ステルス それは一瞬の出来事だった
一話目を投稿しただけでブックマーク一件‼
ありがとうございます!
今俺はパトロールをしている。
学校の治安維持のためのパトロールだ。
何だか生徒会ぽいぞ!
「ねぇねぇ~やましん~ここから先は結構治安が悪いらしいよ~」
「西の噴水広場のことか?なんでだ?」
「知らないよ~人が少ないからじゃないかな~?」
そんなもんか…
そんな話をしていると早速違反者を見つけた。
噴水の淵に座っている。
銀髪ツインテールの女子だった。
和服を着ており、身長からして中等部の生徒だろう。
しかも刀を持っているだと⁉
「あの~君は中等部の子だよね?何でここにいるのかな?別にいちゃいけないってわけじゃないけど…」
話しかけても返事はない。
よく見たら目をつぶったままだ。
寝てるのか?
「この刀は規則違反だよね?没収するよ?」
やっぱり返事は無い。
これはもう没収するしかないだろ!
俺は刀に手を伸ばす。
あと数センチで触れる距離だがやっぱり反応はない。
ならば取り上げるしかないだろ!
そう心の中で叫び、刀を握る。
「え?」
次の瞬間。自分は何も掴んでいなかった。
強いて言うなら空気を掴んでいた。
自分の状況を理解するのに十数秒かかった。
いや。一瞬が何十秒にも感じるアレかもしれない。
そして自分の首元に突きつけられた冷たい感触を感じ取る。
すぐにそれが刀、それも日本刀だとわかる。
それもついさっき自分が掴もうとした刀。
「これは警告です。」
シンヤの身に何が起こったのか。
時は30分ほど遡る。
~西の噴水広場~
リナが校内を歩いていると三人組の男子生徒に話しかけられた。
「おいねぇちゃん!朝は散々やってくれたみたいだな?弟から聞いたぜ?」
「なぁ…俺ら兄弟の恨みを買ったらどうなるのか教えてやるよ…」
「遠慮します。」
「あぁん?なめた口きいてんじぇねぇよ!こっち来い!」
外に連れ出されたリナは地面に叩きつけられる。
「正直にさっさとカネを払えば良かったんだよ!」
地面に転がったリナを執拗に蹴り続ける。
「なんか言えや!」
「…ごめんなさい…」
「あ?聞こえねぇなぁ」
「ごめんなさい…許してください…」
リナが涙を流しながら謝罪する。
しかしそれは不良たちの嗜虐心を煽るだけだ。
「見ろよ!こいつ泣いてやがるぜ!」
「ははは!みっともねぇな!」
ふと、不良たちは噴水に座っている一つの人影に気付く。
「あ?何こっち見てんだ!」
「別に。何も見えていませんけど。」
「どっちにしろ俺は今機嫌が悪いんだよ!ぶっ殺すぞ!」
「心臓の鼓動は『楽しい』と言ってますよ。ディッサポイント.英語でガッカリという意味です。女性を泣かせて喜ぶだなんて…男性の底辺ですね。」
「うっせえな!お前ら!こいつを先にやるぞ!」
不良たちの注意が自分に向いたところで少女はリナに『逃げろ』のハンドシグナルを出す。
「俺達がグループのトップに立ち続けてきた理由が分かるか?」
少女は何も答えない。
「誰よりも速いからだよ!」
三人は長男から順に『光』『電気』『音』へ変化する。
そして限界まで近づいた瞬間元に戻り、忍ばせていたナイフを突きつける。
「それが光の速度ですか。案外遅いものですね。」
後ろに回り込まれたことを理解するのに時間がかかり、反応が遅れたが、次の瞬間には背後にいる敵をナイフで切り裂く。
しかしその刃が切り裂いたのは空気だ。
「仏の顔も三度まで。ヴァーニング.英語で警告という意味です。あの方への暴力が1回目。次に会話を放棄して私に攻撃を仕掛けてきたのが2回目。次は無いですよ。」
「うるせぇ!ぶっ殺してやる!」
長男が光に変化し、突進する。
「はぁ…警告はしましたよ?」
次の瞬間、光となった長男がいた場所に黒い流体の壁が出現した。
「バカは死ななきゃ治らない。誰かがそんなことを言ってましたね。」
「おい…黒の性質を分かっているのか?」
「はい。イマイチ色の概念は理解できませんが…美術室で拝借した黒のペンキ。その言い方からして効果アリと言うところですかね…」
「兄貴を殺しやがったな⁉」
