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其の二

そう、逃げ出した筈、なのだ。にも拘らず、今は自分の後ろにその化け物がくっついてくる。いつの間にか追いつかれてしまった。けれど、取り敢えずは何かしてくる訳ではないらしい。如何やら、はぐれた母を捜しているらしいが、何故自分についてくるのか。理解は出来ない。


――その母親も人形なのかしらね。

思ってから如何やって後ろの化け物を撒こうかと考える。

そして閃いた。。


「いいわ。少しだけ遊んであげる。・・・そうね、じゃあ、隠れんぼしましょう。妾が鬼ね」

そう言った巫女の顔は笑っていなかった。

己から鬼を買って出た巫女は、探さずにそのまま逃げるつもりだった。けれど、その化け物からは巫女の予想外の答えが返ってきた。

「・・・隠れんぼって、何?」

 そうなのだ。相手は人間の娘ではなく化け物なのだ。此方の常識が通用しなくとも無理は無い。そう思った直後、自分がそれなりに冷静である事に気付く。

 仕方なくその遊びの決まり事を教える。

「・・・良い?妾が見つけるまで絶対出て来ちゃ駄目よ?」

 人形は黙って頷く。

人形は初めて知るその遊びに一人、心躍らせていた。


じゃあ数えるわよと巫女が眼を瞑る。そして数を数える。

人形はきょろきょろと隠れられる場所を探している。

巫女は薄く眼を開け人形の様子を伺う。如何やら岩陰に隠れたらしい。隠れているはずなのに着物の袖が見えている。

――下手ねぇ。

くすりと笑うが、すぐに頭を振る。

「きゅ〜う、じゅう」

数え終わって、巫女は、探し始める。正確には探すふりである。

「何処かなぁ〜」

わざとらしく言って、人形のいる岩陰を通り過ぎる。

そして十分に距離を取ってから一気に走り出した。


――ちょろいわね。


巫女は早々に立ち去って行った。




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