小説案 ②:「D'sコップ白亜」
白亜の目の前に現れたのは、鮮やかな赤い体色の小柄な恐竜だった。しかしその2メートル位の体長には似つかわしくないほどに、手足には長く鋭い爪が生え、呼吸をする度に牙の間から火の粉が飛び出している。
「コイツ、・・・炎属性、ヴェロキラプトル型のフォッシルか!」
ヴェロキラプトルは白亜紀後期、主に東アジアに棲息していた小型の肉食恐竜で、その小さな体を活かした素早い動きで獲物を翻弄し、鋭い鉤爪で仕留めていたという。
「そうだ!フォッシルも持ってないようなガキ相手に怪我でもさせちまったら、強盗に加えて傷害でも追われるハメになっちまうからよぉ、大人しくしとけよ!つーかお前みたいなガキがマジでD'sコップなのかよ、警察も弱体化したって事か~?って、こんな事してる場合じゃねぇか。追っ手が来る前にさっさと逃げるぞ、ヴェロキ!」
強盗の男が呼ぶと、白亜を睨みつけていたフォッシル、ヴェロキバーンは幾つもの光の球体へと変化し、主人の体へと戻っていった。そして白亜が一歩も動けぬままに強盗は足早に銀行から逃走してしまった。
D'sコップになったばかりとは言え、追い詰めたはずの犯人をみすみす逃がしてしまった事がどれほどの失態かは分かっていた。いきなりフォッシルを召喚されて足がすくんでしまうなど、言い訳のしようもない。悔しさのあまりに、白亜は大理石の床に拳を叩き付けた。
「くそ!何でオレのフォッシルが見つからねぇんだよ!・・・お願いだから、力貸してくれよ!フォッシル!!」
その時、白亜の拳が、そしてその下の大理石が光を放ち、光が幾つもの球体となって宙を舞い、ひとつの形へと組み上げられていく。
「・・・ようやく俺様を『掘り出した』か。待ちかねたぞ、我がパートナーよ・・・」
光が消えて姿を現したもの、それは白亜の頭ほどの大きさの、不思議な貝だった。白亜は目を点にしたまま呆然と呟いた。
「・・・え、何?オレのフォッシルって、恐竜とかじゃなくて・・・オウムガイなの?えー・・・」
「オウムガイじゃねぇ!俺様はアンモナイト型フォッシルのアンモナイトナイトだ!覚えとけ!」
接触変成岩の一種である大理石は、地中深くから上昇してきたマグマの影響で、石灰岩の鉱物成分や組織・構造が変化したもので、この大理石が構成される過程で内部に生物などの化石が入り込んだりしたものが加工され、石材として使用される事がある。そんな大理石に混入する化石として有名なアンモナイトは、主に中生代に繁栄した軟体動物で、殻の構造は現代でいうオウムガイに近いという。小石ほどの大きさから、巨大なもので直径2mになる化石が発見されている、最もポピュラーな古代生物といえるだろう。
「さぁ、事情は分かっている。まだあのフォッシルの波長が近くにある、すぐ追いかけるぞ、人間」
「オレは白亜、太胡白亜だ。覚えとけ、アンモナイトナイト!・・・行くぞ!」
その傍らに初めての『相棒』を引き連れて、白亜は走り出した。
こちらは自分の考えた小説の案を使って、そのワンシーンだけをとりあえず書いてみたものです。
出してみて、何かしら反響があった場合には作品として書いていこうと思います。
よろしくお願いいたします。