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ネオロエンサー  作者: 羇流遼
序章
2/17

001 素材クエスト 前編

「もうすぐくるアップデート楽しみだよな」

範政のLINEに京介の期待は高まった。


 学校終わりの放課後、ゲーセンへ向かう道すがらのことである。

 京介は新宿の、そして範政は札幌の、それぞれVR専門のゲームセンターへと向っている途中であった。二人はこれからプレイしようとしているVRゲーム『TOKYOラビリンス』の攻略掲示板で出会ったネト友で、リアルで会ったことはまだない。やり取りももっぱらラインで、とくに不自由はしていなかった。


 今日は間近に控えたアップデートに備えて、キャラクターをパワーアップさせるための素材集めだ。


『TOKYOラビリンス』


プレイヤーはサイキッカーとなり、舞台として用意された実在の駅構内を再現したバトルフィールドマップで戦うというVRゲームだ。

現在実装されているマップは、新宿、渋谷、池袋、秋葉原、東京の5つで、ゲームモードはレベル・スキル上げの為のクエストモードと、実戦のパーティー戦モード(GvG)があった。


「次回のアップデートで、妖魔の力を取り込めるようになるんだってね」

「超WKTKがとまんねぇ~」


 ゴジラのオブジェクトが突き出ている建物を曲がると、目的地であるゲーセンが見えた。

 ダラダラとLINEしながら足早にゲーセンを目指す京介。

やがてVR専用ゲームセンター『夢幻館』へ到着した。そこは、新宿歌舞伎町の端に建っていた。

範政もゲーセンに着いたのを確認すると、京介はスマホを切り店に入る。


 昔のSF映画にあったような円筒形のカプセル筐体の中に身を滑らせると、アカウントカードを入れる。そしてVRメットを被るとそこに横たわり、左右のフィンガーポットに両手を突っ込んだ。静かに目を閉じる。


没入マトリックス・イン


指先にピリリと鈍い痺れるが伝わってきて、続いて網膜の裏に感じるまばゆい光。視界が真っ白になりブラックアウト。それから、臓物を鷲掴みにされるような鈍い感覚に身を強張らせた。この感覚ばかりは、何度やってもなれることは出来なかった。


◇■◇■


電脳空間への道のりは灰色の砂嵐に覆われていた。時々、稲光のような閃光が煌めく。

 やがて、幾何学模様が漂う空間にたどり着いた。そこは『ラプラスの間』と呼ばれるインターミッションルームだ。ここではステータスアップしたり、装備を整えたり、出撃先を決めたりする。


京介は、いつものアバター『カザオリ』を選択した。

この『TOKYOラビリンス』ではゲームを始める時、キャラメイクの後に属性を選択する。即ち地水火風雷の五属性だ。

属性にはステータスボーナスが付く。


土属性:HP・技の威力1.5倍、スピードマイナス1.25倍

水属性:MP・防御力1.5倍、攻撃力マイナス1.25倍

火属性:攻撃力1.5倍、MPマイナス1.5倍

風属性:スピード1.5倍、HPマイナス1.25倍

雷属性:全ステータス1.25倍、マイナスハンデ無し


である。

ここに、クエストで手に入る各種素材ジーン・シードをかけ合わせてパラメーターをアップさせたり、サイキックを習得してゆく。そして習得したサイキックを進化させてゆくことで、千差万別のキャラクターが出来上がってゆく訳である。


1回の出撃時に装備できるスキルとアイテムはそれぞれ3つづつ。京介はこれからプレイしようとしている渋谷ラビリンスと、一緒に攻略する範政のキャラ(多分『メギド』だろう)との兼ね合いを考えて、いつものヤツを装備した。


チャットを呼び出し、フレンドリストからメギドを選択する。

「オケ?」

「OK~」

 2人は渋谷駅にテレポートした。



「えっとここは・・・」

「井の頭線の改札前だな」


 スタート地点は毎回ランダムで決まる。

 マップを開いて中ボスの位置を確認した。素材クエストでは大ボスを倒すか50分経つとクエストクリアとなる。


 中ボスはJR線のホームの先端にいた。

「どうする?」

「近いな。とりあえず、中ボスちゃちゃっと狩ってから素材集めでしょ」

「そうしよっか」


 二人は井の頭線の改札を出てJRへと向かう。ここは改札を出るといきなり天井が低くなる。それに今だに慣れない京介だった。

 気を取り直してあたりを見渡す。

 現実世界では人、人、人でごった返しているこの渋谷駅構内も、今はガラーンとしている。なんだか変な感覚だ。

「このクエで新しい技、修得したいよな」

「アップデートまでには、あと2~3はスキル強化して、できれば新しいEXバースト習得したいね」

「やること多すぎる~」

 おどけながらメギド(憲政)は大剣を頭の上でクルクルとさせた。


 と、前方のエレベーターが開く音が聞こえた。

「やっべ」

 メギドの呟きと同時に、イーブル・デビルがワラワラとエレベーターから出現した。


イーブル・デビル。特撮で言う戦闘員みたいなもので、要するにザコ敵である。


「景気づけに、いっちょいきますか」

 メギドが大剣を構えながら言った。

「おうさ」

 カザオリ(京介)も鷹翼刀(刀身が通常の刀の七分丈の双剣)を構える。

 メギドの大剣が赤く輝き炎を纏う。

迫りくるイーブル・デビルの群れを見据えると、裂帛の気合と共に横に薙いだ。


十数匹のイーブル・デビルが炎に包まれ塵芥となり消えた。


隊列が崩れる。

カザオリは左手薬指でクリック動作をする。すると、コマンドリングが現れた。意識のカーソルでサイキック『蒼撃流星破(Layzner)』を選択し発動させる。

 風の刃を纏ったカザオリがイーブル・デビルの群れに突っ込んだ。

 一筋の流星となったカザオリが、敵たちを蹴散らしながら群れの反対側に移動する。結果、メギドと敵の一団を挟み撃ちにする形になった。


 MPゲージを確認したところ、移動する際に敵を蹴散らしたお陰でMAX近くまで回復していた。このゲームでは、敵を倒すか時間がある程度経過すると、HP・MPが決まった数値だけ回復する仕組みになっている。回復量はもちろん属性に依存していた。


「はは、いい感じじゃん。おし、取り敢えずこいつらデストロイしてヒャッハーだ!」

「おいおい、すぐそこに中ボスいるんだから、MP使い切んなよ」

 二人は武器を構え、戦闘行動に入った。





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