015 オロチ殲滅作戦
御苑入り口の開けた道路に東京都庁が鎮座している。ロボはロボットモードから都庁モードに変形していた。そこへもう一体新しいロボットが到着し、片膝をついて動きを止めた。中から出てきたジュピテルと鉢合わせするカザオリ。
「おう、無事だったか」
笑顔を見せながらジュピテルが言った。
「もう一体、ロボットあったんですか」
「そ、マークⅡ。都庁の横の3連ビルも変形したんだよ」
コジロウの連れたちが、間近で見るロボットにテンション高くはしゃいでいる。
ひとしきり、もう一体のロボットで盛り上がっていると、都庁の中からオリヅルが出て来て都庁内の災害対策本部へと連れていかれた。
そしてそこの連絡回線を使い、新宿エリアにいるフレンドに片っ端から声をかけはじめる。人が人を呼び、かなりの人数がぞくぞくと都庁に到着した。
カザオリとコジロウも、タワケとベンケイにそれぞれ連絡をとってみたのだが。
「まだ敵が残ってるかもしれないから。ちょっと街を見回って調べてみるよ」
と言われてしまった。
二人としては「任せた」と言う他になく、
「あいつら一緒に行動してたんだな」
「ひょっとしてデキてんじゃね」
コジロウが笑いながら言った。
ある程度人数が集まったところで、巨大スクリーンを四つに分けて地図を表示した。すなわち『渋谷区』『豊島区』『千代田区(秋葉原駅)』『千代田区(東京駅)』の四つである。
ジュピテルが3つのアイテムについて解説し、チーム分けをする。
さすがは大所帯のチームのリーダーをやっているだけあり、説明と人員の割り振りが的確だった。
そして、それぞれのエリアのプレイヤー達に『天叢雲の欠片』を取らせる為に、他のエリアにフレンドは居ないか連絡を取り始めた。
カザオリはメギドのことを思い出して、災害対策本部の端末で調べてみた。
名前の表示が灰色になっている。没入しているのならば白、していないのならば黒表示のはずなのだが。不思議に思い名前のところをクリックしてみる。すると、矢印が出て『ブライ』というキャラ名が表示された。
このゲームは、一つのアカウントカードで3つのアバターを製作できる。つまり、中の人は今、メギドではなくブライというアバターを使ってこの『TOKYOラビリンス』の世界にいるということになる。
彼は今、池袋エリアに居るようだった。
一瞬躊躇したが、思い切って連絡してみる。
範政は初めはビックリしていたが、すぐに気さくに応じてくれた。
「すまいメギド。・・・じゃなくてブライ」
メギドとしかプレイしたことがない為、調子が狂う。
「別にいいって。それより逆に助かったよ。どうしていいのかわかんなくてさ」
カザオリは状況を説明すると。
「まずは駅の忘れ物預かり所へいって麹酵母をてにいれて欲しいんだ」
次の行動を指示した。
「その間に、他の二つのアイテムの場所、あたり付けておくからさ」
一端通信を切ると、ジュピテルに池袋にフレンドが居たことを報告、そして池袋アイテム解読班の所へ行った。
「マップチェンジ! 秋葉エリアは台東区だって、神田川より先は行けないみたい」
「こっちもマップチェンジ。東京駅エリア、中央区しか行動できない模様。丸の内方面は見えない壁があって進めないって」
熱気が立ち込め喧騒が飛び交う。
なんだかロックフェスへ来ているみたいだった。
解読班によると、豊島区には霊園が2つあるらしく、そのどちらかに
『聖米』があるのではないかという話で、再びブライと通信を再開すると彼はちょうど駅から外に出たところだった。
「うをぉぉぉォ」
突然叫びだすブライ。
「どうした」
「大変だ! サンシャイン60がロボットに変形した!」
驚愕をまとった真剣な声。
3つ先のグループがハイタッチしながら歓声を上げている。どうやら彼らがそそのかして、サンシャイン60ロボを起動させたらしい。
愉快そうに笑うブライの声が聞こえる。
「どうした」
「このサンシャインロボ、色を金ぴかに塗りなおしたら、まんまゴー〇ドライタンだなってさ」
「制作者、いい趣味してんじゃん」
「だな」
思わず笑ってしまった。
「でもさ、いくらゴー〇ドライタンでもオロチ2体相手はきつそうだな」
「え? 2体?」
「そう。2体と同時に戦ってる」
カザオリの脳裏をかすめる、新宿中央公園の卵雲。オリヅルは消滅したといっていたが・・・本当に?
思わずオリヅルの姿を探す。が、人の数が多すぎて見つけることが出来なかった。
さらに探し出そうとしたところで、ブライに声をかけられて我に返った。今はそれどころではない。
「ゴー〇ドライタンがやられちまう前に、早くアイテム手に入れようぜ」
「えっと、いま有る可能性としては、王子方向に霊園が二つあるんだけど、そのどちらかに『聖米』があるかもって話なんだ」
「よっしゃナビしてくれ。オレ、札幌住みだから東京に土地勘ないんだ」
そういえばそうだった。ブライ(の中の人)は札幌市に住んでいることを思い出す。
「ちょっと遠いよ」
「オッキー(O.K)、ちょうど目の前にスーパーカブが・・・オットット動くじゃない。これ。楽勝、楽勝」
いうなれば、数を頼みのローラー作戦。
確率有りそうなところへ、みんなで散って1つづつ現地確認してゆく。
そして情報を共有して確実にアイテムをゲットしていった。
災害対策本部内がどんどん白熱していく。みなオロチを倒して早く現実へ戻ろうと必死だ。
そして・・・
ついに全エリアのオロチを倒すことに成功した。
大歓声に沸き立つ対策本部内、みんなの顔に解放感と安堵の表情が浮かぶ。
と、突然、カザオリの体が発光し始め・・・そして消えた。
周りの人たちは、ただ、呆気にとられた。