」
そういえば、うちと雪枝先輩がバスの外にいたんじゃ、運転手さんがいつまで経っても出発出来ない。
運転手さんは律義に待ってくれてるけれど…。
「それじゃあ!」
「うん。それじゃあね、海っち」
うちは千百合さんに別れを告げると、雪枝先輩と一緒にバスに乗り込んだ。
「海、助かったじゃない。あの子に感謝ね」
「そうですね。千百合さんはうちの大事なお友達ですから」
USBを鞄にしまうと、今度は大事に保管した。
「海さん、千百合は悪い女じゃないんだ」
と、省吾くんがフォローしてくる。
「知ってます。大丈夫!」
うちは本心で言ったけど、省吾くんには伝わっただろうか?
バスの扉が閉まろうとしたその時、全力ダッシュでバスに飛び乗る人がいた。
「間に合ったぁ~」
そう言うのは、顧問のさっちゃん先生だった。
ブラウスのボタンもかけ違いで留めてあり、ベルトの穴も間違えている。
適当に服を着て、荷物を片手にうちらを追いかけてきたのだ。
本当にズボラな先生だ。
「あなたたち、わたしを置いて帰ろうとするなんてどういうつもりですかぁ~?」
先生はそもそも別の部屋だったし、部屋番号も知らなかったし、正直いてもいなくても、どうでも良かったし…とは言えないわぁ。
「先生は今回、何もしていないじゃないですか」
と、野毬先輩。
「確かに野毬先輩が言われる通りですね。顧問としての仕事は何一つやってない気がします」
と、省吾くんも辛らつに言う。
「温泉に入ってた時、あんなに文芸部員に寄り添ったと思ったのにぃ~。先生は悲しいです!」
そう言われても…。
うちは呆れかえる。
「あ、バスの運転手さん、もう出してもいいですよ」
さっちゃん先生は運転手さんにひと声かけた。
合宿の終わりにも、こんな珍事があるなんて…。
うちは大きくため息をつく。
疲れが取れたにも拘らず、また新たなストレスを感じた。
もう夏も終わる。
数日後には新学期が始まるのだし、夏休みの最後くらいはゆっくり寝転んで、休みたい。
若さは眠気との対決でもあるのだ。
うちらを乗せたバスは山を下るために、道を下りて行った。
千百合さんが見えなくなる最後まで、手を振る。
不思議な合宿でした。
駅に着くまでうちは、ウトウトと眠りについた。
そう、まるで眠り姫のように…。
引き続き、ご感想やレビューもお待ちしております!!




