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第二話 友の芝生は青く見える

「むむむむ」

僕は市内最大のショッピングモール、ザティーにやってきていた。

低予算で服を買いにきたため、小一時間ほど値札とにらめっこである。


「お客様こちらの商品等はいかかがですか?」

見かねた店員がとうとう声をかけてきた。


店員が勧めてきたのはグレーのオープンカラーシャツ。

デザインは悪くないのだが値段がなぁ・・・

襟元からさがった値札には5990円、今日の予算は5000円である。

これ以上ここにとどまるのも気まずいな・・・

しかたない、今回はあきらめるか。

店員の誘いを断り、しぶしぶと店を後にすることにした。



平日のショッピングモールは人通りが少なく、がらんとしている。

高校生は、まったくみあたらない。

まぁ、平日の昼間だからなぁ・・・

モール内にある大きな時計の針は午前11時半をさしていた。

いつもはにぎわっているメインストリートに出てみたが、それでも人はまばらである。

こういう時の大人たちの目線ほど痛いものはない。

別にさぼっているわけではないのだ。

今日はサボタージュポメラニアン学園の開校記念日であり、学校は休みなのである。

学園の名前にサボタージュが付いてるからと言ってさぼっているわけではないのだ!!


しばらく散策して見たものの、なんだかとてもいずらい雰囲気だし、腹も減ってきた。これはもう家に帰るしかない。

光の速さで家にかえってやる、そう思い、出口へと足を早める。

急いで帰ろうとしたのだが視界の端に移った異物が僕の足を止めた。

ん??

人参だ。

頭に人参がさっさた奴がひとり、女性ものの服をながめている。

そう、八城 たけとの である。


あいつ、男だろ。同じ男子高であることはわかっている。

だが、容姿は完全に女の子である・・

もしかしたら、女なのではないか?

直接モノを見たわけでもないし、もしかしたら・・・

そう思ってしまうほどである。


まぁ、男でも目の保養にはなるなぁ、などと下品な事を考えながらついついガン見していると、気づかれてしまった。


向こうはこちらを見つけるとツカツカと歩み寄って来た。


「ぬぅ、貴様は・・・あの時大根を刺さなかった不敬な奴・・・今度こそ大根を刺しにワシに会いに来たのか?」


別にたまたま通りかかっただけなのだが。


「別に、会いに来たわけじゃない・・・その・・なんだ。この間は悪かったな」


前回あやまらず別れてしまったので、先にしっかりあやまっておく。


「よいよい、スーパー寛大なワシは、あのくらいのことは気にせぬ」


そういうと、たけとのは近くのベンチにちょこんとすわった。


言動と頭の人参が無ければまるでどこかのモデルのようである。


「おお、そうじゃ、悪いと思っておるなら、これからスーパーに行っておぬしの頭にさす根菜でも一緒に買いに行こうかの」


「いや、それは遠慮しておきます」

即座に断る。

また大根なんかで殴られたらたまったもんじゃない。

本当に言動がなければいいんだがなぁ・・・


断ったことで、たけとのは何やらギャーギャー騒いでいるが、無視して帰ることにした。




-------------------------------------------------------------------------------



次の角を曲がれば自宅である。

ここまで背後に何かいる気配がしたが気にせずに歩いてきた。

だが、ここまでくるとそうもいかない。

知らん奴に自宅を知られるのは回避しておきたい。


サッ後ろを振り向く。


「ササぁっ」 と声がした。


何かが電柱の後ろに隠れたようだ。なかなかのスピードだ。


恐ろしく速い隠れ身、僕じゃなきゃ見逃しちゃうね。


はぁぁぁぁ

ため息をつきながらも電柱の後ろを確認する。

何者かが後ろを向き、まるくなっている。

黒い髪、人参・・・

やっぱりこいつか・・・


「おい、なにしてるんだ?」

本当になにをしてるんだ?こいつは?


「い、いやぁ、その尾行?じゃな・・・」


顔を下にさげ、毛先をいじりながら、もじもじと たけとのが答える。


「理由は??」


さらに問いただす。

まったく・・・こいつは何を考えているのか本当にわからない。


 すると奴は急に顔をあげ、自慢げに答える。


「理由?人が尾行するのに理由なんているのか?人はそこに気になる人がいるから尾行するのじゃ!!」

本当にすごく自慢げである。

名言でも言い放ったとおもっているのだろうか・・

まぁ確かに迷言ではあるが。


グゥゥゥゥゥゥぅ

間抜けな音が僕の腹からなった。

腹が減り、腹ががなってしまったのだ。


「わかった、わかったから。帰れ。僕は腹が減っているんだ」


空腹によるいら立ちを隠せない。

あぁ、はやく昼食をとりたい。


「うむ、わかったぞ」

たけとのはニコニコしながら頷く。


なんだ、案外聞き分けがいいじゃないか・・・

もっとごねて一緒に食いにいくだとか、僕の家にお邪魔するだとか、ワシの頭の人参をお食べだとか言うと思っていたのに。

思っていたよりも常識のある子なのかもしれない。


「では、一緒にかえろうかの」


「へ?」


そう来たかぁぁぁぁぁ


尾行しておいて今度は自宅に誘うとか何考えてんだこいつ??

即座に断ってしまおう。


「いきなり君の家にはいきたくないな。では、帰らせてもらう」


そう言い放つとくるりと後ろをむいた。

奴がなにを言おうともう聞くものか。

絶対にもうあいつにはかまわない。



食欲に勝てるものはないのだ。


後ろで何やら叫んでいるが、何を言おうと無駄だ。

今日の昼食は何を食べようか。そんなことしか僕の頭の中にはないのだから・・・



たけとのがまた叫ぶ。


「まてぇぇぃ、うちに来ればA5ランクの牛肉をたらふく食わせてやるぞ!!」


・・・・・・・・・・・



なん・・・だと・・・・



足が止まってしまった。


食欲に勝てるものはないのだ。







連日の投稿となりました。

1話に引き続き2話も早めに投稿よていなので、応援よろしくお願いします。

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