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白金記序章・黎明編  作者: 富士見永人
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「生き残ったのは私とヒヅル、そしてアルマ。三人だけか」

 名前に反していつもは無表情な(よう)が、珍しく悔しそうに表情を歪ませて言った。

「陽。月世の死に関しては、私の過失です。償っても償いきれません。本当にごめんなさい」

 ヒヅルが深々と陽に頭を垂れて詫びた。陽と月世はほとんど同時に生まれ、双子の兄妹のように育てられていたのだ。

「謝らないでくれ。悪いのはヘリオスのやつらだ。むしろあんな連中を相手にして、よく生きのびてくれた。私もアルマも、お前が助けてくれなかったら、やつらに殺されてただろう」

 アルマは陽とともにヘリオスの部隊の追撃からうまく逃れ、生き延びていた。だが次第に追いつめられ、殺されかけていたところで、ヒヅルが映画のようなタイミングで敵を仕留め、九死に一生を得たのであった。眼の前で死んでいく仲間たちの姿を見ていたのか、自身が殺されかけた恐怖からか、アルマは涙を流しながら黙りこんでいた。

「星二たちを見ませんでしたか。陽。おそらくヒデルも一緒だったと思うのですが」

 ヒヅルの問いに対し、陽は首を横に振った。


 その後、ヒヅルたちは白金財団の私兵たちに保護され、しばらく療養していたが、星二たちが見つかったという情報が入ってくることはなかった。ヘリオスの兵士にすでに殺されてしまったのか、爆発に巻きこまれて木っ端微塵にふきとんでしまったのか……もはやヒヅルたちに知る由はなかった。


 それからヒヅルは白金財団の保護下で傷を癒し、失った右手は当時の最先端技術で作られた精巧な義手に置き換えられた。

 ある日、すっかり快復したヒヅルの元に、ひとりの男が訪れた。

「全能なる存在による全人類の統治。それこそが、白金博士の望みでした。この不完全で混沌とした世界の統治を、全知全能の〈神〉の手に委ねると。ヒヅル――いいえ、〈白金ヒヅル〉様。あなたは博士の生み出した唯一無二の本当の〈人工全能〉。あなたこそが、世界の統治者にふさわしい。どうか我々人類の世界に光を。この世界の闇を照らす、新たな太陽となってほしい。どうか我が国を、そして世界を、導いていただきたい」

 白金財団の副理事長を務める壮年の男、大嶽克典(おおたけかつのり)が、ヒヅルに跪いてそう言った。

「白金暁人の遺志は、私が受け継ぎます。世界は必ず征服する。暴力と恐怖に依るヘリオスの支配に終止符を打ち、すべての人間が平和で豊かに暮らせる、〈完全世界〉を築きあげるのです」

「何なりとご命令を。ヒヅル様――我らが〈偉大なる太陽〉よ」

 時代はちょうどIT黎明期。今後はコンピュータ技術において抜きん出ることこそが巨万の富をもたらすと考えたヒヅルは、独学でコンピュータ関連の知識を身に着け、わずか三日で当時最も先進的なコンピュータOS〈SUNS(サンズ)〉を開発。ソフトウェア企業〈ナノソフト〉を創立し、一気に億万長者となった。そこで得た資金で白金グループを設立。世界中から優秀な人間を集め、ITのみならず、ありとあらゆる分野へと手を拡げ、世界の長者番付でも一、二を争うほどの富豪となる。ただしそれは表向きの話で、裏では潤沢な資金を用いて〈白金機関〉を創設し、世界を水面下から変えるべく、活動を開始したのであった。


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