「今言いましたよね?『バカは死ななきゃ治らない』。あなたのお兄さんはペンキのほんのちょっぴりの熱となり、残りは反射してバラバラになりました。こういうことを『死んだ』と表すのは言われなくても分かります。」
「てめぇ!ぶっ殺してやる!」
「口を開けば『ぶっ殺す』としか言えないんですか?タイヤード.英語で飽き飽きという意味です。まぁ今後役に立つことはないでしょう。」
電気に変化した次男が通っている電線が途中で切断され、地面へとつながる。
「確かこうやって地面に流せばバラバラに広がるんでしたよね。それを人間でやるとどうなるのか知りませんが。」
最後に残された三男の脳裏にある噂が浮かぶ。
和服を着た中等部の生徒。
残忍極まりない性格をしていて、気に入らない人間は容赦せず殺す。
盲目の剣士。
全ての情報に合致する人間が目の前にいる。
「まさかお前…『不可視』だな⁉」
「ザッツライト.英語でその通りという意味です。ところで、あなたはまだどうしますか?兄弟の仇を取るか、私には敵わないという事実を認めるか。」
「じゃあ最後に一つ教えてくれ。お前の能力は何だ?どんな能力だ?」
「『不可視』。速さを操る能力。自由に操れますが10倍以上にすることは禁止されています。」
「速さを…操る?マジかよ…勝てるわけねぇだろ!」
そう言うと三男は逃げ出してしまった。
「男性なんだから去り際ぐらいカッコよくしてくださいよ…」
そして今に至る
「警告?俺が何か悪いことしたかな?」
「剣士から刀を奪うことは万死に値します。二回までは見逃しますが。私は今機嫌が悪いので手加減しませんよ?」
「分かった!分かったからその刀をしまってよ!怖くて動けないから!」
収めた瞬間がお前の負ける時だ!ざまぁみろ!
少しすると金属同士が擦れる音が聞こえてきた。
そして、
カチッ
はばきと鯉口がぶつかる音が鳴った瞬間に振り返り、腕を薙ぎ払う。
「なっ⁉」
再び首に冷たい感触が伝わる。
「あなたが攻撃してくることぐらい心臓の鼓動からわかりましたよ。そして次も攻撃してくる。そうでしょう?」
「ここまで実力差見せつけられてわざわざ死にに行く奴なんていないだろ。どうせ避けられるし。それに次は無いだろ?」
「じゃあいい条件を出しましょう。ネクスト.次のあなたの攻撃は絶対に避けません。」
何⁉こいつ頭おかしいだろ⁉
だったら過去最強のパンチをお見舞いしてやるぜ!
「オラァ!」
究極に気合の入ったパンチは突然動きを止める。
「いい忘れていましたが私から半径5cm以内の害を及ぼす物体はスピードが0倍になります。分かりやすい餌に釣られるだなんて魚じゃないんですし…」
「っていうことは物理攻撃無効かよ⁉」
「はい。そういう言い方もアリですね。では私の番です。」
次の瞬間巨大な衝撃と共に体が吹き飛ばされる。
たぶんアバラが何本か折れてると思う。
そして止めを刺すために刀を突き付けてきた。
「言い残すことはありますか?」
「あのさ~私だけ仲間はずれなのはどうかと思うよ~ステルスちゃ~ん?」
え?こいつが『不可視』なの?
どうりで強いわけだ。
「邪魔するつもりですか?」
「やましんは~私の友達なの~殺すって言うんだったら~ステルスちゃんも~それ相応の覚悟はしといたほうがいいよ~つくつく~怒ると怖いから~」
つくつくが手を握るとステルスの動きが止まった。
「周りの空気を固めましたか…」
「やましんのカウントをリセットしてよ~じゃないと~口の中の空気も固めちゃうかもね~」
「卑怯な手を使いますね…分かりました。今回だけですよ。」
つくつくは空気を元に戻し、ステルスは刀を収める。
「聞き分けの良い後輩はすきだよ~」
「あなたに好かれてもうれしくありません。」
俺達はその場を立ち去る。
「つくつく。何か知ってるのか?」
「あの子ね~目が見えないよ~」
「なんで知ってるんだ?」
「見れば分かるよ~つくつくの逆~」
「逆?」
「私は~目で心を読むけど~あの子は~音で心を読むの~でね~『 』は~心も体も無いの~」
心も体も無い。一体どういう意味なんだ?
「心を覗いてもね~何も映ってないの~心臓の音も聞こえないの~全部すーってすり抜けちゃうの~」
「まるで幽霊みたいに~」
ブックマーク、感想、評価お願いします!